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小説書き。シャチは素晴らしいですよね。またの名をけんけーと言います。クリスチャンです。…

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小説書き。シャチは素晴らしいですよね。またの名をけんけーと言います。クリスチャンです。さらに言えば発達障害!もう人生綱渡りなうです。なろう: https://mypage.syosetu.com/2040896/

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  • 仮面傀儡マスクドオルカ

    マスクドオルカ、范涙娜(ボム・ルナ)は改造人間である。 彼女を改造した魔界帝国ニッポニアはこの世界を太陽の神、アマテラスによって支配しようと企んでいる。 その尖兵として改造されたルナは、異国の地、日本にて孤独な戦いを行うのだった。 すべては正義のため、平和のため、自由のため わが身と、愛と、そしてすべてをかけて……!

記事一覧

W5D4 兎の生き血-토끼 생혈

 都ソラは一人、つまらなさそうに大学からの帰り道の電車に乗っていた。  立つ場所は電車のドア横。  ここに立って景色を見ていると、なんとも言えない物足りなさや、微…

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1年前
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W5D3 プラットフォーム-플렛홈

 遠い遠い地下の中。  真っ白な壁で覆われた場所では、3人の科学者が椅子に腰かけ、モニターを眺めていた。  そのまえで一人の女性が長い指示棒を持って何かを説明して…

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1年前
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W5D2 お留守番-집보기

 キムチを売るこの「金田商店」には多くの人がやってくる。  コリア語以外を話せないおばあちゃんというのもいらっしゃるし、普通に日本語で話しかけてくる人も多い。  …

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1年前
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今回から始まるマスクドオルカ5週目ですが、ちょっと刺激的で、人によってはショックを感じるかもしれません。ただ、作品のコンセプト上、どうしても描かなくてはならないと思っています。差別や快楽心を出しただけの作品にならないよう注意しますので、読者の皆さんもご注意いただけると嬉しいです。

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1年前
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W5D1 牡蠣キムチ - 굴김치

ルナは小田急線と南武線を乗り継ぎ、川崎駅へと来ていた。 ここからバスに乗り込み、終点を目指す。 20分ほど青色の川崎市営バスに乗っていると、やがて目的地の停留所の名…

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1年前
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母さんに会いたいです。

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1年前

W4D6 ひとのやさしさ-사람의 따스함

 目覚めなければ。  マスクドオルカを呼び立てるけたたましい声が聞こえてくる。  その声はまるで叫びのようであり、そして自分の心が叫んでいるようにも感じされた。 …

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1年前
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ペゴパ…おなかすいたにゃー。

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1年前

W4D5 工場乱闘-공장난투

 ルナが違和感を覚えたのは、電車が海芝崎駅へのラスト区間に差し掛かったころからだった。 「なんだか僕たちを見ているような気がする」  とルナは言い、直也を見る。…

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1年前
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W4D4 芝崎鋼機・夜-시바사키 강기/ 밤

海芝崎駅に直結している工場、芝崎鋼機川崎営業所の中。 絶えずプラントの機械を作る激しい金属音と、液体の流れる流音、それから時々聞こえてくる人の声が、工場の広い空…

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1年前
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W4D3 工場浸透作戦-공장침투작전

川崎市内の地下深く。 どこともいえない場所で、一人の男が演説をしていた。 彼は和装で身を包み、そして黒い羽織り物を着ていた。 「これはこれはニッポニアのアマテラス…

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1年前
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W4D2 鶴見、昭和97年-츠루미, 쇼와 97년

15分ほど待つと、電車はゆっくりと侵入してくる。 韓国でも都心暮らしのお嬢様のルナにとって、鶴見駅に入ってきた3両編成の電車はなんだかかわいらしく見える。 ルナは興…

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1年前

W4D1 故郷の置き土産-고향에 둔 선물

 聖母大学の敷地のはずれにある国際交流会館。  この中でルナの所属している国際交流サークル「Bada」の言語エクスチェンジの授業が行われていた。  ルナは韓国語を教え…

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1年前
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W3D6 罪-죄

 ルナは変身を解くと、急いで少女のもとに向かう。  少女は足を傷つけられ、すでに立てるような状態ではない。  あまりにいたいのか、眼をとろんととしており、泣く力も…

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1年前
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W3D5 睡魔-수마

 コウモリ傀儡は豆鉄砲に驚き、厳格魔法が切れたらしい。  ルナはそれが厳格だと理解すると、ぼんやりと敵、そして味方を見つめる。  しかし、ルナにとってそれは喜ばし…

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2年前

W3D4 こうもり-박쥐

 その言葉に、ルナの心はさらにかき回される。  決定的な怪物だと言えるものはない。  しかし、何か困難がある。  気付いた時にはルナは仮面をかぶり、剣を手に携えて…

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2年前
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W5D4 兎の生き血-토끼 생혈

 都ソラは一人、つまらなさそうに大学からの帰り道の電車に乗っていた。  立つ場所は電車のドア横。  ここに立って景色を見ていると、なんとも言えない物足りなさや、微妙さを少しだけ忘れることができた。  ヘル朝鮮、という言葉を真に受けて信じ、この国に逃げるように留学して3年。  この国の社会のひずみや、それに対して誰も動こうとしないこと、そして何より、自分自身の正義感を満たしてくれないこの社会に、半ば辟易としていた。  もしかしたらもう少しまともな社会が待っていたのではないか。

W5D3 プラットフォーム-플렛홈

 遠い遠い地下の中。  真っ白な壁で覆われた場所では、3人の科学者が椅子に腰かけ、モニターを眺めていた。  そのまえで一人の女性が長い指示棒を持って何かを説明しているようだった。  聴衆はその意見を少し眠そうに、しかし形だけでもきちんと聞こうとしているように感じる。  その姿は、思想をもっている組織というよりも普通の企業の会議に近いところがあった。 「今までオルカ傀儡に処刑された傀儡は4人。その傀儡はみな、オルカ傀儡との戦いに善戦していましたが、ある一点だけの欠点をもって

W5D2 お留守番-집보기

 キムチを売るこの「金田商店」には多くの人がやってくる。  コリア語以外を話せないおばあちゃんというのもいらっしゃるし、普通に日本語で話しかけてくる人も多い。  そのほかにもたまに韓国からやってきて、おいしいキムチを探して訪ねてきた韓国人や、おいしい韓国料理を訪ねてやってきた日本人など、様々な人が訪れる。  そんなお客ひとりひとりにたいして優しく語り掛けるおばちゃんの姿を見ていると、これこそが差別のない対応、バリアフリーなのではないかという観念が植え付けられてくる。  ルナ

今回から始まるマスクドオルカ5週目ですが、ちょっと刺激的で、人によってはショックを感じるかもしれません。ただ、作品のコンセプト上、どうしても描かなくてはならないと思っています。差別や快楽心を出しただけの作品にならないよう注意しますので、読者の皆さんもご注意いただけると嬉しいです。

W5D1 牡蠣キムチ - 굴김치

ルナは小田急線と南武線を乗り継ぎ、川崎駅へと来ていた。 ここからバスに乗り込み、終点を目指す。 20分ほど青色の川崎市営バスに乗っていると、やがて目的地の停留所の名前を告げるアナウンスがかかる。 ルナはアナウンスを聞いてボタンを押し、停車したバスから街に出た。 桜本。 ここはルナと同じ、しかし歩みの異なる同胞、在日コリアンが多く住む場所だ。 自分の研究テーマである在日コリアンの文化や生活について調べるためにここに降り立った、という意味もあるが、それ以上に単純にここで発売され

母さんに会いたいです。

W4D6 ひとのやさしさ-사람의 따스함

 目覚めなければ。  マスクドオルカを呼び立てるけたたましい声が聞こえてくる。  その声はまるで叫びのようであり、そして自分の心が叫んでいるようにも感じされた。  腹部、それから右手を破壊され、自分の意志ではどうにもならなくなっている。  それでも、今は戦わなければならない。  止血などは自分の身体がすぐに行ってくれる。 しかし、外れた腕の復旧は最低でも一日はかかってしまう。  目の前には、自分が倒さなければならない存在。  今はいったん、黙らせなければ。  マスクドオル

ペゴパ…おなかすいたにゃー。

W4D5 工場乱闘-공장난투

 ルナが違和感を覚えたのは、電車が海芝崎駅へのラスト区間に差し掛かったころからだった。 「なんだか僕たちを見ているような気がする」  とルナは言い、直也を見る。  直也は「気のせいだよ」というが、ルナはそわそわするのか、ずっと窓を見たり、直也を見たりと忙しそうに視線を動かしていた。  電車が海芝崎駅に到着すると同時に、ルナは真っ先に工場へとつながるゲートに入り込み、守衛の眼をかいくぐぐって工場の内部に侵入する。 「駄目だよ……」  直也は言うが、ルナは聞かない。  

W4D4 芝崎鋼機・夜-시바사키 강기/ 밤

海芝崎駅に直結している工場、芝崎鋼機川崎営業所の中。 絶えずプラントの機械を作る激しい金属音と、液体の流れる流音、それから時々聞こえてくる人の声が、工場の広い空間に響いていた。 ここで働く錦織は、その音に少しばかり苛立ちを覚えていた。 大卒でこの仕事に入ってから、厳しい上司や三交代制の激しい勤務に耐えてきた。 しかし、最近は旺盛な工業製品需要を満たしつつ、働き方改革なるものが中途半端にしか実行されていない現場で人手不足に対処するため、ただ勤務時間ばかりがいたずらに伸び、疲労

W4D3 工場浸透作戦-공장침투작전

川崎市内の地下深く。 どこともいえない場所で、一人の男が演説をしていた。 彼は和装で身を包み、そして黒い羽織り物を着ていた。 「これはこれはニッポニアのアマテラスさま……わたくしめがまさかお会いできるとは……」 和服の男は言うと、顔を地面につけて言う。 「顔を上げなさい」 アマテラスは言うと、男に顔を上げさせる。 「私たちの作戦はあなたの協力なしではなり立ちません。この国、そして世界を浄化し、美しくするという私たちの作戦に同調してくださいましたこと、感謝いたします。

W4D2 鶴見、昭和97年-츠루미, 쇼와 97년

15分ほど待つと、電車はゆっくりと侵入してくる。 韓国でも都心暮らしのお嬢様のルナにとって、鶴見駅に入ってきた3両編成の電車はなんだかかわいらしく見える。 ルナは興味深げに車内に入ると、邪魔にならない場所で写真を撮った。 そろそろ工場の職員の帰宅時間であるためか、反対方向の列車には多数客が乗車している、しかし、工場へと向かう電車にはあまり乗客はいなかった。 「次の国道駅で降りて焼き鳥でも食べようか」直也は言う。  焼き鳥、と聞いて、ルナは「わぁ」と歓迎の声をあげた。  電車

W4D1 故郷の置き土産-고향에 둔 선물

 聖母大学の敷地のはずれにある国際交流会館。  この中でルナの所属している国際交流サークル「Bada」の言語エクスチェンジの授業が行われていた。  ルナは韓国語を教え、直也は日本語を教えることとなっているのだが、ルナはほとんど日本語を間違えることがない。  そのことがなんともうらやましいと思う反面、自分には彼女のためにできることはあるのだろうか、と考えてしまう。  彼女は学業も優秀だから勉強を教えることだってないし、なんだったら教わる経験ばかりだ。  日本の文化事情も並みの日

W3D6 罪-죄

 ルナは変身を解くと、急いで少女のもとに向かう。  少女は足を傷つけられ、すでに立てるような状態ではない。  あまりにいたいのか、眼をとろんととしており、泣く力もなさそうだ。  ルナはそんな彼女を見て、ゆっくりと息を吐く。 「とりあえず警察を呼ぼうか」直也は言う。 「警察なんて呼んだら、僕が捕まっちゃうじゃないか……」ルナは懸念を示し、顔を落とす。  しかし、直也も譲らない。 「警察を呼ばなくちゃ、彼女を救えないよ」  直也は言う。   そしてしばらく考え込み、「よ

W3D5 睡魔-수마

 コウモリ傀儡は豆鉄砲に驚き、厳格魔法が切れたらしい。  ルナはそれが厳格だと理解すると、ぼんやりと敵、そして味方を見つめる。  しかし、ルナにとってそれは喜ばしいこととは思えず、俯く。  自分の生きる意味を捕まえたつもりだった。  しかしそれは幻覚であり、むしろ目の前の人間は自分を殺人兵器に変えようとしている。  そしてその目的は、自分の同胞を抹殺するため。  それは同胞であろうとなかろうと、絶対に許されるものではない。  だからと言って、自分がこうなった意味など、あるの

W3D4 こうもり-박쥐

 その言葉に、ルナの心はさらにかき回される。  決定的な怪物だと言えるものはない。  しかし、何か困難がある。  気付いた時にはルナは仮面をかぶり、剣を手に携えていた。  この姿になるたびに感じる違和感、そして罪の意識。  自分は何か罪を犯したせいでこのような姿へと改造された。  変身するたびに、ほのかな磯の香りとともに、自分自身の罪を感じさせる。  一体どうしたらいい。  さらに目の前にいるのは、自分の親友かもしれない人間。  それをもし裏切ることになってしまえば。