大きな出来事だった。
この仕事をやってきて、こんなにダメージを受けたのは2度目。
3年目くらいのときに、どうしても納得のできないことを言われて、それに言い返しても伝わらなくて、悔しくて涙したことがあった。未熟だった私が理不尽な言いがかりに対してよく対応したと、周りにいた先輩方からは慰めてもらった。
あれから10年経って、いろんな事案に対応して、後輩たちにもそれなりに指導したりアドバイスしたりするような立場になった。今となっては笑い話になっているし、今の自分なら同じようなことが起こっても大丈夫。どんなに理不尽なことにも冷静に対応できるし、それに振り回されるようなことももうない。客観的に物事を見られるし、その場に合わせてそれなりの対応ができるようになっている。
そう、思っていた。でも、違った。
対応しているときにはまだ冷静でいられた。相手に対して怒りをぶつけたり声を荒げたりすることもなく、必要な言葉だけを相手に伝えることができたと思う。周りで聞いている人もいたけれど、たぶんそう思ってもらえると思う。だけど、その対応が終わってしばらくしてから、変化があった。なぜか涙が出たし、放心状態にもなっていたし、本当に胃が痛んだ。食欲がなくなるほどそのことが頭から離れない時間が長かったし、周りの人にも心配をかけたと思う。
自分のやってきたことや存在そのものを否定され、一緒に働く仲間も否定され、ただ一方的に罵声を浴びた。相手は泣き叫んでいたし、こちらの言い分を聞く余地もなさそうだった。その状況は理解できるし心配にもなったけれど、じゃあ私の立場は何なんだろうと考えたら。やるせないというか虚しいというか。どうしようもない悲しさみたいな気持ちが押し寄せてきた。
その話をした相手と、再び話す場を設けた。そこではこちらの言い分をきちんと伝えなければと思った。でも何をどう言えばいいだろうかと思い悩んた。そして、正々堂々とぶち当たろうと覚悟を決めた。それなのに、結果としてその場は相手の都合によりなくなった。こちらの思いを伝える場さえ失われて、これまでの気持ちをどこへぶつけたらいいのかもわからなくなった。こちらにはモヤモヤしか残らない。それでもまたその人とは付き合っていかなければならない。
自分にもこんなに感情的になる部分が残っていたことにも驚いているし、なくならないと信じてやまなかった信念や決意もなくなりそうになるほど、自分自身がぐらついた。この仕事、これからも同じように続けていけるんだろうかと思うほど。それくらい、大きな出来事だった。今までの大体のことは、だれかに愚痴を言ったり、自分の中で考えがまとまったりして、消化させることができてきた。でも、この件については話すことすら辛いと感じる。
あと少しで、年末年始の休暇に入る。そこではゆっくり心を休めたいし、その先のことも考えていかなければいけないかもしれない。
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