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タマさんのにちよう日

 ねこのタマさんは、さいきん この町に ひっこしてきたばかりです。
タマさんのうちの ほどちかくに、おがわがながれていました。

よくはれた にちよう日。

 タマさんは せんたくをしよう、と そばのおがわへでかけました。
 タマさんの せんたくものは、シャツだのスカートだの 
したぎだのシーツだの コートやくつや カサ などがありました。

そして それらはすべて、タマさんの 
おきにいりの ものばかりでした。

 そらには、くもひとつ ありません。

 タマさんは、なにごともテキパキとする たち でしたから、さっそく やまのような せんたくものを それはそれは きれいに あらいあげて、ひとつひとつ しわをのばして、ていねいに ほして いったのでした。
カサはひろげて とばないように、こいしを ひとつ おいておきました。

 そよかぜが、ここちよく ふいています。

「もしかしたら、こんなに せいけつで、
すがすがしい にちよう日をすごしている 
ねこは、わたしのほか、いないのじゃあ ないかしら」

タマさんは、ふと そんなことを かんがえました。
そこへ まちの ほうから、にぎやかな くるまが、やってきました。

「“せいけつで すがすがしい にちよう日をすごしている 
ねこ コンクール”かいさい!
さんかするかたは、しゅうかいじょうに おあつまりください。
しんさいいんちょうは、ねこだいじんどの でーす。」

タマさんは、わたしに ぴったりのコンクールだ、と 
おもいましたから、ぜひ さんかしよう、と 
さっそく ねこだいじん のところへ もうしこみに いきました。

タマさんが しゅうかいじょうに ついてみると、そこには もう 
せいけつで すがすがしい にちよう日を すごした ねこたちが、
わんさか あつまっていました。

 ねこだいじんは「フムフム」と 
ながいひげを ひねり、むずかしい かおをしています。
あつまった ねこたちは、みんな せいけつで すがすがしい 
ねこぞろいですから、しんさは むずかしそうです。

「みなさん、おひとりずつ どれだけ せいけつで すがすがしいか 
はっぴょう してください。」

 だいじんの つくえのまえに、さいしょの ねこが、
でてきて いいました。

「わたくしは、きょう 100回も おそうじをしました。
わたくしは、たいへん せいけつで すがすがしい ねこ であります。」

だいじんは、むずかしいかおを もっとむずかしくして、いいました。
「フムフム、それは びょうきだな。つぎ!」

つぎのねこは、こう いいました。
「わたしなどは、いちにち 回も、おふろにはいります。わたしこそ、
せいけつで すがすがしい ねこです。」

だいじんは ムシめがねで、すみずみまで かんさつして いいました。「それで、けなみが こんなにあれているんだな。つぎ!」

 そのつぎの ねこは、いいました。
「わたしは さいしょくしゅぎしゃで、やさいしか たべません。
いたって せいけつで すがすがしい ねこです。」

「それのなにが せいけつで すがすがしいというのだ?
どうやら いちょうが よわいようだな。」
だいじんは わけがわからず、つぎのねこを よびました。

 つぎの ねこは、ずいぶん おおきな 
ふくろをもってきていました。

「だいじん、ごらんください。わたしは わがやの
ねずみを いっぴき のこらず いけどりに いたしました。」

と いって、ふくろのなかを あけて みせたものですから、
もう たいへん!

 とびだした ねずみに、まわりにいた ねこたちは、
おもわず とびついて、
しゅうかいじょうは、おおさわぎに なりました。

だいじんは
「はやく まどをあけろ!」
と どなりました。

 ねずみが にげだすと、おいかけていた ねこたちも 
つづいて、まどから でていきました。

「さわいだものは、みんな しっかく!」
ねこだいじんは カンカンです。

 のこった ねこたちが、しーんとなったので、
しんさは、また はじまりました。
 ねこは つぎつぎに、だいじんの まえに でては、
つぎつぎと かえっていきました。
でも、へやいっぱいの ねこは 
すこしも へったような きがしません。

 タマさんは、あとなんびきめか いっぽんずつ 
つめをだして、かぞえてみました。
でも、ねこのかずは りょうてにあまって、
となりのねこの てをかりても たりませんでした。

 みぎに すわって、つめをみがいている 
ペルシャねこは、こいびとねこが つくってくれた 
おべんとうを おいしそうに たべはじめています。

 タマさんは ちょっと こうかいしはじめました。
なにも たべものを、もってきて なかったからです。
おなかは くうくう なっています。
それに、ほしてきた せんたくものが きになります。

からすが、ふんを かけてはいないか。
かぜが、さらってはいないか。

 おしりを あげたり、おろしたり、
タマさんは おちつきません。

 そのうち やっと、となりの ペルシャねこが よばれました。
だいじんの まえへ でて、みがきを かけた 
いろとりどりの つめを、ほこらしげに みせましたが、

でも、だいじんは
「めが チカチカして たまらん!」
だいじんは、めを おおって いいました。

そして、
「きょうは もうつかれた。
あとひとりだけだ。つぎー」

 いよいよ タマさんの ばんです。
タマさんは、おそるおそる いいました。

「もう、わたしは けっこうです。せんたくものを とりこまないと、
ゆうがたには しめってしまうので、はやく かえりたいのです。これで しつれい いたします。」

「なにっ⁈」

 だいじんは びっくりして めをまるくしました。
そして タマさんを、めずらしい いぬでも みるように みつめました。そして、たちあがって いいました。

「おおお、おまえが いちばんじゃ。
つやつやのけに、つめも こぎれいだ。
長いしっぽも先の先まで手入れされとる。
なにより せっけんと、おひさまの いいにおいがする。
わしは やっと、せいけつで すがすがしい 
にちよう日に であったぞ。」

 タマさんは、だいじんが なにを いっているのか、
さいごまで きいていませんでした。
あいさつもせずに、そこを とびだして、
ころげるように おがわの せんたくばに もどったのです。

シーツも かさも ぶじでした。
お日さまは まだ、にこにこ 
たかいところで わらっていました。

                        おわり

 

                              

                                     おわり

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