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あきらめる ~『四畳半神話大系』より

昨日、卒業式

「私はピカピカの大学1回生、幻の至宝と言われるバラ色のキャンパスライフへの扉が今ここに無数に開かれているのを目の当たりにし、興奮の半ば朦朧としていた。そして私が選びとったのは、黒髪の乙女と-------。
そう考えていた私は手のほどこしようのないアホだった。」

『四畳半神話大系』のアニメの冒頭で毎回流れるシーン。

ワクワク・ドキドキな入学から4年がたち、昨日『私』は卒業式を迎えた。

後悔などあろうはずがない

イチロー

「後悔などあろうはずがない」
イチロー選手の引退会見での一言。
数十年間、世界の最前線を走り続けてきた男の
最後までやりきった後の言葉は重たい。

ただ、昨日終わりを迎えた私の大学生活、
「後悔なんてあろうはずがない。」
なんて言えるだろうか。

自己啓発小説

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『四畳半神話大系』 私がいちばんおすすめする小説。
アニメを10回以上見て、小説も読んだ。

ただこの本の面白いところは、小説でありながら
この大学生活の中で、一番の自己啓発本になった。

本・アニメを見ていただきたいので、ネタバレはしないが、
本の裏に書かれているストーリー

私は冴えない大学3回生。バラ色のキャンパスライフを想像していたのに、現実はほど遠い。悪友の小津には振り回され、謎の自由人・樋口師匠には無理な要求をされ、孤高の乙女・明石さんとは、なかなかお近づきになれない。いっそのこと1回生に戻って大学生活をやり直したい!さ迷い込んだ4つの平行世界で繰り広げられる、滅法おかしくて、ちょっぴりほろ苦い青春ストーリー。

同じ主人公が同じ大学で4つの平行世界を体験するお話。
大学生活に満足できず、「こんな大学生活をおくれたら。」
後悔した後、理想の世界のストーリーが新たに始まる。
が、その世界でも後悔が生まれるお話。

この説明で理解できなかった人には、ぜひ実際に見てもらいたい

可能性の無駄遣い

この世界には悲しいことに、理想と現実がある。
小学校のとき、「俺はプロ野球選手になる」と語っていた同級生のなかで
実際にプロ野球選手になったのは何人いるだろうか?

前の話は極端だが、普段の生活で
理想と現実の間に差があるから後悔が生まれる
と思う。

私は九州大学に合格したかった。しかし、できなかった
だから、高校時代もっと勉強をしていれば、と後悔が生まれる。

現実の中で生きている私たち、
理想を持っている以上は後悔は生まれてくる。

そこで『四畳半神話大系』

後悔をいだき、平行世界で別の人生を送る『四畳半神話大系』。
主人公「私」は理想を持っているが、現実とのギャップから
いつも後悔している。
「○○になっていればもっと△△だったかもしれない。」

そんななかで樋口師匠が

可能性という言葉を無限定に使ってはいけない。我々という存在を規定するのは、我々がもつ可能性ではなく、我々がもつ不可能性である。

続けて

樋口師匠
「君はバニーガールになれるか?パイロットになれるか?大工になれるか?七つの海を股にかける海賊になれるか?ルーブル美術館の所蔵品を狙う世紀の大泥棒になれるか?スーパーコンピューターの開発者になれるか?」

「なれません」
樋口師匠
「我々の大方の苦悩は、あり得べき別の人生を夢想することから始まる。自分の可能性という当てにならないものに望みを託すことが諸悪の根元だ。今ここにある君以外、ほかの何者にもなれない自分を認めなくてはいけない。」

このやりとりがどんな自己啓発本よりも心に響いた

「私はパイロットになれるか?スーパーコンピュータの開発者に?

なれるかもしれない。」

現実、自分は自分。なれる可能性はあるが、不可能。
さらに、そんな夢ばかり見ていれば、
なりたい自分(理想)となれない自分(現実)とのギャップから
頭の中は後悔だらけになる。


あきらめ力

私にも理想がある。
成績は学年トップ。もっとお金がほしい。有名人になりたい。(理想)
あげればきりがない。

ただ理想はどうか。ギャップばかりである。
しかし才色兼備で金持ち、有名な大学生に
私はなれるかもしれない。(可能性)

しかし実際は、何者にもなれないのがここにいる自分。(現実)

だからこそ、不可能性に目を向ける、あきらめ力が必要。(不可能性)

後悔ばかりしていた自分はこの小説に助けられた。

何者にもなれない現実の自分を認めて、
不可能性に目を向け、”あきらめる”。

だから

私の大学生活、後悔なんてあろうはずがありません。


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