#08 災い転じて福となそう
「100%オフサイド」(DAZN「Jリーグジャッジリプレイ」での、JFA審判S級インストラクター廣嶋禎数さんコメント)からのシュートが決勝点という、とても悔しい敗戦でした。試合後、アルベルト監督から「J1昇格を勝ち取ってみせる」という力強い言葉が聞かれました。この痛すぎる敗戦を糧に、さらに成長し続け、昇格への道を歩み続けましょう。
アルビレックス新潟は13日、デンカビッグスワンで岡山と戦い0―1で敗れました。しかし、後半23分の岡山のゴールは、オフサイドポジションにいた選手が決めたもので、本来なら得点と認められないものでした。直後に新潟の選手たちが抗議しましたが、聞き入られることはありませんでした。
アルベルト監督は試合後、注目すべき2つのことを述べています。それは、「あらゆる障壁を乗り越えてJ1昇格を勝ち取ってみせる」、そして「当然、われわれのプレーも批判的に振り返る必要がある」という言葉です。
「J1昇格を勝ち取ってみせる」という発言について、フリーライターの大中祐二さんは、「チームを率いて2年目のスペイン人指揮官が、公の場でここまではっきり昇格について言及したのは初めて」だと、新潟日報コラム「昇格原稿を書きたいんじゃ」で書いています。
その上で大中さんはこう書きます。「この敗戦で、チームは3位に後退した。昇格圏外となるのは、今シーズン初めて。だが昨年11位、一昨年は10位だったチームが、開幕から昇格争いを繰り広げている事実に、勇気を得てもいいはずだ。たゆまぬ努力を抜きに、今の状況はあり得ない」
一方、「われわれのプレーも批判的に振り返る必要がある」という発言については、元週刊サッカーマガジン編集長の平澤大輔さんは新潟日報スポーツモアのコラム「Orange Soul」で、以下のように書きます。
「自己批判は非常に難しい作業です。あるいは自分自身を深く傷つけることになるかもしれない。でも、それをていねいに行うことだけが進歩への道なのでしょう。その覚悟を決めた『昇格宣言』だと受け取りました」。
そして「『自己批判』と『新潟対策対策』の夏」と題した、このコラムを、次のように締めくくっています。
「これで3位に後退しましたが、シーズンはまだ折り返し地点にも進んでいません。アルベルト監督自身が『昇格』を口にして自己改革に踏み切りました。ピッチ内の立ち位置に工夫を加えて相手の予測をさらに上回るための変化をもたらしました。岡山戦の90分で見せた『2つの変化』。ここから先の新潟を照らす道しるべになるかもしれません」
そう、リーグ戦は42節のうち18節が終わったばかりです。3位に後退したとはいえ、首位との勝ち点差は1です。1位から4位までが勝ち点差1と混戦で、7位までが首位と勝ち点差10以内に入っています。
この時点で、どこが昇格するのかなんて全く分かりません。「首位にいると特に対策されるから今は3位くらいの方がいい」「昇格レースが面白くなった」くらいに考えて、昇格を争う位置にいることを楽しむのもいいかもしれません。
岡山戦はミスが目立つ試合でした。でも、4試合連続で先制点を許していましたが、「100%オフサイド」からの失点だったのですから、それは止めたと同じです(記録的には5試合連続で先制されたことになりますが…)。
攻撃も、これまでのようにパスをつないで相手を揺さぶり、決定機を何度かつくりました。試合終了間際には、ゴール前に抜けだしてシュートしようとした矢村選手が、相手選手に後ろから手とひざで押し倒されたよう見えました。あれをPKと判定してくれていれば、勝ち点3を手にできていたかもしれないのです。
◇ ◇
平澤さんは先のコラムで、「今季は大幅なメンバー変更がない中でシーズンが進んでいます。相手にとっては参考にできる情報がどんどん蓄積されますから、対策も立てやすいのでしょう。もちろん再現性を高めることがアルベルト監督の意図ですが、この試合では前線の4人が自由自在に動くことで意外性を作り出したことになります」と書いていました。
アルベルト監督に「FCバルセロナの人材育成術」(2011年、アチーブメント出版)という著書があります。副題が「なぜバルサでは勝利と育成が両立するのか」というこの本は、現在アルビで通訳をしておられる村松尚登さんが監訳を務め、最初の30ページほどは「監訳者による解説」になっています。
この中で村松さんは、アルベルトさんは、この本で「勝利と育成は決して矛盾するものでない。両立できる」という結論に導いていきます」と書いています。バルセロナのトップチームは、どのクラブよりも積極的に若手選手に出場チャンスを与えていて、しかも勝利し続けている。バルサの選手育成の手法は、「若手にチャンスを与え、しかも充分すぎるほどの結果を出しているからこそ世界中で高い評価を受けている」というのです。
村松さんは、スペインでは「イニシアチブを持って自ら見て、考え、判断し、動く」という「戦術」が求められているといいます。それに加えバルサの下部組織では「自分の長所を活かしながらチームメイトと最高のハーモニーを奏でる」チームワークのメンタリティを重視しているとアルベルトさんは強調していると書いています。
6月9日の天皇杯2回戦では、若手を中心とした出場機会のなかった選手たちが、J2の金沢相手にレギュラー組と変わらない試合内容で快勝しました。サブメンバーの選手たちも「充分すぎるほどの結果」を出したといってもいいかもしれません。天皇杯で存在感を示した小島選手は岡山戦で先発出場し、躍動した小見選手がメンバー入りしました。
「J1昇格を勝ち取ってみせる」ため、さらには「自己批判」した結果、暑さが厳しくなる今後は、若手選手のメンバー入りや積極的な途中交代もあるのでしょうか。戦い方の変化もあるのでしょうか。次節・秋田戦では舞行龍選手が累積警告で出場停止です。どんなメンバーになるのか。楽しみです。
「首都から離れた街ですけれども、新潟は決して小さなクラブではありません。偉大なクラブです。われわれにはサポーターという大きな力があります。彼らの力を借りつつ、しっかり戦い続けていきたいと思います」。これは、岡山戦後のアルベルト監督のコメントです(モバアルZより)。
なんてすばらしい監督でしょう。アルベルトさんが指揮を執ってくれて幸せです。
一緒にJ1へ行きましょう。
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