映画のささやき

映画のすばらしさをテキストで伝えるために書いてます。定期的に映画について語っていきます…

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映画のすばらしさをテキストで伝えるために書いてます。定期的に映画について語っていきますので、よければフォローしてください。

最近の記事

【マーティン・マクドナー特集#1】『シックス・シューター』いきなりアカデミー賞をとった映画1作目とは!

1.演劇界の鬼才、映画界へ! イギリス演劇界の鬼才、マーティン・マクドナーはインタビューでもたびたび言っているが演劇よりも映画の方に合っていると自分では思っている。 そして満を持して映画界に進出。2004年、監督第1作『シックス・シューター』を撮る。26分の短編映画だが、これですぐアカデミー短編賞を受賞してしまうから、さすがとしか言いようがない。 ちなみにこのあといくつもの傑作長編映画を撮り、アカデミー賞間違いなしと言われた『スリー・ビルボード』が演技部門以外で受賞な

    • 【映画】『スクール・オブ・ロック』元気とやる気を取り戻す映画

      1.好きなところ! みんなが見たいジャック・ブラック! 明るく楽しく暑苦しく! まさしくこれ! というパブリック・イメージそのまま、というかこの映画が作ったと言っていい。 独りよがりでバンドを首になった男が、ニセ教師としてこどもたちと触れ合ううちに、こどもたちを変え、自分もまた変わっていくという、王道ストーリー。 ジャック・ブラックの顔芸やハイ・テンションは楽しく飽きないし、音楽を愛する姿勢が一貫してブレないのも好印象。だれに対しても平等に不遜、その場その場でごまかし

      • 【映画】『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』戦争は感動のための道具ではない

        1.横溝的世界観の美しさ 序盤からただよう異様な臭気。血塗られた因習ただよう村へやってきた水木とともに、この映画を観る者もその世界へ引きずりこまれていく。 前半はまったく横溝正史世界観なのだけど、実はそこがすごい好き。一族の長の死、権力と跡目を争う人間模様、陰惨かつグロテスクな連続殺人事件、奇妙な探偵と美しい女性。 様式美すら感じるこの展開が、異様なスピード感をもって繰り広げられるのだけど、横溝的骨格がしっかりしているので、安心して物語に身を委ねられる。 2.アクシ

        • 【映画】『バグダッド・カフェ』あの日の思い出に結びついた

          1.国内権利の消滅 年末、映画界隈で話題になった。2023年で『バグダッド・カフェ』の国内権利がすべて切れてしまうという。 だからみんな、12月31日までに観ないと! ってこぞって観はじめて、大晦日はけっこうな再生回数になったんじゃないだろうか。 かくいう僕もそのひとり。名作と名高い『バグダッド・カフェ』をいままで観たことがなかった。 そして2023年最後の日。この映画を観終わったとき、ああそうだったのか、とあることに気がついた。それは「バグダッド・カフェ」の名を冠

        【マーティン・マクドナー特集#1】『シックス・シューター』いきなりアカデミー賞をとった映画1作目とは!

          【映画】『PERFECT DAYS』こんなにもすばらしい映画の光と影

          1.『PERFECT DAYS』の光 映画は映像と音楽とでできている。そのことをこんなにもハッキリと、こんなにもすばらしい体験を通じて教えてくれた。いろいろあった2023年。年末最後に鑑賞して本当に心が洗われたような気がした。 セリフがすくなく、単調とも思える出来事の繰り返しを描く映画だが、しだいにそれがリズムを生み、主人公・平山の生活の中に観客が溶け込んでいく。 毎朝平山が車内でかける音楽。気がつくと僕たちもその音楽を待っている。新しい一日がはじまり、下町のディスク

          【映画】『PERFECT DAYS』こんなにもすばらしい映画の光と影

          2023年の映画ベスト3+1!

          『イノセンツ』 まずは『イノセンツ』。まんま大友克洋『童夢』だと言われているけど、『童夢』未読なので素直に楽しめた。団地という狭く閉ざされた空間で、少年少女たちの行き場のない閉塞感が共鳴し増幅する。ゴールディング『蠅の王』を彷彿とさせる無邪気な悪を描いた傑作。 『ザ・クリエイター/創造者』 つづいては『ザ・クリエイター/創造者』。ビジュアル最高! SF的ガジェットや世界観もいい。あとは物語がついてこればここ何年かの最高傑作! となったところだけど。人間とAIというテー

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          【映画分析】『ベイビー・ドライバー』なぜあいつがラスボスなのか

          1.いちばん好きなシーン 『ベイビー・ドライバー』でいちばん好きなシーンは、前半、主人公・ベイビーがいったん金を支払い終えたところ。仕事で使った車を廃車にするためスクラップ会社へ行き、つぶす。 天気最良、晴れやかな気持ちで詰まれた廃車たちを横切りながら歩いていく。つまりそれらは彼のいままでの仕事の象徴だ。汚れた仕事から解放される。新しい人生が回りはじめる。 2.解明! なぜあいつがラスボスなのか もうひとつ好きなシーンがあって、中盤、ふたたび仕事をすることになったベ

          【映画分析】『ベイビー・ドライバー』なぜあいつがラスボスなのか

          【映画分析】『グランツーリスモ』の構成が好き

          1.ひとこと感想 カッチリ作ったまじめな映画。 どこに落ち着く物語だろうと観ていると、鬼軍曹のトレーナーがらみで序盤から「ル・マン」という言葉が出てくる。そうして映画の最終地点もル・マンだった。映画オリジナルの存在であるトレーナーを通じて、最終目標であるル・マンへたくみに導いていた。 親子の確執、気になる存在だった彼女、トレーナーの過去、アカデミーのチームメイト、ライバルの存在(トレーナーの元職場)などなど、すべての要素を拾いつくして描ききったきわめてまじめな作りの物

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