見出し画像

【詩】防波堤を望むベンチ

海に浮かぶ小さい島の山道を歩いていると

二人がけのベンチが二つ現れた

片方は若い男女が座り、もう片方は誰も座っていなかった

そのベンチの目の前はちょうど木々がぽっかり空いていて

ひとり浮かぶ防波堤がある海の景色だった

僕は通り過ぎたが引き返して空いているベンチに座った

その防波堤の横を客船が通り過ぎていた

それはもはや防波堤なのかわからない

とにかくただまっすぐに伸びるコンクリートだ

空と海はその境界を見失いひとつになるのだったら、それはひこうき雲にもなれるだろう

そこにボートを漕いで行き、降りて釣りでもできたらいい

とにかくただまっすぐに伸びるコンクリートだ

そういうことを一頻り思ってから
僕は居心地が悪くなって山道に戻った

彼らはなにも話していなかった

二人には防波堤がどういうふうに見えているのだろう

ただそこでは

レースカーテンを揺らすような風が僕らに囁いていた

この記事が参加している募集

自由律俳句

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?