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市民オペラに参加するということ 34

5月第3土曜日、この日も前々週に引き続き副指揮者による指導だ。この日は合唱練習にソリストのネモリーノが参加していた。

この日は冒頭から順に、合唱が登場する箇所を歌っていくという、前週と同じスタイルでの練習になった。ただ、副指揮者による練習だと緊張感もあり、指導も時代背景などを解説しながらの、わかりやすい内容だ。背景がわかって歌い方を指導されると、腹落ちの度合いが違う。
そして翌週からは立ち稽古。それまでに全て暗譜するように、とのこと。無理だ。暗譜どころか、どこを歌うのかを私が全て把握したのが、ようやく先週のことなのだ。
「楽譜は離そうと思わなければ永遠に離れるものではありません。楽譜を持たないと決めないことには、いつまで経っても離せません」と副指揮者は厳しいことを言う。そこまで言われたら、楽譜なしで歌えるよう努力するしかない。仕方ないので私はこの日、練習の様子を録音し、家で聞けるように態勢を整えた。こんなことは初めてだ。
ただ、先週1回通しているので、どこを歌うかはさすがに把握できてきている。しかしどこを歌うのかを把握するのと暗譜までには深い溝が存在する。私はまだ楽譜を見てようやく歌える段階だ。印象的なところは歌詞つきで自然に覚えているところもあるが、楽譜を外したら歌えないところが大半だ。
それでも、先週に比べると歌えるようになっている。知らぬ間に練習の成果が積み上がっているのだ。あとは自分で頑張るしかない。

この日、本番のパンフレットに載せる広告を集めている人が居たので、休憩時間にその人に会の会計についてちらっと話を聞いてみた。すると、会は火の車なので、それでその人は必死に広告を取ってきたのだという。長く会に在籍している人なので、会の事情に明るいのだ。会が存続してほしいので、必死にチケットを売ったり広告を取ったりしているのだそうだ。同じ団員でも、そんな心持ちで活動されているなんて、頭が下がるな、と思った。私はその人に比べたら、当事者意識が薄く、お客さんみたいな気持ちでいた。オペラはお金がかかるので、私が前にいた団体も、実質潰れたのだと思う。市民オペラの財政は、もしかするとどこも割合厳しいのかもしれない。市民オペラどころか、プロオケだってコロナでだいぶ厳しかったというし、今でもまだ厳しいのかもしれない。私も協力できることは協力した方がいいな、と思う。

休憩後は続きを歌う。全曲を通す時間まではなく、2幕の女声合唱の後半は練習時間が足りなかったが、それ以外は一通りやった。今日の練習は録音も録ったことだし、あとは自分で頑張るしかなさそうだ。立ち稽古に向けて、期待と不安が高まる。

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