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LayerX(バクラク)のカスタマーサクセスから2023年の最新のCS戦略を理解しよう

先日、55億円調達というSaaS企業の中でも異例の成長を見せているLayerX(バクラク)ですが、弊社openpageのイベント「CSHERO」でもご登壇を頂いた、LayerXのカスタマーサクセス責任者である梶原さんが新しいnote記事を執筆しました。
LayerX(バクラク)は日本のSaaS企業の中ではまさにリーダーであり、カスタマーサクセスの取り組みも非常に先進的な内容でした。

もちろん、まずは梶原さんのnoteを先に読んでほしいのですが、本記事では、さらに徹底解説をしながら、カスタマーサクセスの最新のトレンドを皆さんにお伝えしていきたいと思います。梶原さんの記事の引用をさせていただきながら、元記事の理解が深まるだけでなく、カスタマーサクセスの新しい情報も吸収できる2度美味しい内容です。

①カスタマーサクセスは概念:全社で考えるべきカスタマーサクセス

最初に毎度ながら変わらない「カスタマーサクセスは概念」を書かせてください。CS職の具体的な業務範囲やKPIは状況に応じて変化しますが、“カスタマーサクセス”というものは職種に限らずプロダクトと顧客とのあらゆる接点において想起されるべき概念だと考えています。

「カスタマーサクセスは概念」というのは、梶原さんが昔からずっと言ってる言葉です。
これは、『カスタマーサクセス職種の人だけがカスタマーサクセスの取り組みをしている、という状態は良くない』という警鐘でしょう。

カスタマーサクセスだけがカスタマーサクセスをしてるのは良くない

カスタマーサクセスは既存顧客の体験作り込みや契約拡大を見越したコミュニケーションとなり、営業活動や製品開発活動の考慮も必要となり、会社にの部門連携が必要不可欠です。
梶原さんはもともとは営業や開発のマネジメント経験がある方なので、会社の中のあらゆる活動を見据えたうえでカスタマーサクセスはどうあるべきか?ということを解ける稀有な方だと思います。

②事業成長、PMFの拡大に「カスタマーサクセス」が重要

例えば、受け入れられるお客様層や仕切りについてSalesと頻繁にマネージャー間ですり合わせたり(むしろSales側からこういう開拓をしたいのだけどCS受け入れどうですか?と日々確認をいただけます)、CSが集める既存顧客の声をPdMが聞いたうえで既存顧客への価値向上もしっかりロードマップに組み込んでくれたりしています。

梶原さんが触れた、「Sales側からこういう開拓をしたいのだけどCS受け入れどうですか?と確認をいただけます」という話は、カスタマーサクセス職種の方が見落としがちなかなり重要なポイントです。
SaaS企業は、ベンチャー企業である以上、これまで獲得していなかった新しい顧客(業界や規模、ユースケースなどがこれまで未経験)に対して営業することが発生します。

従来提供していた顧客ではない顧客に対して営業をしていく

なぜなら、投資家は上場に足る売上規模を期待するため、常に顧客層の拡大を見越して営業は動くのです。その過程で、「本来、バッチリはまっていたような顧客とは異なる業界やユースケースで契約する」というケースが多く発生します。そしてこの顧客の不一致は、カスタマーサクセスにしわ寄せがいきます。

これまで提供していないような異なるニーズに営業した場合、カスタマーサクセスが調整弁となる

つまり、カスタマーサクセスの仕事とは、事業が成長していく過程で、本来叶えられるニーズとは異なる顧客の要望に常にフィットさせていく、広がり続ける顧客との調整弁となることです。

③カスタマーサクセスが事業をストレッチさせる調整弁となる

昨年頃から、山田ひさのりさんが「カスタマーサクセスはPMFを加速させることが責務だ」と発表されていらっしゃいます。PMFとは、プロダクト・マーケット・フィット、プロダクトとは自社の製品とサービス(カスタマーサクセス)を指すわけなのですが、これを常にマーケットにFITさせていくことがSaaS企業は求められます。

そして、PMFにおけるM:マーケットは、事業成長すればするほど、さらなる広いマーケットに販売していけることを投資家や経営者としては追求していくものです。

そのため、カスタマーサクセスは、広がり続ける顧客層に対して対応できるように動く必要があり、そのために、セールスとも連携し、「こういう顧客なら合わせて対応できる」「この顧客はちょっとむずかしいかな…でも挑戦してみたい」といったような議論が出来るべきなのです。

異なる顧客層にフィットさせるのは「カスタマーサクセス」の仕事

また、SaaS製品は新規機能を開発することで、出来ることの幅が広がり、提案余地も増えます。今後の事業拡大=顧客の広がりに合わせて機能を揃えていく必要があり、開発ロードマップの調整に対してもカスタマーサクセスが貢献するべきです。

事業のストレッチにカスタマーサクセスが対応するのです。

④コンパウンドスタートアップ:マルチプロダクトの戦略的なカスタマーサクセスへの対応

新プロダクトを出し続けるコンパウンドスタートアップにおいて、Expansionを通じてプロダクトシリーズの価値をより深く提供していくことは重要です。そのために組織が専門化していきました。

コンパウンドスタートアップは、SaaS経営におけるキーワードになるでしょう。

SaaSはDBやUI、ブランドを共通化することで、様々な業務フローを統括したコングロマリットな総合SaaSに進化することで、自社でアプローチ出来るマーケット規模を拡張させていきます。
これは顧客の目線から見れば、「学習コストが減る」「レポートやAI品質が高くなる」というメリットがありますし、企業としては「LTVとCACが改善」され「利益率の高い」健全な企業経営がしやすくなるというメリットがあります。
以前の記事で、台湾企業のAppier Groupの製品ポートフォリオ戦略について触れ、複数製品を戦略的に取り扱うことで高いユニットエコノミクスを実現していることを解説しました。

顧客が投資したくなるような魅力的な製品を自社で揃えていく「製品戦略」により、エクスパンション(契約拡大)のための活動を推進しているのです。
単一プロダクトとして十分な規模に成長した国内のSaaSベンダーは、クロスセルが出来る次なる新規プロダクトに投資し始めており、カスタマーサクセスとしても、この増えてゆく製品をどのように顧客にデリバリーするのか、という新しい課題が生まれています。

私の前職のビズリーチ(ビジョナル)も製品数を増やしていますが、じゃあこれら製品をカスタマーサクセスはいかにデリバリーするのか?1人のカスタマーサクセスがすべての製品を提案できるものなのか?という新しい課題が生まれます。

梶原さんは、カスタマーサクセスしている顧客で、アップセルクロスセルに繋げられる可能性が高い顧客を「CSQL」として扱い、社内の営業部門にパスすることで複数製品を顧客に案内する体制を作っています。
カスタマーサクセス部門は業務範囲が広く、営業まで手が回らないことも多いです。そこで、既存顧客に対する専用の営業担当、つまりポストセールス担当を置く会社も増え始めています。これは「カスタマーセールス」とも言われています。

⑤CSOpsよりBizOps

CS Opsやデータ分析を推進していたチームです。
もとはCS内の1チームでしたが、Opsは結局THE MODELのどの部門にも必要です。SalesのSalesforceの項目変更がCSに影響したり、マーケが使っているHubspotをCSが使いたくなって車輪を再発明していたり、契約・請求まわりなど部門横断で整理すべきトピックもありました。

そこで事業部の共通組織としてBizOpsチームが立ち上がりました。

以前にCSopsの記事を書いたのですが、梶原さんのおっしゃるように、カスタマーサクセスに閉じたOpsだけでなく、CSとセールスマーケも横断的に見るBizOpsを設置する会社がちらほら登場し始めました。

計数管理・データ分析・ビジネスプロセス・テクノロジーなどに強いOpsの能力は希少です。カスタマーサクセスだけに閉じるのはもったいない+近年のSaaS企業の営業強化路線によって、BisOpsとしてマーケ、セールス、CS全般のOpsを担う会社は増えていくでしょう。
SFAなどのITツールは部門横断で使うほうがDBが別管理にならずに済みますし、顧客体験としての統合性も設計できます。ビジネスファネルのすべてを把握しているBizOpsのほうが、CSOpsよりも求人数・就業数ともに増えていくかもしれません。

⑥成長企業のカスタマーサクセスは組織変更・役割変更が頻繁でスピードが早い

一段と深めていくべきトピックが大量にあり、複雑化したカスタマーエクスペリエンス活動をぐっと深める方向に舵を切りました。
CSメンバーが増え、プロダクトが半年に1つ増え、お客様がすごく増え、お客様層が広がり、2つの法律・制度が大きく動き、また次の新規プロダクトを仕込み中で、パートナービジネスも成長し始めている状況でした。
その後、体制は3ヶ月ごとに少しずつ変化をさせながら、現在は主に下図のようになっています。

事業が大きくなると、対象顧客が広がり、製品や機能も増え、タッチモデルも多様化、パートナーも考慮・・・と、カスタマーサクセスの仕事内容は多様化し、カオスになっていきます。私は、梶原さんと対面で話すときはいつも、「まだまだ整えていかないと…!」「内情は大変なんだよ…!」みたいなテンションの印象です。笑

梶原さんはお会いすると、いつも笑顔で「いや~大変なんだよ…!」と話していただけます。貴重なカスタマーサクセスの情報発信、本当にありがとうございます…!

事業成長とともに考えるべき論点が増え続けますため、カスタマーサクセス部門は常に組織変更、役割見直しが必要です。LayerXでは3ヶ月や半年くらいのスパンで組織変更しているようです。
我々にとって幸いなのは、LayerXやSmartHRのような国内で先頭に立っているSaaSベンダーが先にカスタマーサクセスの組織を試行錯誤の中整えていくので、その背中をみて組織設計を学ぶことが出来ることです。

⑦テックタッチでセルフサクセスできるのは全顧客の2割、を目標に組織設計をする

昨年秋頃から活動を始めたセルフサクセスチームは、サービス利用上の課題をお客様が望むタイミングで自己解決をしていただけるよう、また増え続けるお客様に対して我々が適切なエコノミクスを維持しながらサービスを提供できるよう、ロー/テックタッチ、コンテンツ、ステップメールなどを通じたサクセス活動を提供しています。
対象は毎月の新規契約社数の10-15%にあたり、クラウドツールに慣れていて自ら積極的に設定を進めてくださるお客様、導入サービス数や利用予定が少なめのお客様などです。

梶原さんの表現として「セルフサクセス」という言葉が出ましたが、カスタマーサクセスにおいてテックタッチで支援するとは、顧客がデジタル上のコンテンツを通じてセルフサービス、自分でセルフカスタマーサクセスすることを指しますので、まさにセルフサクセスです。
よく、「うちはハイタッチじゃないと回らない」というカスタマーサクセスの人がいるのですが、それは「顧客が取引先に言われないと製品を触ろうとしないくらい、セルフ利用のモチベーションが低い」と同義なので、危ない状態です。

テックタッチとはセルフカスタマーサクセス

そのため、一定の比率、セルフカスタマーサクセスが出来る顧客カテゴリを作る努力が必要です。
梶原さんはテックタッチで対象とする顧客を10〜15%にしたと記載されてますが、理想の組織としては、

  • 2割は完全テックタッチ

  • 6割はハイブリッド(テックタッチ+ハイタッチ)

  • 2割は完全ハイタッチ

    のバランスが現実的でいいと思います。

実際に梶原さんもこれに近いチーム分けしており、一般的なSaaSベンダーの黄金比率だと思います。

現在、ハイタッチ依存が抜けきれず疲弊している組織が増え出しており、弊社openpageに相談をいただくケースが増えています。
現在、10割ハイタッチだとしたら、まずは「5割ハイタッチ、5割ハイブリッドタッチ」を目指す。そして「4割ハイタッチ、5割ハイブリッドタッチ、1割テックタッチ」に挑戦する。徐々にテックタッチの比率を増やす。という順番で、一歩ずつ理想のタッチモデルの状態に向かって変革していくように話しており、もし課題を感じている人がいればすぐ動いたほうがいいです。

上場を目指すベンチャー企業であれば、10割ハイタッチはよほどの高単価SaaS(月額50万、100万が当たり前の製品)でなければ現実的ではなく、月10万円~20万円前後のSaaSであれば上記比率を意識したカスタマーサクセスの組織設計に変える必要があります。

製品単価によってタッチモデルの比重を変化させる必要がある。完全ハイタッチを増やす場合は製品単価に転換できなければならない。

事業計画から社数とユーザー数を引いたときに、ハイタッチ依存はどこまでいけて、どの年・月から難しくなりそうなのかを、CFOや経営企画と、カスタマーサクセスは連携して話し合うべきでしょう。計画的な組織設計をしなければカスタマーサクセス体制は破綻します。

⑧新人だらけのカスタマーサクセスチームを回すうえでもオンボーディングの型化、テックタッチ用コンテンツは必須

ここ半年間はどちらのチームもオンボーディングの改善にとても力を入れました。というのもプロダクトが増え、お客様のサービス導入パターンが増え、その上チーム独立やPMMへの異動などが重なり、入社半年前後のメンバーで8割以上のお客様を担当していたからです。

梶原さんのコメントで、「入社半年メンバーで8割以上のお客様を担当していた」とありますが、これは成長中の新興SaaS企業であればよくある話でして、急成長の過程では急激にカスタマーサクセスの人数を増やす、その結果カスタマーサクセス部門が新人だらけになるということが発生します。

世の中にはカスタマーサクセス経験者はまだまだ少ないですし、自社と製品領域が近いカスタマーサクセスの経験者だともっと少なくなります。そのため、短期間でオンボーディングができるように社内で育成マネジメントするできる体制を考えなければなりません。

そのうえで有効なのは、対顧客に対する「オンボーディングプロセス」の徹底的な型化です。

オンボーディング改善では、プロダクト別のオンボーディングフェーズと完了基準の見直し、Salesforceの項目チューニング、行動管理/アラートの強化、お打ち合わせ資料のアップデート、コンテンツ作成などを進めました。(すべてメンバーが進めてくれました!)

と梶原さんのコメントがありますが、オンボーディングのフェーズや基準、顧客管理・アラートの仕組み化、資料やコンテンツのアップデートをし続けてきたことがわかります。
そして、梶原さんの図では、テックタッチ中心のセルフサクセスチームが作成するオンボーディングの資料・コンテンツがハイタッチのチームに連携されていることが伺えます。

テックタッチでコンテンツを作成すると、これがカスタマーサクセスの型になり、ハイタッチの育成にも活きます。カスタマーサクセス部門が新人だらけになり、顧客提案の体制が混乱する前にチームを整備することは必須でしょう。

⑨「業務フローに組み込まれるSaaSかどうか」がチャーンレートに大きく影響する

バクラクのCSにとって1番重要なKPIは期間内のオンボーディング完了率です。オンボ完了率はチャーンレートに対する1番大きな先行指標です。
バクラクは業務フローに組み込まれるツールのため、オンボーディングをしっかりできればほとんど解約はなく、逆にオンボーディングに失敗すれば基本的に業務フローに乗らず解約となります。

梶原さんの発言に加え、私の経験則からも、「業務フローに組み込まれるSaaSかどうか」は解約率に大きく影響します。業務の工程でこの製品を必ず経由する、といったものになっているほど解約率は低いです。業務に組み込むためのオンボーディングを行えば、その後のカスタマーサクセス負担は軽くなります。

業務フローに組み込まれるSaaSであるか?

一方、業務フローに組み込まれないSaaSとなると、ずっとカスタマーサクセスのフォローが必要です。つまり、オンボーディングだけでなくアダプションフェーズにおいてのコミュニケーションも継続負担としてのしかかります。

チャーンレートが高くて悩んでいる企業の多くは、そもそもその製品がなくても仕事が回ってしまうケースがほとんどです。そのため、製品開発・サービス開発の観点で業務に深く組み込まれるSaaSになってるか。これ無しでは回らないというくらい便利な機能を開発しているか。これは、カスタマーサクセス部門だけでなく、経営陣が真剣に考えるべき重要テーマとなります。

⑩クロスセル・アップセルを誰がやるか問題

新プロダクトを出し続けるコンパウンドスタートアップにおいては、常にExpansionへの種まきやCSQL(Customer Success Qualify Lead)を創出し、お客様により深く価値を届けていくことは重要です。
CSQL創出数はCSのひとつのKPIとして持っており、特にチーム1/2ではオンボーディング期間中におけるタッチ活動をしています。
なお、“CSQL数”がKPIとして良いかは答えは出ていません。CXMがExpansion MRRを目標に持つと、その土台となる活動である契約済サービスのオンボーディングが歪む可能性があるので、現状はCSQL創出までとし、その後はカスタマーセールスにトスアップして一緒にExpansionを推進しています。

これまではあまり問題が表面化してこなかったのですが、マルチプロダクトやコンパウンドスタートアップの経営戦略を採用するSaaS企業が増え始めてきたことで、「クロスセル・アップセルをどうするか問題」が発生し始めています。

クロスセル・アップセルどうするか問題

というのも、カスタマーサクセスは既に業務として顧客へのサポートと製品活用支援があり、それをこなすだけでも結構大変です。さらにポストセールス(クロスセル・アップセル)の目標まで持つと、業務が回らなくなるでしょう。
LayerXの梶原さんは、CSQLによるパスに業務をとどめており、ここは正解がありません。
私は、昔は「営業へのパス目標のみのチーム」と、「MRR目標を持つチーム(カスタマーサクセスが営業もやる)」とを分けたりしましたが、正解であったか正直自信がありません。まだマルチプロダクトにおけるSaaS事業運営の経験が日本全体少ないため、各社、試行錯誤の取り組みとなるでしょう。

⑪「パートナーサクセス(販売代理店向けカスタマーサクセス)」の立ち上げが求められる

ここから先、事業としてパートナーアライアンスの動きがとても重要になってきます。非線形での顧客増や顧客セグメントの広がりが見込まれます。
パートナーが関わるCS活動は様々な契約形態や求められる支援の形が出てくるはずで、既に複雑化し始めあわあわしています。本腰を入れて直販のお客様と活動を分けて整え続ける必要があります。

SaaS事業ははじめはPMFを図るため自社での直販を中心に営業・カスタマーサクセス組織を組み立てます。PMF後、営業とカスタマーサクセスの直販の型が出来たのちに考えるテーマの一つが「パートナー制度」です。
日本では2010年代後半に直販中心で成長してきたSaaSベンダーが、2020年前半にパートナーアライアンスを立ち上げるケースが増えています。パートナーのほうが顧客との長いリレーションがあり信用されやすく契約率も高いことがあり、有効なチャネル戦略になります。

しかし、では、パートナー経由で獲得した案件を、パートナーに任せるか、それとも自社でやるか。前者だとしたらパートナーをどのように育成し協力してもらうか。という課題が発生します。

パートナーが獲得した案件のカスタマーサクセスをどうする?

つまり、パートナーはパートナーで「カスタマーサクセス」しなければなりません。カスタマーサクセスならぬ「パートナーサクセス」です。既にカスタマーサクセスは1通りの組織設計や施策を試しきったSaaSベンダーが増えており、次はこのカスタマーサクセスの手法をアライアンス先のパートナー(販売代理店)に展開できないか?という動きが始まりだしています。

⑫カスタマーサクセスの指標・KPIはほぼ固まりだいたい同じ。

バクラク事業のカスタマーサクセスKPI

弊社のopenpageのブログやYoutubeチャンネルでもカスタマーサクセスの指標やKPIの発信は人気なのですが、私の所感として基本的なKPIはほぼ出揃っており、だいたい結局は同じカスタマーサクセスの指標を採用することが多い印象です。

カスタマーサクセスのKPI、だいたい同じ説

数値目標として一番重要なのは、毎月のMRRとそれに対応できるCSを採用出来てるのかの体制面です。梶原さんも採用計画を目標に置かれていて、直接話を伺ってもかなりの時間を採用に費やしている様子でした。カスタマーサクセスのヘッドカウント数が、毎月フォローアップできるオンボーディング社数に強く影響するため、事業計画に合わせた採用のコミットメントが重要です。

また、基本的にはカスタマーサクセス部門としては「解約」をモニタリングするのですが、解約は遅行指標なので、「オンボーディング率」を見るケースが多いです。
ただ、前述した通り業務に組み込まれるならオンボーディング率のみでいいのですが、組み込まれないならオンボーディング以降のアダプションの指標、定期的な製品ログイン状況などのモニタリングが必要となります。

なお、ここで「ヘルススコア」が話題になるのですが、カスタマーサクセスは業務量がとにかく多いため、結局はシンプルにしないと指標は見切れません。ヘルススコアを本格運用出来ている会社は少なく、実態は各社わかりやすい指標を置いていることが多いです。

⑬オンボーディング常に見直しが必要

バクラクでは新プロダクトをこれまで年に2つのペースで出し続けており、今後もコンパウンドスタートアップとして変わらず出し続けます。新プロダクトが出る度にCSはオンボーディングの整備や組み合わせによるアップデートが必要です。
「もうオンボーディングはきれいに整ってるんでしょ?」「もう150名を超える会社に今から入っても立ち上げフェーズは終わってるんでしょ?」と思われるかもしれませんが、事業の成長スピードやプロダクトローンチに伴う変化が激しく、体感としては半年に1回何かを立ち上げ続けている感覚がありますし、これからも続きます。

SaaSは変化が激しいため、特にカスタマーサクセス業務として比重の大きいオンボーディング業務は何度も見直しが求められます。
対象とする顧客層、新たに開発された機能、新プロダクト、新オプションなど案内のバリエーションが広がり続けるため、オンボーディングのプロセスで何を伝えるべきかは半年〜1年に一度くらいのペースで再設計が必要です。

特に、認識しておかなくてはならないことは、SaaS企業はカスタマーサクセスとして必要となる製品知識が無限に増えまくることです。これは顧客だけでなく社内のカスタマーサクセスメンバーも混乱します。そこで、製品知識を常にアップデートできるようなeラーニング環境も必要となります。社内ナレッジサイトだけだと結局運用が追いつかないため、テックタッチの環境を整備しきってそれを社内のカスタマーサクセスメンバーが見にいく、という運用が現実的です。(弊社openpageの事例もご参照ください)

⑭アダプションは高単価SaaSのQBRが参考になる

アダプション期の活動、できていません
お恥ずかしながら全然できていません。「現在の体制と業務内容」でオンボーディングについては触れていますが、アダプション期についてはリアクティブな活動に留まっています。
新機能デリバリーの改善や機能利活用の促進、リニューアルマネジメントなどは最近やっと少〜し始められたところです。

アダプションフェーズは、エンタープライズ向けのSaaSならQBRとして四半期ごとのビジネスレビューを入れることが一般的で、外資系企業のSaaSベンダーではよく実施しているのを見られます。アドビ様がQBR用のレビューシートを作って振り返りMTGをしていることを、以前弊社のイベント「CSHERO」内でお話いただきました。

QBRを通じて、活用提案や新機能の紹介、そして解約阻止または契約拡大のための提案を整理し、時にはセールスが同席してエクスパンション提案する、という動き方がアダプションでは一般的です。
これはエンタープライズ向けのSaaS企業が先に進んでいる印象です。
LayerXのバクラク事業は単価が手頃でSMB顧客の比重が高い・かつ一度業務にはまれば解約されにくいため、オンボーディング側が先に整備されたのだと思います。
そもそも国内では高単価SaaSはまだまだ少ないのですが、少しずつ日本のSaaS企業でも高単価な製品が増え始めているため、今後アダプションフェーズのノウハウがどんどんと開示されていくでしょう。

⑮採用、オンボーディング、テックタッチが落ち着いたらヘルススコアに着手

実は、サービスローンチから2年も経ちますが、未だにヘルススコアはありません。
ヘルススコアはえいやで作ったあとに、チャーン発生ごとに1件1件振り返って閾値や変数をチューニングするものと思っています。
足元ならびに向こう1年の見込チャーンレートがissueに上がらないくらい非常に低いため、良くも悪くもロジックが全然育っていません。
一応、個社に対応するものとして、個社別の利用状況をこまかく見るダッシュボード、然るべきタイミングに初期設定が終わっていない場合のアラート、顧客層を5段階に分類するバクラクスコア、利用状況が異常値になった際のアラートはあります。
一方、気付いたら利用社数が多く積み上がっており、このままではいられない状態になり始めています。
アダプション期の活動も併せて、来期中には顧客全体を俯瞰してデータに基づきピンポイントで効率的なアクションを促す仕組みが必要になってきます。一緒に1からやりませんか?

カスタマーサクセスは安定稼働をさせるための施策の優先度があり、まずは人がいないと回らないため「採用」、そして「オンボーディング」の取り組みを整備します。しかし人では回らない体制になってくるため、「テックタッチ」に着手します。

そして、その後はアダプション・エクスパンションを見越して、契約拡大を本格化するポストセールス的な活動を本格化していくのですが、あまりに顧客数が多いと、どの会社に何を提案するんだ?が混乱してきます。

そこで登場するのがヘルススコアで、取得してきた設定状況、製品利用、コミュニケーション、契約などのデータを一つにまとめ、色や得点でサマリます。
ただ、梶原さんのコメントからも読み解けますが、そもそも取得できるデータが取れているからこそサマリーにして管理出来るようにしようという話になります。データが十分にない場合は、オンボーディングやテックタッチの取り組みで基本的なデータを取得する環境作りのほうが優先度は高いでしょう。

おわりに

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