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二人の”スピード感”を、対話で決めるということ。(前編)

オープンダイアローグ夫婦の恒例ダイアローグ、今回は「対話とスピード感」についての対話へと進んでいきました。前後編でお届けします。

この記事はメルマガ「おうちの人間カンケイについて」(月3回発行)の8月分を再編集したものです。私たちは日常的なダイアローグの他に、メルマガ用に毎月1回テーマを決めてダイアローグしています。メルマガ登録はこちらです。

「本当にマイペースにしてたら怒られる」

(細字:ふゆひこ)今月もよろしくお願いします。今日は2020年8月7日、場所はIKEA 長久手店です。けいこさん、今日も話したいこととかテーマとか、思い浮かんだこととかあったら教えてください。

――(太字:けいこ)なんだろ、なんかこれといってまだ思い浮かんでないんですけど。何かありませんか。

先日けいこさんが「聴き合うこと」っていうテーマを出されていて、さらにその前からずっと、「”毒親”っていう概念を3方向から語ってみる」っていうのもあったね・・・「3方向」っていうのは「子」「親」「周りにいる人」っていう3者のことだけど。

という2つのお題がこれまで出ていたけど、その他にも思い浮かんでることとかあるかな。あるいは、これまで挙がってきたテーマをいま聴いてみてどう思うかとか、教えてほしいなと思います。

――ああ・・・、そういえばそういうテーマを出したなぁと思って。きっと出したときは何か思ったことがあったんだろうけどね。どっちのテーマも、「いつか話してみたいな」っていう気はするけど、ちょっと今の気分とか雰囲気とかじゃないか・・・みたいなのがあって。このまま、その感じで話し出してみたらどうなるかなっていう気もしている。特にテーマがあるわけじゃないんだけど。そんな感じですよ。

それじゃあ、いま思い浮かんでいることを聴かせてください。

――今ここ IKEA じゃないですか。2年前3年前、フィンランドに行ったことを・・・北欧つながりみたいな感じで話そうかな。

なんと言いますか、「スピード感」というか、生活のスピード感みたいなことが、今ちょっと思い浮かんできていてね。

何ていうか、これまでこの歳まで自分が生きてきた中で、一定のスピードの幅に合わせてないといけないことが多かったと感じていて・・・「マイペースに」って言われるけど本当にマイペースにしてたら怒られる、みたいなこと。人のペースに合わせなきゃいけないとか、周りのペースを見てその範囲の中で自分のペースを決めないといけないみたいな、自分のペースありきではないっていうことが、しんどく感じてたんだと思って。

これって、一人で生きていたら人のペースとか関係ないから考えなくていいけど、家族とか学校生活とか社会や会社とか、何かしら他者と関わることが出てきたときに、空気を読むっていうか。なんか大変、嫌だなって。

最近はコロナもあって、人と距離をとることを意識させられているからかもしれないけど、自分の空間の中にいる人の数が少なくなって、自分の中に「余白」が増えたみたいな感じがわたしはしている。

それは自分のペースとかスピード感っていうのを自分で決めやすくなった感じがして。自分のペースありきでいいということかもしれない。少し離れたところに他者がいるんだけれど、そこまでは自分のペースでいい、みたいなのが目に見えて分かりやすくなっている感じがして、私はすごい楽になったなって。どうですか。

「自分のこの速いスピード感でやってると、結果的に時間がかかる」

この文字起こしアプリ、すごいね。けいこさんの話をちゃんと聞き取ってる。私の話は正確に聞き取られないんだけど・・・。「スピード」なー・・・とか思いながら聴いてたけど、 けいこさんがこのアプリに優しいスピードで喋ってあげてるから、正確に聞き取られて、後から見直しが少なくて済んで、結果、早い。「急がば回れ」言うたらそれまでだけど。

私が早口だから聞き取れないんだよね、このアプリ。 だから結果的に直しも時間がかかるんだよね。「スピード感」っていうテーマをけいこさんが出してくれたけど、面白そう!と思ったんだよね。というのは、自分の中でもずっと「スピード感」について考えてたからだと思うんだけど、それがけいこさんからも出てきたから嬉しいな、と。

私の中で思い浮かんでくることはというと、「自分のこの速いスピード感でやってると、結果的に時間がかかる」っていう現象についてなんだよね。文字起こしアプリの話みたいに、ゆっくりやった方が結果的によかった、直しみたいな余計な作業が増えないから長いスパンで見ると無駄がなくて早いこともあるなと思って。「丁寧に」っていうことなのかもしれないけど、「時間をかけたほうが早い」っていう逆説。

それで、今けいこさんと一緒に会社とか事業所の立ち上げをやってるんだけれど、その時にやっぱり、自分が知ってる一般的な組織集団、会社組織の働く文化とかスピード感を、無意識に当たり前に踏襲しちゃってるなーって気付くときがあって。

でも、そういう既存のスピード感が、対話のできなさとか、家庭や身体が壊れることとかにつながってると、私は思っているの。だから、自分たちで対話ができる時間の流れのある組織や働き方を創ろう、っていうのをやろうと思って定款とか運営規程とか作ってるんだけど、それを実行する際の「フルスピード感」が昔のままだ、っていう(笑)。それで苦しくなったりして。

スピード感って、働き方とか働く時間とかペースとか、どのくらいがいいんだろうね。もちろん、私たちにとって。それを定義し直す作業を、今してるのかな。日々対話しながらなんとかやってるわけだけど。

オープンダイアローグってベン図で説明されることがあるじゃないですか。3つの円の。

ベン図

でさ、私たちはずっと、右下の円(信念・哲学)の部分とか、いちばん上の円(実際の対話に場面における考え方)とかをずっと意識してやってきたけど、ここへ来て左下の円、つまりダイアローグを実施できる組織づくりというか、対話できる体制でいるには何にどう気をつけたらいいか、みたいなこと、それが今やってる組織づくりにあたってるのかなと思っていて。

対話性を失わないで働けるってこと、そういう組織ってどういう組織だろうとかっていうことに、今チャレンジしてるのかなっていう気がしていて。そのときに「スピード感」て凄い重要な要素だと思うんだよね。 対話をするために急いだりとか、対話をしようとして対話できなくなったり、オープンダイアローグをやろうとして労働時間が長くなったりとかって本当に意味がないと私は感じるから、本末転倒にならないようにしたいと思っているの。

私の中では、この「スピード感」というテーマからそういうことが思い浮かびます。けいこさんの思い浮かんでいること、あらためて聴かせてください。

「居る」か「いなくなる」かの二択じゃなくて

――なるほどな、とか思ったこともあったんだけど、ひとつは、「 スピード感」について、もう「遅さ」みたいなふうに思ってたのが、「ていねい」っていう言い換えができて、さらには結果的に長い目で見たときに直しが少なくて済むみたいなことを聴いて、「スピードが遅い」っていうことの コンプレックスさとか、そのことで怒られるっていう体験があったなーっていうことは覚えてたけど、「 丁寧にやるよね」「ちゃんと最後までやるよね」っていうことが認められる経験っていうのも、そういえばしてきたなっていうふうに思い出したのが一つ。

あともう一つは、オープンダイアローグがNHKで特集されたときに、琵琶湖病院の村上さんが、対話を開くということが、結果的に・・・その、何かちょっとちゃんとした言葉忘れちゃったけど・・・結果的にやり直しが少なくて済むとかみたいなことをおっしゃってたようなことを思い出す。

速いスピード感みたいなものを求められたりしがちな世の中だったけど、そうじゃないものをちゃんと見てくれる人もいるなと思ったし。

コロナとかなかった頃だとか、「with コロナ」とかって最近よく聞かれるけど、そんな中でそういった働き方のこともそうだし、生活そのものも何かこう、今までのスピード感から何か変化をすることが、そんなことを考える時間みたいなものになってたり、そういうのにチャレンジする時間になってたりもするのかなあなんて思って、それをもう、し始めちゃうみたいな。

人との付き合いの距離感とか、人との付き合いは変わらないんだけど、その中でのスピード感とか。

あからさまに距離を取るっていう意味じゃなくて、なんか「気持ちの上での距離感」みたいなもの、自分の側もちょっと意識的に持ってもいいんじゃないかなとか。

まとまらない話だけどなんかそんなことを思ったりだな。

もう一つ思ったのは、自分のスピード感っていうのがあるなと思うってことをさっき言ったんだけど、もう一つは、他者が現れて関係が始まると自分のスピード感だけではいかないときがあると思うんだよね。

その他者の集団が複数あることって、よくあると思うんだよね。自分が所属しているコミュニティが一個や二個じゃないから。たとえば自分が「母親」として子どもを見るとか、「 妻」として夫といるとか、自分が「子ども」の立場で親と接するとか、「ママ友」とか「職場」とか、学生時代から仲の良い「友達」との中でとか。1対1というより複数の人がいる集団かな。

それぞれのコミュニティの中で、スピードって全然違う自分なんだと思うんだけど、でもどれも自分だと思うんだよね。

それを一個にする必要って全くなくて、関係性の中で「私はこの距離感が心地いい」っていうのを見つけていればいいなと思った。そういうところを私はあまり意識的にしてこなかったんだけど、意識的になっていけたらいいなって思うし、どんなコミュニティにしろ、これから作るにしろ、自分が居やすい感じを探していけばいいことだと思った。無理して合わせる必要もないけど、「居る」か「いなくなる」かの二択じゃなくて、心地の良い居方みたいなのを探していけたらいいなと思った。

このことを、私は実際に会って波長の合う人たちと、オンラインで会ったときに、ちょっと言葉にはならないんだけど「いつもと違う感じ」を感じて。 オンラインになった途端、声がちょっと平面的に聴こえるというか、何か違和感みたいなのがあって、その違和感て何かなって考えたことがきっかけだったかもしれない。

(後編へ続く)


相談室おうち mina4recovery.com
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