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二人の”スピード感”を、対話で決めるということ。(後編)

前編はこちら。

「どちらも安心なスピード感」の決め方っていうのはどういう方法があるんだろう

(細字:ふゆひこ)コミュニティの中でのスピード感というような話が出たと思うんだけど、もっと聴いてみたいなと思ったのは、コミュニティの中で何かプロジェクトみたいなのが走ってるときのスピード感について。

他者という相手自体ではなく、他者と行う、たとえばプロジェクトみたいなもののスピードとの関係性についてはどうなんだろう、と。「期日」とか「締め切り」みたいなことかなと思うけど、そういう分かりやすい指標みたいになるものっていうのはやっぱり守らないといけないとされていることだから。

自分のペースだけで決められない部分ていうのは、人との付き合いっていうところと一緒かなと思って。ある程度で、この期日までにはこれをする、とかっていう、決められた締め切りというのは、何て言うか、その期限を守らないと、自分に結局返ってくるわけじゃないですか。

――(太字:けいこ)あんまりなにも思い浮かばない、というか、この話とは違うことが思い浮かんでくる。何か、その質問の意図みたいなところとか。

いま私たちは市役所に提出する書類があるっていう状況で、そのことがあってこの話が出てきたのかなっていうふうな想像をした。

できれば私は早い期日に間に合うんだったらそこに間に合わせてっていうふうに思っていて、それまでにやることって何があるんだろうなっていう、他者(ふゆくん)のスケジュール感っていうのが私の中で多分あんまり具体化されてない感じがしていて。

漠然と捉えているから、ここまでにやんなきゃいけないっていうスケジュールが立ってないっていうのが、私の中にあるんだと思う。期日がいつかとか、どんな書類を揃える必要がるかとか、どこを直す必要があるかっていうのは分かっているけれど、なんか、どの部分は私がやるとかやらないとか、そういうスケジュールというか実務的なことが私の中に落ちてないっていうのがあるなっていうふうに思うから・・・ 今の質問は何ていうか、ちょっと裏があるように感じてしまった。いつまでに提出する書類があるかとかっていうのをちゃんと理解してるのかとか、分かっているのかとか、書類の仕事を私が実務としてやっていないので、分かってるかどうかを問われてるのではないか、みたいな、裏というかお腹の中にある言葉みたいな、そういうものを。

それは、でも、私がそこに後ろめたさがあったりとかするから、そういうふうに感じたんだろうなっていうところが9割ぐらい。あとの1割のところは、なんか本当に裏があるんじゃないかっていう、勘ぐるみたいな、そんな感じ。

(ふ)「勘ぐる」とか「後ろめたさ」っていうことを言ったけど、何かそのことについて、すごく私、大事というか、もし侵襲的でなければ聴いてみたいなと思ったんだよね。

というのは、その「スケジュール感」とか「スピード感」ってさ、他者との間で決まるみたいな話が出たと思うけど、それは他者からしてもそうだと思うんだよね。けいこさんとの間で決まる、とか。

でも、振り返るに何かこう、何て言うのかな・・・私たちの間が、けいこさんの安心できるスピード感になってないことが多いんじゃないかなと思っていて。それで、けいこさんももしかしたら、そのどちらかのスピード感に合わせるのが難しいことに「後ろめたさ」っていうのを持っていたりするんじゃないかなと、いま聴いてて、それこそ勘ぐったんだけど。

だとすると、「どちらも安心なスピード感」の決め方っていうのはどういう方法があるんだろうって思ったの。

「ちょっと時間がかかるかもしれないけど、対話ありきで、対話の中で決まったことをする」

これは一般的な話もそうなんだけど、私ら二人の間でもそうだと思うんで。「スケジュールとかスピード感に関する対話」っていうの?これ、なんか今朝、ごはん食べながらした話がすごく良かったなーって思い出されてるんだけど。

「今日はちょっとスケジュールがタイトで、これとこれとこれをこういう感じにやる必要があると思うんでね」みたいな話を私がして、けいこさんもそれを聴いてて、何か私がトイレ入ってる間に、早速もう電話をかけてくれて用事を済ませたりしたりして。

そのとき私、「あっ」と思ったんだよね。「スピード感」、頑張ってこちらに合わせてもらってたんだけど、それにしても「共有できてる」っていう感じがして私は嬉しかったんだよね。

会社とか大きなビジネスとかだと、経済合理性が多分スピード感を決めるいちばんの要素になって、その大きな流れに個人の快適さとか安心感ってのは抗えないと思うんだけど 、でも小さな小さな、二人の間とか、家族の間とかでのスピード感って、会社や経済のスピード感とは違うオリジナルを作ってもいいと思うんだよね。切り替えが難しいかもしれないけど。

だから、あの、何だろうな・・・私という他者の固有かつ勝手な速度に合わせるのが難しいということでけいこさんに「後ろめたさ」を感じてほしくないし、そんな必要ないし、「二人の間のスピード感」というのを決められるんじゃないかと思ってるんだけど、私の予定の出し方とか動き始め方とかが、まだ昔の一般の会社で働くときの感じになってるから・・・。

あと、私はすごく何でも全速力でやるタイプでも元々あるんだけど・・・「MAX 頑張る」みたいな・・・あと、「未来」とか「時間」っていう概念も関係あると思うんだけど・・・「予測して逆算すると作業量が決まってきてスピードかも決まってくる」っていうのがあるんだけど、それが割とモノローグだったりする。

その「予測」や「逆算」というモノローグを対話で共有するっていう作業も必要だったりすると思うんだよね。

あと、けいこさんは「いまここ」の人だから、到達したい未来から逆算してというより、「いまここ」から一個一個やってく、っていうふうになっていくと思うんだよね。

そしたらさ、対話と一緒だけど、逆算しないってことは、ずっと「不確実」なわけよね。「この速度でいいかどうか」とかっていうのも、ぜんぶ不確実なまま進むことになると思うんだけど、でも、その「一個一個」「いまここ」っていうの、そっちのほうが究極だと思うんだよね。逆算て、要は不安とか煩悩だからさ。

「逆算」と「いまここ」っていう2種類の人間が、この身体を持って社会っていうものの中でやって行くときに、どういうスピード感とかスケジュールの出し方とかがいいのかなっていう話になるなあと思って。

それを、「なんか合わせなきゃ」とか、「相手に合わせられない自分に後ろめたさ」とか、そういうふうになってほしくないし、私もそう、何かもうちょっと「既存のスピード感」をなんとかなくしていきたいっていうか、脱したいって、そう思うんですよ。

フィンランド人が特別すごくゆったりしてるかっていうと、私はそうも思わないんだよね。彼らには、ただ、基準があって・・・たぶん「4時に帰る」とか「夏休みは2ヶ月とる」とかっていうところに価値観があって、で「その大切な価値から逆算すると今日の労働時間はこういうスピード感でやんないと4時に帰れない」みたいな感じだと思うんだけど、そういう忙しさなら悪くないなっていう気はするんだよね。

私は大事なものがはっきりしてるし、その大事なものが、例えば株主とか社長とかの利益みたいなことじゃなくて、自分の幸福につながってるから、それが重要だと思うよ。

ちょっと長くなったけど、「後ろめたさ」とか何かそんなことについて、思ってること教えてほしいな。何についてでもいいけど。

――(け)思い出したのは、ゆかさん(註:共通の友人)が私たちのことを「空海と三蔵法師」みたいだって表現してくれた言葉が思い浮かんだ。これはちょっとどう捉えられるかわからないけど、「牡羊座と魚座」みたいだな、とか。

『spec(スペック)』っていうドラマも思い浮かんできた。ここまで話してきて、私、ふゆくんが持つスピード感や全速力でやるとか っていうのは、際立った特殊能力のひとつじゃないかなと思えてきたんだよね。それを無理やりじゃない振り切り方をしてくれたらいいなと思っていて、私には私の得意な能力があって、それをお互い違う特殊能力を持ってるから、いいところで補い合えたらいいなっていうふうに思っている。

今朝の話があったと思うんだけど・・・経済合理性のスピード感の話で、「いまここ」以外に、期日があるとかの「すべきこと」というのがあるっていう話だと受け取ったのね。

それで、今日みたいにスケジュールの話を聴いたときに、「じゃあ私はいつこれをやろうかな」とか「今日一日の中で、できる時間・する時間をどこかに作ろう」とかっていうふうに考えるなって思ったの。

その「すべき」も、何か強い抑圧するような感じではなくなって、そのときそのときの「今すること」とか「今できること」っていうのが、私の中でわかるって大事だなと・・・。

「対話の時間を作るために速くするっていうのは本末転倒」って話があったけど、先に「ちょっと時間がかかるかもしれないけど、対話ありきで、対話の中で決まったことをする」っていうのがこれからの生活でできるといいなって思った。

「効率を考えない方が効率的だよ」

(ふ)「対話で決まったことをする」って話があったけど、最近けいこさんに協力してもらってるのは、「"話す"と"決める"を分ける」っていう、ダイアローグの重要なやつ。

「"話す"と"決める"を分ける」って、安全に話すための工夫として紹介されているように思うんだけど、私が最近感じるのは、決めるためにこそ「"話す"と"決める"を分ける」方がいいんではないかということなんだよね。

「決める」というか、「決まる」感じになるのかな。「決める」をどっかに置いといて、とりあえず自動思考とかダラダラ話してると、何かまとまってきて、決まってくることがあるんだよね。

この現象、こないだ読んだ本(井上孝代さん『あの人と和解する』集英社新書, 2005)で紹介されてた、昔の「寄り合い」みたいだなと思って。三日三晩かけて、思ってることを延々みんなで喋ってると、自然と結論が決まってくるんだって。

「話す」と「決める」を分けないで「この場で決めなきゃ」ってなるときに「スピード感」が生まれちゃうんだよね、きっと。締め切りが生まれちゃって、ゆっくり話せなくなるっていうか、「この話が終わるまでに決めるには」っていう逆算が始まって、焦っちゃって。

スピード感の中では話せないことがあって、その中にこそ、「決まる」のに重要なものが含まれてるんだよね。だから「決める」を措いといて話してると、例えば私たちの朝の対話を「朝ミーティング」って私が呼んでるけど、その話の最後には何か整理されて、やることが分かってくるみたいなことがあるよね。

これも「急がば回れ」ということなのかなと思って。朝ミーティングだけでなくて、できたら夜にも対話ミーティングするっていうのもなんか大事だなって思ってる。今日やり残したこととか、明日やった方がいいこととかを出しちゃって、スキッとその日を終えて。

結局ね、対話に時間かけた方が速いよ、ってことなのかな。「効率を考えない方が効率的だよ」みたいな。逆説みたいなことかな。

あの、今ここIKEAなんだけど、ちょっといい話を・・・私が初めて IKEA に行ったのは4年前で、フィンランドの、オープンダイアローグが生まれたケロプダス病院を訪ねて行ったときに、その街のバスターミナルから IKEA が見えたの。そこはもうスウェーデンだったんだけどね。ケロプダス病院があるの、国境の街だから。で、ケロプダス病院の帰りに、国境を越えてIKEAに行ったんだよね。

その旅の終わりに、ヘルシンキの空港近くのAirbnbに泊まってたんだけど、そこのホストが駅まで送ってくれたんだよね。そのときに私、フィンランドの駅の改札に駅員がいないのがずっと不思議だったから、なんで?ってホストに聞いたの。

それは、フィンランドは人口が少ない(日本と同じくらいの国土に500万人くらい)、つまり労働力人口が少ないからなんだけど、要は不信ベースで「誰か悪いことすんじゃないか」っていうマインドでやってたら、リソースが足りなくなったり、「誰得」なものが増えたりするのよね。改札に人を置かなきゃならなくなるとか、ルールいっぱい決めなきゃいけなくなるとか。

信頼ベースでやる。「誰かがズルするんじゃないか」とか、不確実だけど、でも信頼ベースでやった方が結局うまく回ったり、何か良い社会になったりするっていうことを、フィンランドで学んだんだよね。

ホストの言葉が印象に残っていて、「ズルなんかしてたら冬を越せない」って言ってたな・・・。助け合わないと厳しい冬を越せないから、そんなズルするような奴はいないということなんだけど。それ言えるってすごいよね。かっこいい社会だなと思った。

だからその・・・日本の「労働時間」とか「休憩時間」とかさ、何かその、「労働者がズルしないように」決められてるんじゃないかなって感じるんだけど・・・。

だもんで「リモートワークになったらサボるんじゃないか」」とかなってさ。だから、もう一回、「怖いけど信じてやってみる」といいんちゃうかな、って思った。

IKEA に来ると北欧の信頼ベースの文化をちょっと思い出せるから、私はIKEA好き。いちばん近い北欧。

まとめ

――(け)では、今日はこの辺で。何か言い残したことはないですか。

(ふ)私は頭の中で未来から逆算するタイプなんだけど。不安が強いから。そうなったときに、作業がバババって出てくるんだけど、それをけいこさんと共有するタイミングみたいなのが・・・むかし勤めてたときもそうだったんだけど、見えたスケジュールを人と共有してこういう対話で共通したスケジュール感というかスピード感を作り出すということについて、そのタイミングがわからないんだ。だから「朝ミーティング」とかいう「構造」を設定して、ご協力いただいているの。すごいありがたい。

今後もお付き合いいただけたらなぁ・・・と。あの、決して私のスピード感が正しいから合わせろって思ってるわけじゃなくて、スピード感を作るための対話のセッティングをどうしたらいいのかって悩んでるの。

――(け)信頼ベースっていうのはいいなって思いました。確かに不安ベースだと全部ルールで縛ってしまうのも解らなくはないんだけど、私にとってはすごく厳しいものに感じなと思って。信頼ベースで生活も、仕事も、暮らしができるといいなと思いました。以上でございます。

(了)

この記事はメルマガ「おうちの人間カンケイについて」(月3回発行)の8月分を再編集したものです。私たちは日常的なダイアローグの他に、メルマガ用に毎月1回テーマを決めてダイアローグしています。9月のお題は「パートナーシップとは」。メルマガ登録はこちらです。

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