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「この街からジントニックやバーの魅力を伝えたい」 Antonic〔アントニック〕 ・ 武田留以 / 武田光太

OPEN MAGAZINE "Based in Nakameguro"では、中目黒エリアに拠点を構える店舗や人を特集し、街の魅力を繋いでいきます。

今回は、東京・中目黒にあるジントニック専門店 The World Gin&Tonic Antonic〔ザ ワールド ジンアンドトニック アントニック〕。思わず覗き込みたくなるオシャレな店内に、一際目立つジンボトルの数々。「ここはバー初心者でも楽しめるお店」そう口を揃えて語るのは、Antonic創業者・武田さんご夫婦です。

店内の明るい雰囲気に「バーらしくない」印象も受けますが、一体どのような店づくりをされているのでしょうか。営業前のお店にお邪魔し、開業に至った経緯や今後の展望についても伺ってきました。

※ インタビューは夫・武田光太さんにお応えいただきました。

信頼を築く場所

-- 早速ですが、ジントニック専門店はあまり見ない業態ですよね。どのような経緯で開業に至ったのでしょうか?

武田さん:結婚して直ぐ「今後の人生」について、夫婦二人で真剣に話し合ったことがありました。その時に「理想の人生ってこうだよね」というのを何度もすり合わせて、私たちなりに目指すべき方向性を定めたんです。最終的に「夫婦で一緒に働く」という道を選んだ方が、私たちの理想の人生に近づけると思って。

その時に決めたのは、夫婦で一緒に働くということだけで、どんなビジネスをやるかは全くでした。なので「ジントニックが好きだから専門店を開業した」という訳でもないんです。

「私たちならどんな困難でも解決できる」とお互いがそう思っていたので、どんな選択を取っても大丈夫だと思っていました。

-- なるほど。つまり「 夫婦で一緒に働くことを先に決めてから、ジントニック専門店を開くことにした 」ということですね。

武田さん:その通りです。私は前職で洋酒に関わる仕事をしていたので、お世話になった業界に「何らかの形で貢献したい」と思っていました。

ですが、いきなり新しいサービスをはじめても誰も反応してくれないだろうと思ったので、まず自分たちの場所を持って「信頼」を築いていこうと考えたんです。

-- 「信頼を築くための場所を持つ」これは今の時代でも通ずる重要な価値観だと思います。お酒の種類は数多くありますが、どうしてジンを選んだのでしょうか?

武田さん:ジンの特徴でもある「分かりやすさ」が、このお店には欠かせない要素だと思ったんです。例えば、ワインだとオレンジのような、ハーブのような、といった「〜のような」という言葉で味わいを表現するのですが、お客様からすると分かりづらい。

ですが、ジンだとオレンジやハーブを実際に漬け込んで作ったりするので、味わいもそのままで分かりやすく、直感的に楽しめるんです。

あとは、ジンってだいだい1本5000円前後で買うことができるんです。Antonic〔アントニック〕で取り扱っているジンも、ラグジュアリーホテルや銀座のバーでも取り扱う世界最高峰のものなんですよ。

「トップレベルの味をカジュアルに楽しめる」これがジンを選んだ理由です。

私たちは「バー初心者でも楽しめるお店」を目指していたので、ジンがぴったりだと思ったんです。

-- なるほど。ジンにそのような魅力があることは知りませんでした。ところで、お二人は大変仲が良い印象を受けますが、お仕事では時にぶつかることもあるのでしょうか?

武田さん:それがほとんどなくて。もちろん、議論することはあります。お互いにビジネスライクなところもあるので、タスクの奪い合いや「これお願いします」みたいな指示出しとか、一般の夫婦ではしないようなやり取りも多いかもしれません。

はじめにお話しした「理想の人生」が私たちの共通目標になっているので、そこに辿り着くまでの困難は「ただ解決すればいい」とお互いが認識できているからこそ、夫婦喧嘩のような争いが起きにくいのかもしれませんね。

不安要素を取り除く

-- アントニックではどのような「場づくり」を行っているのでしょうか?

武田さん:従来のバーには、店内が見えない、飲み方が分からない、価格が不透明 といった「3つ不安要素」があります。

私たちはそれらをクリアにするような場づくりを行っています。

窓の大きな路面店で外から店内が見え、カフェやアパレルショップを連想する内装にしたり、専門店ならではの「飲み方どうされますか?」を聞かない接客であったり、手元のスマートフォンで商品情報が確認できるInstagramのメニューアカウントを導入したり、価格も3プライス(900円、1100円、1300円)と明確に設定しているので、バー初心者でも安心して楽しんでいただける場所になっています。

もちろん、従来のバーの良さも取り入れています。例えば、ドリンク提供時にはジンの魅力や生産ストーリーを簡潔にお伝えしているので、その日に飲んだジンは人に紹介できるレベルになってお帰りいただけると思います。

バー初心者の方でも、Antonic〔アントニック〕に来て、大人の世界に来たようなバー特有の体験を味わってもらえたら嬉しいですね。

-- なるほど。まさに不安要素を取り除く場づくりですね。大変勉強になります。昨今、若者のアルコール離れが叫ばれていますが、この問題解決にも寄与できるような取り組みだと思いました。

中目黒というフィルター

-- では、開業の地として中目黒を選んだ理由について教えてください。

武田さん:「ジントニック専門店ができる」というニュースを全国に届けたいと思ったからです。なので「東京以外の都道府県からも認知度が高く、感度やイメージの良い場所」この2点が必須条件だと思いました。そう考えた時に、思い浮かんだのが中目黒です。

視察で足を運んでいるうちに、中目黒は「住んでる人、働いてる人、遊んでる人」のバランスが取れていることにも気がつきました。「この街なら長く付き合っていける」直感的にもそう思えたので、ここでチャレンジすることを決めました。

-- たしかに、この街には多様な人が集まっている印象です。それこそ、中目黒には住宅街や繁華街など、様々なエリアがありますが、ここは希望通りのエリアだったのでしょうか?

武田さん:物件を探していた時は、人通りが多い駅近や目黒川沿いで検討していました。ですが、ここは駅から徒歩10分、希望していた目黒川沿いでもないのですが、今となってはこのエリアを大変気に入っています。

立地的にもここを「目的地」として足を運んでくださる方がほとんどで「どの店でもいいから入れるお店にとにかく入る」みいたなお客様が全くいないんですよ。なので、うちのスタッフもストレスなく接客することができています。

それに、地元の人からは「駅や目黒川から離れていた方が通いやすいよ」と言ってくださることが多いので、私たちは大変運が良かったと思います。

--地元の人からそう言っていただけるのは大変嬉しいことですね。開業してから改めて中目黒はどのような街だと思いますか?

武田さん:中目黒ってお気に入りの服を着て歩きたくなる街なんですね。歩いている人を見ると、みんな自信に満ち溢れている気がして。そういう方々が集うからこそ、この街に活気が生まれているように思いますし、そういった街の雰囲気が多くの人を呼び寄せている気がします。街がフィルターのような役割を担っているのいかもしれませんね。

開業当初は「2店舗目を出すなら別の街で。」と思っていたのですが、今は中目黒という街に可能性を感じていますし、なによりこの街に愛着が湧いてしまって。

最近では、別業態(ボトルキープ専門店)のお店をAnotonic〔アントニック〕の隣にオープンさせました。私たちはこの2店舗を通じて、もっとこの街の魅力を知っていけたらと思っています。

好きな人と働く

-- 最後に、武田さんが「実現させたい」と思っていることについて教えてください。

武田さん:これは妻にも伝えていないことですが、私たちを通して「飲食業でも夫婦で力を合わせれば、家族経営を実現できる」ということを証明できたら嬉しいです。

飲食業をしていると、女性は結婚や出産のタイミングで不本意に現場から離れることになったり、男性は「飲食業=低収入」といった諦めモードになっていたり、そんな問題が頻繁に垣間見えるんです。

私はこういった問題を解決する事業を作るために、妻やスタッフと共に努力していきます。夫婦で一緒に働くことでお互いの関係性が良くなる人たちもいるはずですが、そういった機会や選択肢がまだ整っていないのも事実です。

「好きな人と一緒に働く」そんな人生はすごく楽しい。その姿を見せていけたらと思っています。


The World Gin&Tonic Antonic〔ザ ワールド ジンアンドトニック アントニック〕

Open = 17:00〜23:00 〔土日祝 14:00〜23:00 〕
Address = 東京都目黒区東山1-9-13(中目黒駅徒歩9分)

Instagram
ディレクター:武田 光太 さん
オーナー :武田 留以 さん
マネージャー:宮武 祥平 さん

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