「全国に放つ、みなかみ町の魅力」 株式会社plower〔プラウアー〕 ・茶屋 尚輝
OPEN MAGAZINE "Interview"では、「場づくり」に焦点をあてて、その領域を担う人物にインタビューを行うことで、未来へのヒントを探ります。
今回は、群馬県みなかみ町を拠点に、無人駅のグランピング施設・DOAI VILLAGE や一棟貸し切りもできる温泉宿・さなざわ㞢テラス、そして上毛高原駅構内にあるコーヒースタンド・イヌワシストアの運営を行う株式会社plower〔プラウアー〕。
地域資産を活用したローカルビジネスを手がける株式会社VILLAGE INCの子会社として設立された株式会社plower。社名には地域を耕し、VILLAGEに繋げていくという思いで、「耕す人」の意味を持つ言葉 “plower”を採用・命名されたそう。
みなかみ町は谷川岳や利根川、そして温泉もあって通年で楽しめる町です。
今回は、この地域を耕し、新たな人の流れをつくるべく種を蒔いている株式会社plowerの代表の茶屋さんにお話を伺いました。
場が育つ、その先に興味があった。
-- 元々は設計の道に進まれていたとお聞きしました。当時どのような思いで選択されたのでしょうか。
茶屋さん:僕は人が集まる場所が好きだったので、場を創る仕事がしたいと思っていました。それで設計が学べる専門学校に進学したんです。卒業後は建築に関して総合的に請け負う・総合建築企業で働いていました。
場といっても「人が集う場」に興味があったのですが、当時の仕事内容でいうと設計の図面をひたすら描く仕事で。やりたいこととやってることに乖離があったんですよ。その場が実際にどのように使われて、育っていくのか。僕は場のその先に興味があることに気がついたんです。
-- なるほど。その後についても詳しく聞かせてください。
茶屋さん:その気づきがあって、辺境や遊休地を活用した非日常体験を提供している株式会社VILLAGE INC. に転職しました。前職での経験も活かしつつ、プライベートキャンプ場をはじめ、総合商業施設や仮設物による空間づくりなど、全国各地で場にまつわる仕事をさせてもらいました。現在はみなかみエリアに特化した事業推進を行う株式会社plowerとして、この地域の活性化を目指し活動しています。
日常的に通いたくなる地域に。
-- では、みなかみ町の特徴について教えてください。
茶屋さん:実は、みなかみ町の玄関口でもある上毛高原駅は、新幹線が通っているので都内からのアクセスも良好なんです。なのでワーケーション目的に訪れる人も増えてきました。あとは自然の豊かさが一番の魅力だと思いますね。谷川岳・三国山といった四季の表情豊かな山の麓の町、また利根川の源流域で町内にはダムが4つあり「関東の水瓶」と称される。それくらい水と自然が豊かなんです。
-- 都内からだと片道1時間半以内で来れるので、日常的に通えると思いました。たくさん魅力がある一方で、今後の課題などはあるのでしょうか?
茶屋さん:それで言うと、この地域に魅力はたくさんあるのにそれをうまく伝えきれていないという課題があります。群馬を通り過ぎて、新潟まで行ってしまう観光客も多かったりします。
そもそも「群馬って何があるんだっけ」と言われることも多いので、もう少し魅力を分かりやすく伝えていけたらと思っています。僕たちでさえ、あり過ぎて結局どれを売りたいか迷走することもあるので笑。
そんな中でも、目指す方向性として、年に一度訪れる観光地というより、日常的に通いたくなる地域を目指したいと思っています。
大切なのは地域住民の視点。
-- 現在運営されているDOAIVILLAGE、さなざわ㞢テラス、イヌワシストアの3つの場について、それぞれの特徴を教えてください。
茶屋さん:DOAIVILLAGEは、土合駅・無人駅にあるグランピング施設です。「インスタントハウス」と呼ばれる部屋が6棟と、春夏秋限定のテントが2棟、中央広場から放射状に伸びるウットデッキの上に点在しています。
また、「土合(どあい)」という言葉は、川と川が合流する場所を示します。その名の通り、旅人や地元の人が行き交う楽しい場にできたらと思っています。
さなざわ㞢テラスは、みなかみ町の人里離れた山奥に佇む温泉宿です。企業研修やワーキングスペースとしても活用できます。カフェスペースには、旅人だけではなく、地元の温泉客も集い、日常から少し離れた贅沢な時間が楽しめます。
イヌワシストアは、コーヒースタンドが併設された食やイベントなど様々な体験ができる、みなかみ町の新スポット。店内には、地域内外の事業者が出店できるポップアップスペースや、みなかみの食が体験できる飲食・物販メニューの提供を行っています。
-- なるほど。各拠点は旅行者だけではなく、地域の方も楽しめる場所になっているんですね。
茶屋さん:やっぱり地域の方からも愛される必要があるので。それで言うと、DOAIVILLAGEが提供している野外宿泊サービスは、少し値が張るので地域の方の利用が少なくて。ですがその分、駅茶moguraというカフェを通して地域の方ともコミュニケーションを取れるようにしているんです。
さなざわ㞢テラスは観光客の皆さまにも、地元の方にも楽しんでもらいやすい場所になっています。都内から日帰りで温泉に入りに来てくださる方もいれば、カフェ利用でお茶しに来てくださる近隣の方もいらっしゃいます。
そしてイヌワシストアは、より地域の方と密に関われる場所で在りたいと考えています。みなかみ町の間口を広げ、全国とこの町を繋ぐ、橋渡し的な役割を果たせればと思っています。
-- イヌワシストアは今春(2024年)にオープンしたばかりですが、今後も楽しみですね。
茶屋さん:地元の方はもちろんですが、海外の方のご来店が予想以上に多くて。登山の後や、温泉宿に宿泊した後に立ち寄って下さっている印象です。
物販もお土産として購入される方が多いですね。特にコーヒー豆・イヌワシブレンドが好評です。
-- イヌワシストアではPOPUPも開催していくそうですね。現時点ではどんなPOPUPを考えられているのでしょうか。
茶屋さん:この場所では地域の”まちがいなくいいもの”を紹介していきたいと思っているので、地域を活動拠点にする事業者さんのプロダクトは積極的に取り入れていくつもりです。
とはいえ、みなかみ町や群馬県に固執せず全国各地の面白いものを扱ったPOPUPも開催していきたいと思っています。内だけではなく、外の刺激も得られる場の方が地元の方も楽しめると思うので。
これもビジネスなので考えるべきことはたくさんありますが、矢印は常に地域の方に向けて、共に場を育てていくといった意識を忘れずにいたいと思っています。
日本一面白いコーヒースタンドを。
--では最後に、今後の展望についても教えてください。
茶屋さん:今パッと思いついたことですが、イヌワシストアを日本一面白い”鉄道駅構内のコーヒースタンド”にできたらと思います。みなかみ町だけではなく、全国・他の地域にもアンテナをはって、この場所で面白い取り組みを起こしていきたいです。他の地域を知ることによって、この地域の魅力を再発見できたりもしますよね。
それに、内を変えるには外の刺激も必要だったりします。私自身もみなかみ町の魅力を広く、そして深く感じて、その魅力をより遠くまで放てるように活動していきたいです。
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