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「この場所から次世代に繋ぐ」Vase〔ベイス〕 ・ 平井 名王企

OPEN MAGAZINE "Based in Nakameguro"では、中目黒エリアに拠点を構える店舗や人を特集し、街の魅力を繋いでいきます。

今回は目黒川沿いに佇む、築70年の古民家を改装したセレクトショップ・Vase〔ベイス〕。ヨーロッパや国内から仕入れているという、クラッシック&アバンギャルドをテーマにセレクトされた洋服の数々。美術館のような厳かで落ち着いた雰囲気が店内に流れています。

2007年に開業してから中目黒のセレクトショップ業界を牽引してきた Vase ですが、これまでにどのような変遷を経て今に至ったのか。

Vase 代表の平井さんに、開業に至った経緯や自身の展望についてもお話し伺いました。

個人店が地域に活気を生む

-- ファッション一筋のキャリアを歩まれてきたとのことですが、Vase 開業に至った経緯について教えてください。

平井さん:上京して都内には個人店のセレクトショップがほぼ皆無で、「無いのであれば自分がやってみよう」と思い、2007年に築70年の古民家を改装してセレクトショップ・Vase をオープンさせました。

もともと同じ敷地内の隣にあるgallery・BLANC〔ブラン〕の場所で開業したのですが、2021年にこの2階建て古民家が空き家になったので、そのタイミングで拡張移転し、現在に至ります。

-- では、個人店の魅力はどんなところにあると思いますか。

平井さん:オーナーが本当に良いと思うものを販売しているところでしょうか。

私の場合は、売れるモノとか流行っているモノは二の次でして…。自分が興奮するモノ、身に付けたいモノ、身の回りに置いて置きたいモノを仕入れ、それをお客様に紹介しています。その熱い想いがお客様に伝わりご購入いただき、嬉しいことに常連となっていただけるファンの方々が生まれるのだと思います。

また、私の仕入れのテーマは『無いモノ探し』です。他のお店では手に入らないモノ、見たこと無いモノ、常にオンリーワンなモノを探しています。そんな一期一会を探しにいらしてほしいです。

-- コアなファンを獲得するためには、店主のこだわりといったある種の尖りを見せていく必要があるのかもしれませんね。移転後の跡地にgallery・BLANC をオープンされていますが、こちらはどのような施設になっているのでしょうか。

平井さん:撮影やPOP UPなど、多様な用途で使えるレンタルスタジオになっています。今後はBLANCで、Vase の企画展の開催も予定しています。

BLANC は何か試したり、挑戦する場所として活用してもらえたら嬉しいです。何かにチャレンジしたいと思っている方は、是非BLANC で気軽に試していただきたいです。 

場所と場所の相乗効果

-- BLANC はトライやチャレンジができる「場」を提供しているんですね。まさに場づくりの一環だと思いました。

平井さん:Vase に来てくださる方は、洋服好きな方がほとんどです。なので、BLANC を運営しはじめてから、他業界で活躍されている方との接点が多くできました。Vase とBLANCという異なる場所を持ったことで得られるメリットは意外にも多く、相乗効果が生まれているように思います。

-- 相乗効果のお話は大変興味深いですね。では、古民家の物件を改装する時にこだわった点があれば教えてください。

平井さん:こだわった点は、釘を一切使用していない窓枠や今では作ることのできない磨りガラスなどのモノや空間にリスペクトしつつ改装しています。

中を全て壊して白く塗るだけの空間はどこにでもありますが、過去のデザイン、昔の職人の方々の技術の高さに敬意を評して足し算引き算をすることが大事だと思っています。

-- 「古さと新しさの共存」は、まさにこの場所を表している言葉だと思います。次に、中目黒という地域についてお話を伺っていきます。

次世代に残す取り組み

-- この築70年の物件に出会ったきっかけについて教えてください。

平井さん:それが運命的な出会いだったんです。開業前から中目黒にはよく遊びに来ていたので、この古民家があることは知っていました。当時から「こんな物件でセレクトショップをやりたいな」と漠然と思ったりもしていて。

そして、開業に向けて物件探しをはじめた時に、友人から不動産会社を紹介してもらったんです。偶然にも、その不動産会社の方が紹介してくれた物件がこの物件だったんですよ。もうこれは運命だと思って、二つ返事でこの物件を借りることにしました。

-- 平井さんにとってはかなり思入れ深い物件になりますね。開業当初の中目黒と今の中目黒を比べると大きな変化があると思いますが、今の中目黒という地域にどのような印象を抱いていますか?

平井さん:良くも悪くも成熟した街という印象がありますね。開業当初はうち以外にも目黒川沿いには古民家が何軒かありましたが、ほとんどが取り壊されてしまいました。

かつて呼ばれていた「古き良き中目黒」という言葉は、あまり聞かなくなりましたね。この古民家自体を守っていくためにも、お店を続けていくことに大きな意味があると思っています。

-- 古民家を守るということは、地域の宝を守ることに等しいと思います。平井さんの想いが多くの人に届いて欲しいです。

平井さん:最近は大手企業の参入で街が均質化している印象です。そうすると都市としてのクオリティーは上がっても、地域としてのクオリティーは下がっているように思います。これからはより一層、中目黒にある個人店を次世代に残していく取り組みが必要になってくると思いますね。

-- 大手企業の参入による街の均質化については全く否めませんね。次世代への引き継ぎに関しても、常々考えていかないといけないと思います。

地域とファッションで仕掛けたい

--さらに中目黒という地域が盛り上がっていくためには、どうすればいいと思いますか?

平井さん:そうですね。この地域を愛する人がもっと増えれば、自然と盛り上がっていくように思います。

個人的には、表参道・青山・原宿エリアで毎年開催されているFASHION'S NIGHT OUT(ファッションズ・ナイト・アウト)のようなショッピングイベントを中目黒で開催したいと思っています。この地域にあるアパレル関係のショップさんと協力して実現させたいですね。

この地域とファッションを愛する人たちが協力し合えば、必ず面白いことができると思っています。


Vase〔ベイス〕

中目黒の川沿いに佇む築70年の古民家を改装したセレクトショップ。

Open = 12:00~20:00
Adress = 東京都目黒区上目黒1丁目7−7

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