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岩手県の民俗学(胆沢の民話)

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岩手県の胆沢という地域に伝わる民話や伝説を紹介しています。 民俗学的に価値のあるものだと思うので、目にとまった人の記憶に、少しでも残って伝わっていけばいいなと思います。
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2020年3月の記事一覧

蛇の婿【胆沢の民話㉛】岩手/民俗

昔、あるところに、母と娘が住んでおりました。

娘が年頃になったので、それはそれは綺麗になって、母でさえ、うっとりと眺めるほどでありました。

この上は立派な婿を迎えて、娘に劣らないほど美しい孫を産んでくれたらと、楽しい想像をする母になっておりました。

それは生暖かい春の夜でありました。

楽しい夕食後の語らいが終わると、母と娘は各々の寝室に引き取りました。

それから何刻か、母は隣の娘の部屋か

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鯰の恩返し【胆沢の民話㉚】岩手/民俗

鯰の恩返し【胆沢の民話㉚】岩手/民俗

『鯰(なまず)の恩返し』

参考文献:「いさわの民話と伝説」 胆沢町教育委員会

昔々その昔、ずっと昔の大昔、トドロイ沼のほとりに若い者があったど。沼さ降りる鴨を網で取って暮らしてだど。

面は見ぐさい、背っこは童のくらいしかないので、いっぱた(一人前)の年になっても、誰も嫁ごになる人なかったど。

朝ま早く鴨が岸の方さ来たどぎ、そばまで行っても体っこちゃっけがら(小さいから)、鴨は逃げないでるど

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