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『図形』が出来ないと国立大学には通用しない 【中学入試最前線】

算数を教えていると「図形のできない子供」には、二種類のパターンがあることがわかります。

一つ目は、元々、図形に限らず、数的思考の全てに問題がある場合です。
このタイプは、範囲を広げずに、ひたすら「割合」や「速さ」の基礎計算と簡単な「平面図形」だけを学習するようにします。
これは、中学1年で学習する「方程式」や「πパイの計算」にスムースに入れるようにしてあげるための準備となるからです。
この場合には、円周率の計算を常に分配法則でまとめあげる練習をします。
このタイプの生徒は、数の感覚が極めて弱く、二桁の引き算ですら、いちいち筆算を使って答えを出そうとします。その挙げ句、答えを間違える場合がほとんどです。
インドでは、「19×19」まで暗算で記憶させているという話をよく聞きますが、おそらく、こういう生徒は、この種の教育が必要だったのでしょう。
当然のことながら、かけ算の九九もあやしいので、「公倍数」や「公約数」の問題は全く通用しません。
「通分」も間違えてばかりいます。
これは単なる計算ミスだからそうなるのではなく、重大な「数のセンスの欠如」が原因である場合と言えるでしょう。

もう一つは、多かれ少なかれ算数に自信を持っている理系タイプの生徒です。
お医者さんの子弟によく見られるケースです。
彼らは、図形の問題を解く時、「角度」と「辺の長さ」という二つの要素ファクターを同時に考えることができません。
加えて「直角(90度)」をことごとく無視します。
ひたすら、数字だけを追いかけて、根拠のない計算に走り、「プロセスの正当性」や「適切性」を全く考えようとしません。
このタイプの子は、なまじ計算が得意であることから、自分のやりたい計算だけをしたがり、強引に結果の辻褄合わせをしようとします。
要するに、最初から最後まで「数あそび」をしているのです。
「数と遊んでいるのが楽しくて仕方が無い」タイプと言えるでしょう。

こういう子供は、ほとんど国語ができません。
このタイプは、やっていることに抑制が効かないので、「試験で『規則性』や『数列』などの問題をやるな」と言っても、はてしなく書き出していたりします。
当然、後半の問題は、ほとんど手つかずのまま終わってしまい、偏差値が50を超えることはありません。

「図形の能力」と「言語能力」は密接に関連しています。
『文字記号』であれ、『数字記号』であれ、考え方は同じです。
それは、いわゆる「右脳思考」と言われているもので、全体をつかみ、そこから部分へと整合性をもって、細部にわたって充実させていくという考え方です。
直線的に、小さな因果の連鎖を果てしなく続けていく「単一思考」とは全く違った考え方と言えるでしょう。
「今やっている作業」と「全体の終極」の妥当性を両眼で見ながら、同時並行で考える「パラレル思考」が要求されます。
これは、国語問題の「論説文の読解」と同じ思考方法です。
このため、「図形能力」と「言語能力(国語力)」は密接に関係してくるのです。
自分の指導経験では、このような「パラレル思考」が出来ない生徒は、6年後、国立大学の医学部を受験しても、合格することができません。
ご父兄から、よく年賀状をいただくのですが、私の知る限り、良くて「二浪して私大の医学部に進学するのがやっと・・・」というケースがほとんどです。
もっとも、我々のようなところにくる生徒は、何かしら問題がある生徒ばかりです。
元々優秀な生徒は、我々の助けなど借りなくとも自力で国立大学に合格してしまうからです。

国立大学、特に医学部を受けたいと思っているのであれば、「パラレル思考」が出来ているか、自問自答してみるとよいでしょう。
小学生が口にする「算数が得意だ」という発言は、全く当てになりません。全ては「国語力の有無」が、その後の勝敗を決してしまうことを肝に銘じるべきでしょう。

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