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廃校になった瀬戸内の小学校での、10代最後の美しい想い出に再開できた、小さな旅の話

随分前に廃校になっていました・・


30年以上前のある夏の1週間 。。。

私は瀬戸内の海を見下ろす山の上にある夕日が綺麗な小学校に、

児童福祉ボランティアとしてキャンプをはっていました。

全校生徒50人くらいの小さな小学校でした。


そこは愛媛県の喜多灘小学校。

西に瀬戸内海の島々を見下ろす、小高い山の上にありました。

体育館から見えた瀬戸内の島々の海に沈む日没は、

恐ろしいほどに美しかった。


子供達は、海に面した麓の小さな集落から山を登って通学していました。

中には何キロもある遠い集落から通っている子供もいましたが、

それでも全校生徒は50人に満たない過疎地だったのです。


大学生だった僕たちは、

そんな小学校で、子供たちと一緒に学校を舞台にした遊びを計画します。

キャンプファイヤー、工芸教室、スポーツ大会、おばけ大会、花火大会、人形劇、工作大会・・

僕たちがいる1週間のあいだ、

子供たちの学校を子供たちと一緒にテーマパーク化するのです。


毎日毎日、子供達と一緒に準備をしました。

お化け屋敷の仕掛けを作ったり、人形劇の練習をしたり・・・

そして1日の帰りは子供達と手をつなぎ合って、

歌を歌いながら夕焼けの山道を降りていきました。


いよいよきた本番では、校長先生の前で爆竹を鳴らして大失敗。

でも、野球大会でホームランを打った時は子供たちにモテたなあ〜。

にもかかわらず、

僕は学校にたくさんいたアブを怖がったものだから、

男の子はアブを捕まえて逃げる僕を追いかけてくるのです。

子供たちに笑われたものでした。


そんな僕を、子供たちは“アブくん”と呼ぶようになりました。

そう、ぼくのココでの名前は、あの時の子供達がつけてくれたあだ名なのです。


1週間を共にして、帰り際にはすっかり仲良くなりました。

そして最後は涙のお別れ・・。

いえ、本当に泣いてしまうんです。

19歳の生意気な大学生だった僕も、こっそり泣きました。


あの時、子供たちと一緒になんども歌った校歌は、

今でも口ずさむことができます。大好きな校歌でした。

きっと、子供達の心に何かを残せたんじゃないかな?

なんて当時は自己満足していました。

でも、

実はプレゼントをもらったのは、僕自身だったのです。


19歳。いつかまたココに会いに来たいと思った10代最後の夏でした。


しかし何もないまま、何十年も時がながれました。

遠く離れた東京で外科の修行をしている間に、

その小学校はひっそりと廃校になっていました。


グーグルマップでもしらべました。

しかし、

そこと思える山の上に学校を見つけることはできませんでした。

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なんでこんな事を書いたかと言うと、

昨年、私は昔の友人に会う会があって四国にいったのです。

同行した妻が、いろいろ調べて観光電車を予約していました。

それが予讃線の「伊予灘ものがたり」でした。


愛媛県の海沿いを走りながら、食事を楽しめる人気の観光列車。

沿線の下灘駅が、海に沈む夕日の美しい駅で全国的に有名になっていました。

下灘駅 (2)

             (写真は”伊予市観光ナビHP”より)

”下灘?”そういえば喜多灘に似ている名前だな”

調べてみると、

喜多灘小学校のあったところは、その近くだったのです。


そんなこと、岩手は三陸育ちの妻は知る由もありません。

これは偶然でした。


恐ろしいくらいゆっくりと走る列車が喜多灘を通過する時、

多くの旅客が海を見ている列車内で、

私は山側の窓を食い入る様に見ていました。


その時、見つけたのです。

海沿いの小さな集落と、かつて子供達と手を繋いで小学校から降りた道を・・・

思わず胸が熱くなりました。


勝手な思い出話しに付き合わせてしまってゴメンナサイ


前後しましたが「伊予灘ものがたり」は素敵でした

何が素敵って、シーサイドを走るローケーションと、車内の雰囲気、客室の作りやサービスはもちろんですが、

沿線の方々がすごくたくさん笑顔で手を振ってくれる。

子供達も、おじいさんも、おばさんも、ママも、

テニスを練習している少年たちまでがグランドから手を振ってくれるんです。

列車は恐ろしいほどゆっくり走りますので、

並走して手を振りながら走っている子供もいます。

こんなコト、
私の居住地では100%あり得ない。

地域の人の無償のおもてなしがとても素敵な2時間でした。


そこに、あの頃の子供たちの笑顔を重ねながら

この旅行を企画してくれた妻と、

僕の心を忘れていた過去に引き戻してくれた旅の神様に感謝したのです。


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