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ダンボールでビルケンを作ってみる - 現代民藝品試作編


民藝にはまっている

民藝品にはまっている。木製の家具や小物から、い草や蔦で編まれたかご・ザル、古布の服などなど見ているだけで楽しい。旅行に行ったらその土地の古道具屋や古着屋に行ってしまうほど。量産品にはない変なディティール、年月が経って汚れたり日焼けしたり、使用して傷がついたり削れたり、それをリペアしたあととかあったらもうたまらない。今pinterestで試しに民藝と調べたらずっと見ちゃってた。

で、そういうのが好きなのでyoutubeで見つけたラタンチェアの動画を参考に椅子を作ったりしている。

見様見真似で実践してみていたが気になって、民藝ってそもそもなんなんだ、定義はなんだろうと思って調べてみた。日本民藝協会のサイトにはこう書いてある。

民藝運動は、1926(大正15)年に柳宗悦・河井寛次郎・浜田庄司らによって提唱された生活文化運動です。当時の工芸界は華美な装飾を施した観賞用の作品が主流でした。そんな中、柳たちは、名も無き職人の手から生み出された日常の生活道具を「民藝(民衆的工芸)」と名付け、美術品に負けない美しさがあると唱え、美は生活の中にあると語りました。そして、各地の風土から生まれ、生活に根ざした民藝には、用に則した「健全な美」が宿っていると、新しい「美の見方」や「美の価値観」を提示したのです。工業化が進み、大量生産の製品が少しずつ生活に浸透してきた時代の流れも関係しています。失われて行く日本各地の「手仕事」の文化を案じ、近代化=西洋化といった安易な流れに警鐘を鳴らしました。物質的な豊かさだけでなく、より良い生活とは何かを民藝運動を通して追求したのです。

日本民藝協会

生活に根ざしたというところがポイントらしい。現代の都市生活環境では、民藝品でよく使われている木材や蔦などの自然由来の素材はまあ手にはいらない。もちろんアマゾンで買ったりホームセンターに行けば手に入るのだが、それは上記の定義で言う生活に根ざしたものと言えるのかなと疑問に思った。民藝運動が起こっていた当時の環境は今よりもっと自然由来の素材が身の回りの生活の中にあって手に入りやすかったから、そういう素材で作られているものが多く残っているだけであって、自然由来の素材で作られているから民藝品というわけではないのでは?と思った。

ダンボールモールディング

日々のYoutube巡回をしていたところ、この動画に出会った。この動画ではダンボールを粉砕して、水に溶かして、のりと混ぜて、3Dプリンタ製の型に入れて圧縮してものを作っている。

リモートワーク中心の生活をしていると、アマゾンでものを買うことが多く、月に数回の資源回収日前には、家の中にダンボールや紙製の梱包材がたくさんある。現代の民藝ってダンボールじゃん!と思った。これこそ都市生活環境での生活に根ざした(自然)素材なのでは!と民藝とダンボールが結びついたとき、ちょっと感動した。
で、何を作ったら楽しいかな〜と考えて、3Dプリンタで型を作るのであればオーダーメイド的な何かにピッタリ合うものを作りたくなる。自分の普段履いているビルケンシュトックのサンダルのソールを見て、これを自分の足ぴったりに作ろうと決めた。調べてみるとビルケンのソールは粉砕したコルクとラテックスというゴム性の素材でできているらしい。

試作してみる

ラテックスを買ってきて作る前にそもそもこれが実現可能かわからないので、とりあえずダンボールと木工用ボンドで試してみることにした。

自分の足のスキャン~型づくり

自分の足ぴったりに作りたかったので、自分の足を3Dスキャンして型を作る。手元のiPadでアプリを色々試して、Luma AIにすることにした。

自分の足をスキャンするために足の周りをぐるっと一周撮影する必要があり、一人で撮影するのはちょっと大変だったがなんとか撮影できた。

Luma AIでキャプチャした右足

これをもとに3Dプリンタで型を作る。スライサーソフトにのせてみたら自分の足がでかすぎてそのままだと印刷できないので、ほぞを作って2つに分割するようにした。

モデリングした型のパーツ

並べるとこんな感じ。大きく3つのパーツで構成されていて、型の上下から平らなパーツを足型の外周パーツに挟みつける感じ。上下から圧縮するパーツもほぞをつけて2つに分割せざるを得なかったので家に余ってた木の板に3Dプリンタパーツを貼り付けて利用することにした。(結局木を使っとるやんというツッコミはなしでオナシャス)

型パーツ一覧

ダンボールを粉砕~型に流し込む

ダンボール溶液を作るためにフードプロセッサを2000円でハードオフで買ってきた。このフードプロセッサもまさかダンボールを粉砕することになるとは思ってなかっただろうな。ごめんよ。

フードプロセッサ「何のために生まれて、何をして生きるのか」

上記の写真の感じでフードプロセッサにかけてドロドロのダンボール溶液を作るのだが、ダンボールを細かくしないと入らない。Youtubeの動画ではシュレッダーを使っていたが手元に無いため、水につけて柔らかくしてて手でちぎることにした。

ダンボールを水につける

しばらくつけていると柔らかくなり、ちぎれるようになった。ダンボールについている配送情報のシールやガムテープなどはこのタイミングで剥がすと剥がしやすかった。
ちぎってフードプロセッサにかける。フードプロセッサの刃にダンボールが絡まってちょいちょい止まったが何回か繰り返して大量のダンボール溶液を作った。

左が水に浸してちぎったダンボール。右がフードプロセッサにかけたあと。

出来上がったダンボール溶液に木工用ボンドを混ぜて、型に詰める。この時型いっぱいまで詰めるのが最終的な強度に効いてくるっぽい。

型に詰めたダンボール溶液

蓋パーツを付けて圧縮する。洗濯ばさみ式のクランプしか持っておらず、それだと強く圧縮できないので、家にあった木材の端材をビスで引き付けてクランプした。

自作クランプ

完成!

夏場の晴れの日に二日間ほど、型に入れたまま外に放置し、型から出してもう二日ほど外で乾燥させたのがこれ。インソールっぽい感じになった。3Dプリンタの積層痕がいい感じにソールについていてカワ。

ダンボールで作ったビルケンシュトックのソール。名付けてボルケンシュトック。

懸念点

とりあえず作ってみて懸念点はこんな感じ。

  • ちゃんとラテックスなり柔らかい素材を混ぜないとソールとしては機能しない。ボンドだけを混ぜて作るとカチカチで歩けない。歩いたら割れてしまいそう。

  • 結構重い。厚底めで作ったのもあると思うので、次作るときはもうちょっと薄めに作る。

  • 圧縮をちゃんとしないと割れてしまいそう。今回は自作クランプで挟み付けたが、締まっている部分は型の両端なので、ソールの中央部分は強度が低そう。ちゃんとクランプを買ってきて一様な圧力がかかるようにしたい。

  • 足をスキャンするときに一人で撮影するために地に足をつけた状態で撮影してしまったので、ソールの表面を足の裏の形に凹ませることができなかった。次やるときは誰かに足の裏を撮ってもらいたい。

ダンボールモールディングのいいところは、作ってみて失敗してもそれをまた水に溶かしてしまえばもう一度使えるところ。罪悪感なく失敗できるのがいい。
次は、上記の懸念点を改善してちゃんと履けるソールを作りたい。


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