日本共産党大会におけるパワハラについて
田村氏による「パワハラ結語」
2024年1月に行われた、日本共産党(以下共産党と表記)の第29回党大会の「結語」で、田村智子副委員長(当時)がパワハラ発言を行った事が話題になっています。
その発言について、ちょっと長いですが引用します(結語全文)。
直球ど真ん中のパワハラです。しかし、2022年11月には、小池書記局長による田村副委員長(当時)へのパワハラを認めた共産党ですが、今回はパワハラであることを否定する発言をしました。(全文)
「違う」のは「パワハラという指摘」ではありません。この談話を発した小池氏並びに共産党中央の認識です。
小池氏並びに共産党がいかに間違っているかを以下で解説します。
最初に引用した「結語」には、発言者(大山神奈川県議)について、以下のような言葉を用いて「批判」しています。
「誠実さを欠く」「節度を欠く」「百八十度間違えている」「政治的本質を理解していない」のいずれも、「発言者の人格を傷つけるもの」です。
いずれも、発言内容でなく、発言した大山氏の人格を否定するものです。
なお、田村氏は、2月2日に参議院で代表質問を行いました(全文)。自民党の裏金問題などを「組織的犯罪」などと厳しい言葉で批判していますが、このような人格否定の言葉は一言も使っていません。
もし、批判をするのにあのような言葉が必要だと考えているのなら、裏金問題を有耶無耶にしようとしている岸田首相に対しても「政治家としての主体性・誠実さを欠く」「政治的本質を全く理解していない」と発言するべきでしょう。
これを見ても、あの結語は「批判」ではなく、上位の立場を利用し、相手が反論できない状況を作ったうえで、全参加者に向けて大山氏の人格否定とも言える暴言を行ったパワハラである事は明白です。
そもそも小池氏らにパワハラを論ずる能力があるのか
というわけで、小池書記局長の「パワハラ否定」談話が完全に間違っていることを論証しました。
しかし、このような間違った発言が出るのはある意味当然です。
小池氏といえば、2022年11月に行われた全国地方議員・候補者会議で、田村副委員長(当時)に対してパワハラを行いました。
しかし、当初はそれを認めず、大きな批判を受け、一週間以上経ってやっと謝罪をしました。
さらに、パワハラ被害者である田村氏も、それを映像で見ていた志位委員長(当時)も、「パワハラだと認識しなかった」と言いました。
共産党のトップが、いかにパワハラに無知であることが明るみになったわけです。
この件で、小池氏は「警告」という党内で最も軽い「処分」を受けました。
しかし「処分」と関係なく、「党の顔」として赤旗をはじめとするメディアに出続けていました。
さらに、その後、小池氏並びに、志位氏・田村氏がハラスメントに関する研修を受けた、などという発表もありませんでした。
同様に、小池氏が他にも党内でハラスメント行為をやっているか、などという調査が行われたという話も聞いていません。
つまり、小池氏も共産党も、2022年11月に起きたパワハラに対し、形だけの「警告処分」を行っただけで、何の改善策も意識改革も実施していないのです。
ですから、小池氏のハラスメント・パワハラに関する見識は2022年11月にパワハラを行ったときの誤った認識から何一つアップデートされていません。
もちろん、これは、田村氏・志位氏をはじめ、あの時に行われたパワハラを受けたり見たりしたにも関わらず、ハラスメントだと認識する能力がなかった他の幹部も同様です。
だからこそ、あのような「パワハラ結語」を中央委員会の総意として発表したのです。
そして、小池氏においては、あのときに公然とパワハラをしたのと同じ思考回路で、「パワハラという指摘は違います」などと大間違いの談話を述べてしまったのです。
過去は一切反省せず、パワハラに関する常識レベルの知識も持っていない事を自ら世間に公表したのがあの「小池談話」の本質です。
あの「結語」はパワハラの基本中の基本
共産党中央幹部は、パワハラの基本的知識すら持たないのに、「パワハラという指摘は違います」と言いました。
それに対するここまでの筆者の批判に対し、「あなたも一年前までは共産党員で専従もやっていた。ならばパワハラに関しては党幹部とさほど変わらない程度の知識しかないのでは?」と疑問を持つ方もいるかもしれません。
そういう方のために、共産党とは無関係の客観的な情報を紹介します。
ハラスメント問題に詳しい社労士事務所のサイトの記事(メンタルサポートろうむ「パワハラ6類型の『精神的な攻撃』とはなにか」)の一番最初に書かれている部分です。
以降にも大切な事が書かれているので、ぜひ全文を読んでいただければと思います。
改めてあの結語の「人格攻撃」部分を読み返せば、「おまえはダメなやつだ」と言い換えることができるような内容、言われた側が屈辱を感じるような内容であることは明らかです。
「叱責でなく批判」といったレベルではないのです。専門家が書くパワハラ定義の一番最初に出るようなことを、あの「パワハラ結語」は行っていたのです。
なぜ「ハラスメント撲滅の党」がハラスメント行為を堂々とするのか
社会でセクハラ・パワハラなどのハラスメントが問題になってから、共産党は「ハラスメント撲滅の党」と自称するようになりました。
それに応じて、赤旗には、ハラスメントを受けた全労連組合員の話などを掲載して批判しています。
また、ハラスメント被害者の裁判を共産党有志が支援して、実質勝訴を勝ち取った、という事例もありました。
また、選挙政策などでも、「ハラスメント根絶」を繰り返し書いています。
国会でも追及していました。一例として、2022年1月に参議院で行われた代表質問を紹介します。
筆者は共産党を離党しましたが、この質問の文言については今でも大賛成です。
ただ、この質問から11ヶ月後の言動により、この質問を行った小池氏自身はハラスメントに対して基本的なことも知らないうえに、自らがハラスメント行為を起こすような人物である事が明らかになりました。
ついでに言うと、「法律にもハラスメント禁止を明記するべき」と言っていますが、党内ハラスメントが問題になったにも関わらず、共産党の規約にハラスメント禁止を明記するような改善は行われていません。
そして、党大会で「被害者の心身に重大な打撃を与える人権侵害」を中央委員会の総意で行ったうえ、「批判であってパワハラでない」などと居直っているのです。
自分たちができないことを政府に求め、しかも、ハラスメントが何であるかっも理解せずに「ハラスメント批判」をしていたわけです。
これが「ハラスメント根絶の党」の正体なのです。他の政策にも言えることですが、共産党の「主張」には、「政府に求める前に、まず自分たちが改めるべき」というものが多々あります。(参考・ジェンダー不平等な政党が「ジェンダー平等の党」を僭称した結末)
「ハラスメント根絶」も、その象徴と言えるでしょう。
「ハラスメント」や「ジェンダー」など、「革新支持層」に受けそうな概念が出てくれば、意味も理解せずにそれに飛びついて共産党の政策にします。
一方で、党内にはびこっているハラスメントやジェンダー差別を改める気など毛頭ありません。
改めるどころか、何がハラスメントで何がジェンダー差別なのか、理解する事すらしないのです。
この事からもわかるように、共産党中央には「政策」を具体的に実現させる意志などありません。
日本共産党式「ハラスメントの解決」とは
では実際に、共産党はどのような形で「ハラスメント解決」を行うのでしょうか。筆者が経験した事例を紹介します。
以前にも書きましたが、筆者は専従時代、勤務先でハラスメント行為を行っていた輩を中央に訴え、異動と出入り禁止を勝ち取りました。
この時点では、筆者も共産党のことを「本気でハラスメントをなくすことを目指している」と誤解していました。
そのため、次は、このハラスメント加害者に厳正な処分が下ると信じていました。
しかし、そのような事はありませんでした。加害者は異動先で党専従を続け、相変わらず何かにつけ、被害者に接触することを諦めていませんでした。
その度に、県委員長や地区委員長などに訴えましたが、常に「この問題は現在も調査中」と逃げられました。
「調査中」の間に、この加害者は、異動先で、がん闘病中の専従職員に対してハラスメント行為を行いました。被害者の訴えは通りましたが、処分はなく、別の委員会に異動して専従を続けました。
そして、被害を訴えた人の病が悪化して他界した数カ月後に、前の職場に戻りました。「被害者が死ねばハラスメント問題は解決し、加害者は復権する」。それが共産党の考え方だったのです。
何でそこまでハラサーをかばうのか、と呆れると同時に、「ハラスメント根絶の党」という自称が嘘なのでは、と思うようになりました。
それが確信となったのは、2022年11月の事です。
前月末に専従を退職した筆者のところに、県幹部から連絡がありました。それは、「5年前に筆者が訴えたハラスメント問題を、中央は『解決』した形で処理することになった。その説明をしに中央の担当者が来るから会ってほしい」というものでした。
何で今更、と不思議に思いましたが、理由はすぐに気づきました。それは筆者が専従から退職したためです。
それをこちらの「泣き寝入り」だと認識して、「解決」ということにしたのでしょう。
そこで、県幹部には「会ってもいいですが、そうなると、自分はその中央幹部に厳しいことを言って、相手に惨めな思いをさせるでしょう。そんなことをしても、向こうも辛いでしょうから、お断りします」と回答しました。
ちなみに、2022年11月と言えば、小池パワハラ事件が起きた月です。そのときに、このような形で「ハラスメント問題が解決した」などと臆面もなく言うわけです。
常に加害者をかばい、訴えがあったら「調査中」と逃げ、被害者が諦める(もしくは世を去る)のを待つ、というのが共産党の「ハラスメント対処法」なのです。
その後、2023年6月に行われた第28大会第8回中央委員会総会で、「党内ハラスメント根絶」が決議されました。
富田林のパワハラ問題が明るみになった後の話です。一見すると、この問題に前向きに取り組む姿勢を見せたかに見えましたが、事実は違いました。
ここでの「根絶」は「ハラスメントをなくす」でなく「ハラスメントを隠してなかったことにする」だったのです。
それを象徴しているのが、富田林パワハラ問題を批判した現職共産党市議が再選された際の発信に対する党中央の対応です。
当選を知ったある共産党町議が「党幹部にハラスメントを指摘する発信をした議員が、無事再選されました!」 と発信したところ、共産党中央の配信動画の司会をしている幹部がわざわざ「再選された議員についての紹介に『党幹部に…』は必要でしょうか。議員が再選されたこととその発信に関係がないのであれば不必要だと思いますし、再選された議員にも支持者にも、失礼だと考えます。」と返信しました。
要は、富田林パワハラ問題について発信するな、というわけです。
(2024年2月15日追記・共産党町議ご本人から、富田林「のパワハラの件ではなく、小池さんが田村さんにパワハラした件でした。2人で会見した後のツーショットを小池さんがTwitterに上げたことへの違和感を投げかけておられました。もちろんその議員は」富田林「の件でもを尽力されています」という指摘を受けました)。
これが中央委員会総会で決定した「ハラスメント根絶」の正体です。「根絶」とは、被害者を救済し、加害をなくすことではありません。事実を隠蔽し、加害者をかばって被害者や支援者を黙らせることなのです。
なぜここまでハラスメントに寛容なのか
共産党でハラスメントが明るみになった事例は他にも複数あります。前述した富田林の事例を含め、それを箇条書きにしてみました。
・2018年9月…岐阜市議のHさんが、党内ハラスメントを受けた事により離党。加害者への処分はなし。
・2018年以降…草加市議候補が、党内でパワハラを行う。市議当選後は市職員にもパワハラを行っていた(前回選挙で落選) 加害者への処分はなし。抗議して離党届を出した市議3人は除籍。
・杉並区議のKさんが本人並びに家族が党員に受けたハラスメントを理由に議員引退。加害者は処分なし。
・富田林市議のTさんが同僚議員からパワハラ・モラハラを受ける。Tさんは大阪府委員会・中央委員会に訴えたが冷たい対応を受ける。ネットで公表した結果、加害者は最も軽い「警告」処分を受けたうえで離党して市議選に立候補。それを共産党市委員会は中央委員の承認を受け全面支援。一方で、Tさんは議員引退を余儀なくされる。支援した中央委員・市委員に処分はなし。
・福岡県常任委員のKさんが県委員会総会で、松竹氏除名に反対意見を発言し、それをブログに書いたら、党員権利停止処分を受けた。その後もハラスメントが続き、Kさんはメンタルを病んだ。加害者のトップである県委員長は党大会で登壇し「こんな連中に負けない」と発言。
表にでただけでもこれだけあります。
当然、筆者が経験した地区委員会勤務員によるパワハラのように表にでなかったものも多数あると考えるのが自然です。
いずれに共通することは、被害者がないがしろにされ、加害者が守られ続ける、という事でした。
その「集大成」が今回の第29回党大会におけるパワハラなのです。
いったい、なぜこんなにハラスメントに寛容なのでしょう。
何度か書きましたが、現在の共産党中央が目指しているのは社会変革でも革命でもありません。「共産党という組織並びに、長年続けられてきた、党の体制を維持すること」だけです。
ここで示した「党の体制」というのは、「党の代表をはじめとする最高幹部を同一人物が長い期間続ける」「男性優位」「上意下達かつ、厳しい上下関係の存在」などを意味しています。
この最後の「上意下達かつ、厳しい上下関係の存在」が共産党の党運営の本質です。
「上」が決めたことは、どんなに間違っていても従わねばなりません。
最近の例で挙げれば「党員と赤旗を4年前の1.3倍にする130%の党づくり」です。
ちょっと思考力とデータ分析能力があれば、そんな事が絶対に不可能であることくらい、すぐにわかります。
しかし、それを表明する事などできません。そこで、幹部は「130%の党を実現させよう」と「指導」するよりないのです。
このような、理不尽な事に従わせるような上下関係を身に付けさせるには、ハラスメントは大変有効なのです。
自衛隊のような上下関係が絶対な組織で、防衛大学校に入学するとまず強烈なハラスメントが発生するのと根は同じです。
上下関係が絶対であるという事例を一つ紹介します。
筆者は党専従になる前は、コンピュータ関係の自営業を行っていました。その当時、後の勤務先となる共産党の地区委員会からWEBサイトの制作を依頼された事もあります。
その後、専従になって常任委員をやっているときに、ある会社からある候補者のWEBサイト作成売り込みがありました。
話をちょっと聞きましたが、値段も法外で、内容も期待できません。意見を求められたので「断るべき」と返事しました。
ところが、知らない間にその業者への発注が決まっていました。筆者が参加する常任会議にも諮らずに決めたのです。
もちろん、筆者の予想通りそのサイトは大失敗に終わりました。しかし、失敗の責任は誰もを取りません。他人事みたいに「ひどい業者だった」などと言う始末です。
専門的知識や実務経験を元に誤りを説明してあげても、「上」が誤ったっことを決めれば実行されてしまう、というのが共産党という組織なのです。
その体制を維持するために、ハラスメントが行われるわけです。
定番化しているものに、「部下」にチラシなどを作らせ、それに文句をつけて修正を繰り返しさせる、というものがあります。
筆者も、専従時代、地区委員長に演説会のチラシを作ってくれ、と言われた事がありました。当然ながら、会場の地図を入れました・
すると「地図なんかいらないよ。外してくれ」と言われました。
一般社会の常識ではありえない事です。しかし、「これが共産党の『常識』なのか…」と思って地図を外しました。
似たような事が何度か繰り返されるうちに、チラシの内容を改善したいのではく、ハラスメントしたいだけなのだな、と理解しました。
そう気付いたあとに依頼を受けたので印刷物を渡しました。すると、「じゃあまた指摘するから」と言ってきたので、「データはメールで送りました。直したければ委員長が自分でなおしてください」と言いました。
すると、その原稿がそのまま印刷されました。改善のためでなく、ハラスメントのために文句をつけていたことは明白です。ついでに言うと、それを最後にチラシ作成の依頼も止まりました。
セクハラについても同様です。党内はもちろんのこと、「野党共闘」で知り合った党外の運動家や、選挙ボランティアをやってくれた方にセクハラを行った事例を見聞きしました。
軽い「処分」がくだった例もありますが、加害者は相変わらず活動を続け、セクハラの事実は隠蔽されています。
「男尊女卑」という伝統も、「共産党の体制維持」という目的の一つだから当然こうなるのです。
自分は共産党に入る前に、様々なパワハラを受けました。それもあり、支持している共産党が「ハラスメント根絶」を掲げたときは、大変嬉しく、さらに支持を強めました。
その後、入党・専従になったわけですが、そこで知った事は、異常なまでのハラスメント容認・隠蔽体質でした。
その「集大成」が、「党大会結語での公開パワハラ」だったわけです。これを知った時は、離党して本当に良かった、と改めて思ったものでした。
あれだけ批判されても反省など一切しません。それどころか開き直って、まともな社会では一切通用しない「理由」を主張してハラスメントを肯定しています。
それを見ていると、この党からハラスメントがなくなるのは、解党する時までないな、と確信するまでに至っています。