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河口恭吾さんが考える、クリエイティブの力を高めるコツ

「クリエイティブ力を高めるコツ」をテーマにした連続インタビュー。
今回お話をうかがったのは、シンガーソングライターの河口恭吾さんです。

以下は、河口さんの簡単なプロフィールです。
・2000年、デビュー作「真冬の月」を発表。
・2003年、「桜」が第46回日本レコード大賞金賞および作曲賞を受賞。
・その後も精力的に曲づくりやライブ活動を行い、藤井フミヤさん、堂本剛さん、中孝介さんなどにも楽曲を提供。
・2021年11月には、9枚目となるアルバム「No Rain No Flower」をリリース。
・現在もテレビやラジオ、イベントなどに数多く出演されています。
・河口さんのオフィシャルサイトはこちら

今までになかった歌を、新たに生み出すという「曲づくり」のお仕事。
まずは曲づくりの際に、河口さんの内面にどんなことが起こっているのか。
その感覚を言葉にしていただくところから、インタビューをスタートしました。

◎曲を生み出す時の感覚

うーん、曲ができる時って、いろんなパターンがありますからね。
一言で表現するのは難しいですけど。
でも、「心が動く瞬間を、すっとつかまえる」という感覚は、あるかもしれません。
 やっぱり曲づくりって、最初は何かインスピレーションのようなものがきっかけになりますよね。
インスピレーションが生まれる瞬間の多くは、「心が動く瞬間」なのでしょう。
心が動き、自分の目の前に何かが表れる。
それを、「手を伸ばしてつかむ」感じです。
 
例えば、夕焼け空など、美しい風景を見たとしますよね。
僕はそんな時、「隅っこの情報」が大切だと思っているんです。
風景全体は、確かに美しい。
でもその中の、特に心が動くものにピントを合わせるようにする。
具体的には、太陽が沈む間際の「最後のひと光」など。
そんな特定の対象に、意識の焦点を合わせるようにするんです。
その方が、感動の意味がわかりやすくなりますし、心に浮かぶテーマが具体的になるからです。

心が動き、何かインスピレーションのようなものが現れる。
もし現れたら、それを急いでつかみ、手繰り寄せていく。
それがさっき言った「すっとつかまえる」という行為になります。
これは、洋服の裾をパッとつかみ、懸命に相手を引き寄せる感じ。
がんばって、地引網を手繰り寄せる感じにも似ているかもしれません。
そうやってつかんで、引き寄せ、どんどんと手繰り寄せていく。
そうすることで、生み出したいものの全体像がだんだんわかっていくんです。
そして1つの作品をつくることができる。
曲づくりの際は、自分の内側にそのような感覚がありますね。

◎自分のフィルターを通して、別のものに変換する

さっき言った「つかまえる」という行為。
その時僕は、「音に変換する」という作業をすることが多いです。
自分の中に生まれたもの。
目の前に現れたインスピレーション。
それを確認し、再現するため、ギターを持って音を探しに行くのです。
クリエイティブな行為とは、もしかすると、この「変換をする行為」のことなのかもしれませんね。
感動や気づきを、自分というフィルターを通して、自分なりの何かに変換をする。
僕は音ですが、それが言葉であってもいい。
絵でもいい。
ダンスのような身体を使った表現でもいい。
自分の中に生まれたものを、自分というフィルターを通して、何かに変換をする。
そして表現をする。
それが創造の本質だと思うし、僕が作曲時に行っていることかもしれません。

◎「感性」を磨くために心がけていること

自分の感性を磨くために大切にしていること。
それは、「小さいころから持っているもの」を大切にするということじゃないですかね。
実は、僕は泣き虫なんですよね。
小さなころからずっとそう。
すぐ泣いちゃう。
でもこれが自分らしさだと思うし、僕が本来持っている感性なんだと思います。
この泣き虫なところが、僕の場合、心が動く原動力になっている。
人には小さなころから持っている感性や特徴があります。
それを認めたり許したりしながら、大切にすること。
それが、その人ならではの発想や創造物をつくる源になるのではないかと思います。
 
あとは、会話も大切ですね。
僕は人と話をすることで、イマジネーションがわくことがよくあります。
大切なキーワードが見つかったりもする。
相手がどういうものを求めているのか。
それも会話の中で伝わってくることもある。
最近は、大学生くらいの若い人たちと話をすることも多いです。
彼らとの会話を通して、いつも刺激を受けています。
自分が持つ「引き出し」を広げることにも役立っている。
感性を養うためには、そして学びや刺激を得るためには、対話の機会を惜しまないこと。
これも僕が大切にしていることの1つです。

◎クリエイティブ力を高めるためのアドバイス

「クリエイティブな仕事ができる人ってすごい」
そんなことを思われる方もいらっしゃるかもしれません。
でも僕は、クリエイティブって、たいしたことじゃないと思うんです。
なぜなら、人は誰でもその力を持っていると思うからです。
僕が一番尊敬しているクリエイター。
それは、第一次産業のお仕事をされている方々です。
例えば、田んぼや畑でのお仕事。
工夫をしながら、試行錯誤を繰り返し、おいしくいただける食べ物をつくる。
これが一番クリエイティブなんじゃないかと思いますよね。
僕は仕事で、全国のいろんな地域に足を運びます。
地方のおじいちゃんやおばあちゃんは、本当にクリエイティブ力が高いと思います。
とにかくいろんなことに興味をもつ。
そして行動に移す。
考えるだけではなく、手や体を動かし、モノを生み出す。
そんな、地域の皆さまは、本当にすごいって思います。
 
実は皆さんの日常にも、クリエイティブなことは溢れているんじゃないかと思います。
ただそれに気づかず、通り過ぎているだけ。
意識を向けていないだけ。
料理にしても、服を選ぶにしても。
想像力を働かせながら、何かを選んだり、取り組んだりしているのではないと思うんです。
それを確認すること。思い出すこと。
暮らしの中にあるクリエイティブな側面や時間に目を向けること。
まずはそれが最初の一歩かもしれません。

◎ちょっとした「遊び心」をもつ

「クリエイティブの力を高める」ということでいえば、ちょっとした「遊び心」も大切かもしれませんね。
こんなことをしたら面白いかな。
こうしたら喜んでくれるかな。
同じことをするにしても、遊び心を持って取り組んでみる。
そうすると、いつもの暮らしに変化が生まれ、楽しいことが増えると思います。
僕は娘のお弁当をつくることがあるんですが、「ソーセージをタコさんの形にしたら、娘は笑顔になってくれるかな」と、そんなことを想像しながら、遊び心を持ってお弁当をつくっています。
 
クリエイティブの本質は、「面白がること」だと思っています。
自分が面白がり、楽しむこと。
楽しい何かをつくるために、ちょっとした変化をつくること。
曲づくりもそうですね。
私もこれまで、遊び心を持ちながら、いろんなことを試してきました。
 
ある哲学者の言葉に、「すべての芸術は、自然の模倣である」というものがあります。
どんなに新しいことをやろうとしても、結局は何かを参考にしていたり、影響を受けていたりする。
そういう意味だろうと思います。
わかる気もしますが、やはり自分ならではのものを生み出したいですよね。
だからこそ僕は、「遊び心」が大切だと思うのです。
当たり前のことから外れてみる。
ちょっと面白いことをやってみる。
自分というフィルターを通して、自分ならではの何かに変換をしてみる。
ダメでもともと。
そんな感覚を持ちながら、新たな扉を開けてみる。
クリエイティブであるということは、そういう感覚を持つということではないか。
今回のインタビューを通し、あらためてそのように感じました。


以上、河口恭吾さんからうかがったお話を、ご紹介させていただきました。
個人的な感想としては、「自分というフィルター」という言葉が印象に残りました。
そのフィルターを通して、生み出せるものがある。
変換できることがある。
遊び心を大切にしながら、何か小さく生み出してみる。
そんなことに日々取り組んでいきたいと感じました。
 
河口恭吾さんには、お忙しい中お時間をちょうだいし、貴重なお話をいただきました。
この場をお借りして、心よりのお礼の言葉を申し上げます。
本当にありがとうございました!
 
※河口恭吾さんのライブ情報はこちらから。
https://www.kawaguchi-kyogo.com/news1

インタビュー後の記念写真


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