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元開発者が語る、あのとき知っておけば良かった知財活用術

 本日、発明通信社にて、開発者(技術者・発明者)むけの特別セミナー
『元開発者が語る、あのとき知っておけば良かった知財活用術』(北畠健二 弁理士)を受講しました。
 好評で既に2回目だそうです。3回目も実施されると思いますので、ネタバレにならないよう、でも受講を検討なさる方の参考になるよう、以下に感想を書きます。

講師はこちらの方です。

【講師】 弁理士 北畠 健二先生
     前川知的財産事務所 http://www.maekawa-ip.com/
早稲田大学理工学部材料工学科卒業、同大学院理工学研究科修了後、国内電機メーカーに就職し、要素技術開発、製品設計、生産ライン立上げ業務を担当。
発明者として機械、電気、流体、材料、光学等分野の特許提案を行う。
知財部門へ異動後、それまでの経験を活かし発明の発掘、他社権利調査、権利化業務に携わる。
2015 年弁理士試験合格後、2016 年より都内特許事務所にて弁理士として勤務。
中小・ベンチャー企業を中心に、知財相談、発明発掘、特許明細書の作成、中間処理、特許調査等を行う。
20183 月より、前川知的財産事務所に加入。また、日本弁理士会関東支部中小企業ベンチャー支援委員会に所属。


 開発者・技術者・発明者(以下開発者等)にとって、日々の開発業務、たとえば実験報告、生産工程立ち上げ等に追われる中で、発明提案や他社の先行技術動向の調査・監視は負荷が大きいと思います。

 また、特許の必要性、特許の見方、どこまで特許に書くか、特許をどう調べるか、といったことがそもそも良く分からないことも、精神的な負荷が大きいと思います。

 本セミナーは3時間でしたが、開発者が知りたい&知っておくべき内容を開発者に馴染みやすい事例と語り口で、コンパクトかつ丁寧に、わかりやすくまとめられておられました。
 誰もが最初に感じる疑問や悩みを解消し、効率的に開発活動と知財活動をリンクづけられると思います。流れは以下の通りでした。

1.はじめに

 講演者の経歴、所属特許事務所の紹介、セミナー参加者の特許習熟度確認のあとに、知財担当者と開発者の間のミゾ、意識のギャップ、事業における知財の意義、開発者と知財専門家が互いに理解し合うことの大切さについての話。講師が開発者から知財部を経た弁理士として、様々な立場の視点を持たれたことで、いわゆる三位一体の知財戦略(事業部門・研究開発部門・知財部門の連携)をもっと開発者目線の身近さでわかりやすく落し込んで話されているように思いました。

2.開発者(発明者)の悩み

 多くの方が疑問を持たれるであろう質問(以下の質問内容はかなり省略させて頂きました。実際はもっと長くて詳細な質問が多い)等への回答
・特許をどう見ればよいのか?(特許公報には色々とあるけれど…)
・他社の後追いで特許出願をすることには意味がないのか?
・どうやって(特許文献を)調べるのか?
・特許の書き方で内容が足りないとか、書き過ぎとか、どういうことか?
・特許請求の範囲、明細書、要約書ってなに?
・権利範囲が狭くなるとはどういうこと?
・先使用権があるから大丈夫?
 また、「開発者の日々の業務そのものが、発明活動である」という観点で、その発明が特許になるかどうか(またすべきかどうか)という点についても、具体例を交えた紹介や解説がありました。

3.成功例・失敗例

 以下の事例紹介等がありました。実際に起きた問題や成功体験とリンクし解説は伝わり方が違うので、このような話は重要だと思います。
・知財部と開発者の意思疎通にズレ、それが権利範囲と実製品にズレに繋がった
・侵害予防調査での漏れについて
・展示会での会話での技術情報流出について
・共同研究開発の留意点について
・他社の特許から他社製品の構造・機能・スペック等を理解できる

4.HYPAT-i2を活かしたパテントマップ

 セミナーの主催者がHYPAT-i2という特許データベースを提供している発明通信社ということもあり、そのHYPAT-i2を使ったパテントマップについて説明がありました。
 こちらは、仮想テーマを選び、業界分析として「どのようなプレーヤーがいるのか」「そのプレーヤーはどんな分野に注力しているのか」の調べ方を具体的に検索・遷移画面を使って詳細に解説されています。
 本業のサーチ(先行技術検索)となると非常に奥深いので、それだけで数回研修が組まれるものですが、ここでは、開発者(技術者・発明者)がざっくりと勘所を養える、必要最低限の知識解説で、使い方を絞って解説されているので、開発者の特許センスを培うのに良いと思います。

5.特許出願戦略について

 より特許制度について踏み込んだ内容になってきます。
競合他社を睨んで、自社の開発・販売時期に合わせた権利期間の調整は、自社の利益を最大化する上で欠かせません。
従って、特許法の様々な制度を駆使して、最適な権利設計を立てていくことになります。
 開発フェーズと出願タイミング、補正・優先権・分割の説明と戦術、
改良発明の出願タイミング、場合によって出願取り下げ等、基本を押さえる形でポイントを解説されていました。

6.専門業者の活用(外注の検討)

 特許事務所が提供できるサービスです(本セミナーでは前川知的財産事務所)また、開催元の発明通信社のサービスもあります。
 今回、スタートアップの知財部を立ち上げる方もいらしていたので、そうした方にとって知財の専門家である弁理士が立ち上げに寄与する事は大きいと思います。
・他社動向調査、パテントマップ作製
・先行技術調査、侵害予防調査、無効資料調査
・鑑定
・発明発掘相談
・出願権利化
・契約

7.知財の体制づくり

 講師が某大手メーカーの開発から知財部経験者であるので、開発者に知財のキーマンを置くこと、知財教育、モチベーションUP活動についても話がありました。
 興味深かったのは開発部門に置かれている「特許リーダー」達の存在。そうした存在がない企業において、特許リーダー(のような人材)をどう育てるのか、ということに、外部専門家である弁理士の役割が生かされる様に思います。

8.最近の傾向

 テック系の訴訟と商標のトピックについて紹介・解説。
最新の話題の紹介と、商標(問題のある第三者の出願に対してあきらめない)に関する話題がありました。知財の制度(法律等)は社会情勢を踏まえ、時々刻々と変化しています。知財に関係されていない方は知らないことが多いので、特許庁の運用等を伝えることは重要だと思います。

9.質疑・応答

 私は知財に人材を割けない企業の場合の外部専門家の役割について質問させて頂きました。他に質問はありませんでした。終了後に受講者が個別に質問されていたので、弁理士は守秘義務がありますからその方が良い場合もあります。(以上)

 今までセミナー受講感想を書いたことがないのですが、講師は私の受験仲間(当時大手メーカー開発→知財部)であり、発明者と知財部の架け橋について良く話をし、丁寧で技術見識の高い発明ヒアリングの姿勢を見てきた方でしたので、今回のセミナーを楽しみにしていました。

また私の活動目的である、『知財がビジネスツールの1つとして活用される』市場を広げるため、まずは日本中の弁理士が活用されるべく助力したいと思っており、熱意溢れる方々のご活動に興味があるので、この様な形でそうした方々の活動への参加、私自身の知財活動普及講演やセミナー(熱意溢れる方々との連携等)も記録していければと思います。

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