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僕が緊急事態下の日本で、緊急事態下の香港の写真集を発売する理由

志村けんさんが亡くなった日。まるで部屋の明かりをひとつ消すみたいに、時代のトーンがひとつ暗くなった気がする。

あの震災の日と似ていた。震災の日もあの大きな揺れ体験してもなお、初めは他人事だった。あの揺れから数時間後のテレビ速報。「宮城県の名取海岸で数百人の遺体が見つかる」そのニュースを見た時、時代が音を立てて崩れていく気がした。そして、原発が爆発した。時代のフェーズが完全に変わってしまったのを昨日のことのように憶えている。

そして今回は、あの時より冷静な自分がいた。

2月に横浜港に帰港したダイアモンドプリンセスを取材し、そのあまりにも無防備な対策を見た時。この国の政府ではもう感染拡大は防げない。と残念ながら肌で感じたからだ。

ましてやこの3年、沖縄、高江で辺野古で、現行の構造や今の日本政府が人間の命より、自分たちの利権を優先することを体感してきた。

籠池家でもそうだった。

現政権は常に本当のデータを誤魔化し隠すことで、国民をアンダーコントロールしてきた。そしてそれに気づき、声を上げる人間を徹底的に叩きのめす印象操作の構造も出来上がっているし、マスメディアももうとっくに利権と忖度に飲み込まれて腑抜けだった。

しかし、想像を上回る事態が起きた。コロナウイルスは誰にも忖度しないのだ。

全世界が同時に悲鳴を上げながらもがいている今、安倍政権はいつものようにデータを改ざんして誤魔化すことはもう不可能だ。

人々は今、ついに現実と直面することとなる。多くの犠牲を払いながら世界の実相が露わになるのだ。

僕らのように、すでに時代がカオスであることを自覚して生きてきた人間は準備ができているが、世の中の大多数がそうではないだろう。

システムを信頼しきってきた人々は慌て、おびえ、情報や信念、信仰など新たにすがれるものを探そうとするかもしれない。だが、それでは本質的な解決にはならないだろう。

僕らの世界はすでにカオスの只中なのだ。それを受け入れて生きる他に道はない。

みなさん、カオスへの準備はできているだろうか?

2016年末に僕はすでにAP通信のインタビューでこう答えている。

"I feel we are heading toward an era of chaos, but the individuals who are truly aware will be able to overcome this chaos,"
「時代はカオスに向かっているが、それに気づいている個人たちはこのカオスを乗り越えられる」大袈裟太郎(AP通信 2016年12月31日)

https://www.wthr.com/article/revelers-to-honor-late-celebrities-in-2016-era-of-chaos-1

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昨年末、ある香港人青年が語ってくれた。

「去年の今頃、香港がこうなるなんて誰も予想してなかったでしょう?
来年、中国が崩壊したっておかしくないんだよ」

自信たっぷりに言った彼の言葉には、苦境をくぐり抜けた者だけが放つ輝きのようなものが宿っていた。魅力的なほどに肯定感に満ちていた。

そして今、パンデミックに苦しむ世界を見ると、予言めいてさえ聞こえる。

【香港2019写真集 moment of the water 行雲流水 official trailer】

今回発売する香港写真集は、緊急事態下の香港で撮影したものだ。

まさか、これを発売する時、日本でも緊急事態宣言が出されるなんて全く想像だにしなかったことが起こっている。最悪のタイミングだと思ったが、逆に言うと今こそ必要なものだとも感じている。

内容から一部抜粋。

一寸先は闇か光か、血か煙か、それは誰も知らない。「やつら」は怖れない。訳ではない。怖れながら進む。いや、怖れているからこそ進むのだ。

この写真集は、闇のなかを走り抜けた香港人たちの半年の記録であり、現代史の最前線からの招待状だ。

現状、日本もパンデミックによって既存のシステムが崩壊し、業種によっては焼け野原になるだろう。路頭に迷う人も多くいるだろう。収入が0になる人も貯金が0になる人も多くいるだろう。

ただ、命あればこそ。あなたはやり直せる。生き延びるための闘い、命を守る闘いがすでに始まっている。そして命について想えば想うほどに、国民の命を省みない現政権へ怒りが沸き上がる。

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「be water, my friend」

これは香港のデモの合言葉であり、ブルース・リーがかつて残した言葉だ。

水のようにしなやかに形を変えながら行動する。臨機応変に生きる。それこそまさにカオスの時代にふさわしい行動原理だと感じる。

流れる水ように蠢く彼らの横顔から、僕らは何を学ぶことができるだろうか?

香港の最前線でずっとそれを考えてきた。実際、日本や沖縄の政治状況に活かせる発見は山のようにあった。そして今、予想よりだいぶはやくそれが必要な時代になってしまった。

悪政に対して声を上げる方法、ナチュラルに政治に参加する方法、

それを支える個人たちの圧倒的な表現力。SNSの効果的な使い方。

カオスの時代を生き延びるための知恵とヒント、やさしさを、この写真集に込めたつもりだ。今の日本に足りないものばかりだ。

僕は彼らからたくさんの種をもらった。その種を日本でまく時なのだ。

正直、日本から1000人が香港のデモを訪れて体験すれば、日本のプロテスト/政治運動は変わるだろうし、それによって今の政治状況も変わるだろうと夢想してきた。家にいなきゃならないこの御時世、1000人がこの写真集を読んでくれたら、日本も少しは変わると思っている。少なくとも右左で止まっている古い政治意識は更新できるはずだ。

今、何かやりたいけど何をしたらいいかわからない?そういう人にこそ読んでほしい。そんな日本的な悩みはすぐに吹っ飛ぶ気がする。旅にも出られない今の世界で、往復4000円で香港デモへの旅が追体験できると考えたら大袈裟だろうか?笑

これはあなたをエンパワメントし肯定感を高める「民主主義をめぐる冒険の書」だ。この一冊から何かが始まる爆発的な可能性を秘めている。

写真集という物体にすることでその場にとどまり、偶発的に流れを変えることができるだろう。カフェや美容室、もしくは家庭のリビングで、偶然の出会いを生み、誰かの意識を更新する。

これはカオスの時代を生き抜くために必要な書物だ。

あなたは生き残るし、給付も勝ち取れる。消費税はなくせるし、政権交代もできる。辺野古も中止にできる。

すべてはあなた自身がそれを望み、行動するか否かでしかないのだ。

ゆっくりと部屋にこもり、珈琲を飲みながら、コロナ以降の世界のことを僕はすでに考えてる。コロナを越えて安倍政権を越えて、その後の世界の景色が僕には見える。

この写真集はこれからの新世界を生きる活力になるだろう。

いよいよ解禁だ。兄弟姉妹、野に放たれよ。

大袈裟太郎

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w/o b project【第1弾】

香港2019デモ写真集『moment of the water 行雲流水』

写真/文 大袈裟太郎
2020年4月10日より当サイトにて発売中。

144P オールカラー サイズ:210mm × 297mm (A4)

定価 ¥4000(税込)※国内送料無料キャンペーン対象

購入はこちらより▶️▶️▶️https://wob.theshop.jp

#光復香港時代革命

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2019年6月から激化した香港の反送中―民主化デモ。

グロテスクなほど生々しく無機質な警官隊、容赦なく浴びせられる催涙弾、失われた命や眼球、権利…そして勇敢なプロテスターたちがそこにはいた。

彼/彼女らが生み出した多様なアクションは、理性とパッションに満ち、陰惨な弾圧を受けながらも、新しい時代の到来を予見させるものだった。自由と権利を求め続けるその鮮烈な現象は、やがて世界中を揺り動かす歴史の1ページとなっていく。

デモ最初期からの100日以上に及ぶ膨大な取材をもとに、ラッパー、動画配信者、文筆家など数々の顔を持つ著者が圧倒的なリアリティで描ききった144Pのフォト&ルポルタージュ。

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從2019年6月起,香港反送中民主化運動開始升溫。這其中,有一群勇敢的示威者。

他/她們所發起的行動多樣百變,即使在陰狠的打壓下,仍讓人看到新時代來臨前的曙光。

這群人對自由與權利不疲不懈的追求,形成的一幅幅深刻畫面,終會成為撼動世界的一頁歷史。從運動開始起累積下來的超過 100 天採訪內容,將輯錄成 144 頁相片報道,真實而逼人。

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自分が撮らなければ、なかった事にされる。歴史から抹消される。
いつもその恐怖との闘いがある。
苛烈さの中で催涙弾を投げ返したい衝動に駆られたこともあったし、
もしも自分の真横で無防備な市民が血を流すならば、
カメラを置いて抵抗し、逮捕されることも何度も想定した。しかし自分の眼は、時に何万、何百万の眼と成り得るのだと己の役割を自覚し、
どうにかぎりぎり踏みとどまってきた。

想えば、その一瞬一瞬に自分がいた。そして「やつら」がいた。
あの瞬間の空気。匂いや音。それが届くような一冊になってってほしいと思う
激しい対立、弾圧と抵抗。しかしその隙間に時折垣間見える、人間らしき横顔。

僕らと変わらない、それぞれに葛藤や生活を抱えた人間たちがそこにいる。
日々を選択し、そこで生きている。
その結果としての闘いなのだ、それを写したかった。
記号ではなく、みな、背景を持った人間たちであること、それを表現したかった。

「やつら」の闘いはまだまだ終わらない。
それは選択のための選択。自己決定のための決定。

そして僕らの人生もまた、選択の連続なのだ。
たとえどんな時代になろうと、
自分らしく生きる道をあきらめる必要はない。
水のように風のように駆け抜ける、
「やつら」は僕にそれを教えてくれた。

2020年3月某日 光復香港時代革命
大袈裟太郎 こと 猪股東吾

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如果我沒有拍下這些畫面,它們就會被人從歷史上抹殺掉,化為烏有。我一直與這份恐懼戰鬥着。

人在暴烈的現場中,我也生起過撿起催淚彈扔回去的衝動;如果身邊有毫無防備的市民受傷流血,我也想丟下相機上前抵抗,我甚至多次設想會被拘捕。

然而,一想到我的一雙眼,將有機會成為數萬、甚或數百萬人的見證,我就認清自己的角色,總算能勉強自制。

想來,在那每一個瞬間,我身在其中,而「他們」也身在其中。

那些瞬間的氣氛、氣味、聲音,我希望都能透過這本記錄一一傳遞給大家。

在激烈的衝突之間,在打壓與反抗之間,偶爾會流淌出人情味 —— 站在這個戰場上的人們,跟我們一樣,各有自己的掙扎與生活。

他們每天都在選擇,活在選擇之中,為自己的選擇戰鬥,我想記下這一切。

他們是各有不同背景的人,不是單純的符號,我想讓大家看到這一面。

「他們」的戰鬥仍未結束。這是為爭取選擇權而做的選擇,為爭取自決權而下的決定。

而我們的人生,亦是從選擇而來。

無論時代怎樣變,也不必放棄用自己的方式生存。

像行雲,像流水。這是「他們」教會我的事。

2020年3月某日 光復香港時代革命

大袈裟太郎,本名豬股東吾

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写真集を手にして「紙」の重みを感じる。
デジタル世代。いつもは鬱陶しい紙が不思議と愛おしい。
大袈裟太郎の写真を刷った紙は、まるで生命を手に入れたみたいだ。

これは2019年6月から12月の香港の街と人びとを生々しく表した写真集だ。
大袈裟太郎という強烈な個性が生み出した写真集だが、写真の一枚一枚とその集合体に大袈裟太郎の気配はない。
個性的なのにクセがない、なんとも得体の知れない怪写真集だ。
ページをめくりながら「なんなんだろうなあ…」と独り言がこぼれ、鳥肌が立つ。 表紙を開き、ページをめくり、もう一度閉じる。自分が興奮していることに気づく。
ぼんやりと表紙の写真を見ていると、どこからとなく香港の銃声、人びとの声が聴こえてくる気がする。
あの時のアドミラリティや銅羅湾のコンクリートジャングルで自分もしっかり聞いた音だ。

取材の合間にセントラルの外国記者会館近くで合流したときのことを思い出す。
「もう歩けないけど、タクシー止める手も上がらない」。
ぐったりした表情で楽しそうに笑いながら、大袈裟太郎は香港のネオンに紛れて、そこに立っていた。

流動的に沸き立つ香港中を駆け回り大袈裟太郎は全身で写真を撮り続けていた。
足で撮ってきたような写真集だ。
中には、香港と大袈裟太郎が祝福しあってるような1枚もある。探してみてほしい。 アウトサイダーでありながら気づけばインサイダーの視点で切り取った瞬間も豊富だ。 一通り写真を見て文章に目をやると、これは時代の正体を知るための「教科書だ」と直感する。
情報量もハンパない。写真集の中を行ったり来たりページをめくりながら、
香港から台湾、沖縄、韓国、そして日本へと広がる無限の時間と空間の中に自分が立たされていることを実感する。

世の中にちょっとした違和感を感じたことがあるなら、ぜひ手にとって表紙を開いてほしい。

LEEJ(李真煕)

Oogesataro, a Tokyo-born artist, was at the frontline when the first large march took place in Hong Kong on 9 June. He kept moving into the smell of tear gas and never stopped photographing the details of the protests with his handy camera.

This is a photo collection of Oogesataro’s journalistic work. His photos captured the emotions of Hong Kong people and the scenery of their hometowns between June and December, 2019. Taro kept documenting the mood of the era "for the progress of human history" he says.

Oogesa is a unique talent from Japan who loves Asian neighbors unconditionally. Through his photos, we feel the hope of invisible trust that Hong Kong people share among their community. "That hope is the answer to the excessive capitalism and neoliberalism", he explains.

He is always at the frontline. He was there in the sea when a US Marine Corps MV-22 Osprey crashed off the northern coast of Okinawa. He was there at the former school chief Mr. Kagoike’s home in Osaka, when Prime Minister Abe Shinzo’s private school scandal was revealed.

Oogesa originally means "oversized robe for Buddhism priest" in Japanese. Oogesataro, as a rapper/ journalist/ photographer, has been documenting the scenes of Asia’s politics and democracy since 2016.

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今のジャーナリストは、差別者やデマがあっても収益のために批判しないどころか、媚を売る者さえ存在する。
フリーランスにしてもそうだ。目に余る。
そういう構造の腐敗と対峙し、徹底抗戦するためには、
個人からの小さな支援の集合で運営するしかない。

異端であり、先端であると自負している。

大袈裟太郎JOURNALは個人からの取材基金によって成り立つ独立型新時代メディアです。大企業などのスポンサーを持たないことで忖度の無い情報発信が可能です。ぜひ下記口座より協力をお願いします。
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