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出張の思い出


確か、あれは謝罪出張だった...
途中で切腹最中を買って

断腸の思いという意味を込めて..
新幹線で東京から広島まで...

同行した相棒
鉄オタで、仕事はまったく出来ないが、電車バスの接続には旅行会社顔負けのストレスないガイドをしてくれた
しかし、恥ずかしくて人前に出せないほど常識の節操のない男だった

真夏だった..
先方の会社につき、部屋へ通された
"遠路わざわざ御足労頂いて済みません"
なんて社交辞令のご挨拶を受け、蒸し風呂のような会議室へ通された

"今、冷房つけますので...しかし暑いですね、連日..."

私は早々に謝罪の挨拶をし、パフォーマンスばかりの切腹最中を差し出し、席についた

この切腹最中は、腹を切り断腸の思いだという意思をつたえるパフォーマンス挨拶だ

相棒は
"暑いですよねー、いつまでこの暑さは続くのですかね"

と、スーツの上着を脱いだ...
その時だ、ズボンのバックルが...

どこで買ったのか分からぬS◯Xの文字のどでかいバックル...

"着なさい、上着を着なさい..."
私は慌てた..

当の本人は、キョトンとし、なぜですか?と言わんばかりの納得いかないようす

"上着を着ないのなら、早く座りなさい"

"どうしたんですか?影郎さん、何を怒ってるんですか?"

"いいから、座りなさい!"

あんなバックル
どこで売ってるんだろうか
売っていたとして、あれを買うセンスが理解できないし、こういうフォーマルな場であれを身につけてくる神経がわからない

あのバックルって
ジェームスブラウンしか似合わない...

宿泊先に戻り、例のバックルの件を延々と叱責した

"あのバックル、インパクトありますよね!上野のアメ横で...."

違う、違う
そういう事を聞いてるのではない
たとえ、ファッションだとしてもセンスがヤバすぎる
たとえプライベートで身に付けるにしてもだ

"さすかにS◯Xという文字はないだろう?しかも下半身に近い部位で..."

"これね、3万くらいしたんですよぉ〜"

3万かけて、恥を身につけるって...
しかも身につけてる本人より、身近にいる人間が辱めを痛感してしまう、という矛盾

"近くにね、うまい豚骨ラーメン屋があるんですよぉ"

これは遠足でも旅行でもないのだ...
もぅ、君とは出張を共にしない....

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