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初めから俺達は格好良くなんてないしな

不可思議/wonderboy

彼は23歳でこの世を去った。


ポエトリーリーディングを使ったそのラップスタイルは "ポエトリーラップ" と称される。


フカシギワンダーボーイ

彼と「Pellicule」という曲を知ったのはつい昨日のことだ。


ふと、日本語ラップが聴きたいなあと思って

「日本語ラップ 名曲」で検索


"日本語ラップ名曲ランキング"のサイトにあったのが「Pellicule」という曲。


ランキング上位にはBUDDA BRANDTOKONA-XOZROSAURUSSOUL SCREAMなどレジェンド達の名曲が並ぶ中、聞いたことのない名があった。

不可思議/wonderboy というアーティスト。


気になって聴いてみる。

ポエトリーリーディングを使ったスタイルのラップだった。MOROHA狐火なら知っている。でも不可思議/wonderboyは知らなかった。

良い曲だなあと思ってプレイリストに追加した。


翌朝、またあの曲を聴きたくなって再生。


学生時代を終えた頃の20代前半。
楽しかった"あの頃"を思い出して寂しさを感じながらも、未来への希望と野心を持っている。


そんな若くて青臭さの残る年代の素直な心情をストレートに歌った曲。

俺達の知る限り時間ってやつは
止まったり戻ったりはしない ただ前に進むだけだ 

だから今日は戻らない日々を思い出して笑おう 
今日だけ、今日だけは思い出して笑おう 

こういうのってあんまり格好良くはないけど 
初めから俺達は格好良くなんてないしな
Pellicule / 不可思議/wonderboy

この人はどんな人なんだろう?
どうして知らなかったのだろう?

と思って調べてみた。


彼は震災の年、2011年の6月に交通事故で亡くなったという。彼はもういないのだ。

認知度がようやく高まってきていた頃、これからという時に、不可思議/wonderboyは23歳の若さで亡くなった。

それからこの曲の歌詞の聴こえ方がガラリと変わった。図らずも意味がまるで違って聴こえるようになった。

もともと美しいビートに乗せたドラマティックな曲ではあるが、より泣ける曲になった。

路上ライブの動画では、多くの人々が通り過ぎる中、たった6人の客を前に全力でラップする姿に心震わされる。

「いつか俺が売れた時に、自慢してください」


この曲が名曲ランキングの上位にある理由がわかった。

もう二度と生で聴くことができない伝説の名曲。
「Pellicule」MVの再生数は2000万回を超えている。


彼が生きているうちに知りたかった。
路上ライブを見ることができた6人の客は、本当に後に自慢できる瞬間を目撃したのだ。

彼の時間は止まってしまったけれど、彼の残した曲はこれからも名曲としていつまでも流れ続けるのだろう。


実際、今日はずっと
単曲ループでイヤホンから流れ続けている。


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