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韓国映画『82年生まれ、キム・ジヨン』に男は何を思うか?

『82年生まれ、キム・ジヨン』2020年日本公開
監督:キム・ドヨン

韓国で130万部以上のベストセラーとなった小説の映画化作品。子育てに追われる主婦キム・ジヨンは思い通りにならない現実にストレスを抱え、自覚もなく心のバランスを崩していく。学生時代から就職、結婚、出産、子育てまでに女性が受けるさまざまな差別を通して、女性の格差問題と生きづらさを苦しいほどリアルに描いている。

同じ境遇にいる女性なら共感できることしかないだろう。

では男性は何を感じるのか?

子供が中学生になった今の自分がどう思うのか、率直に書いてみよう。

夫は働き、妻は主婦として家を守り子供を育てる。その価値観が古くさいものとなった現代で、男性は変わらなければならない。親になった瞬間から生活も夫婦の関係もガラリと変化していく中で、今までの価値観を捨てても順応する必要がある。自分を最優先にして生きることを止める覚悟も持たなければならない。家族のためにお金を稼ぎ、子供のためにできることをできるだけしてやりたい。自分のために生きるのはそれからだ、と思っている。

人は思い通りにならないことに苛立ち、ストレスを感じ、疲弊していく。

キャリアアップしたいのにできない。
休みたいのに休めない。
働きたいのに働けない。
結婚したいのにできない。
充分な収入が得られない。
眠いのに寝られない。
子供を預けたいのに預けられない。
帰省したいのに帰れない。
好きなことをしたいのにできない
子供が言うことを聞かない


この作品を観てどう感じるかは、それぞれのライフステージや状況によって違うのではないか。

キム・ジヨンは、理想と思い通りにならない現実にギャップがあった。だから心のバランスを取れなかったのだとするなら、何がやりたかったことなのか?生きづらさは何のせいなのか?考えると行き着くのは、

自分らしく生きたい

と、シンプルなことなのかもしれない。

これからどんな社会になればいいのだろう?
理想とは?

すべての人が自分らしく、思った通りに生きることができれば、すべての問題は問題にならないのではないか。女性が生きやすい社会、すべての人にとって生きやすい社会を目指すこと。すべての子供にとって自分らしく成長できる未来があること。

それが本当の理想であり、そのためにはすべての人がそのことを考えなければ実現は難しい。自分のことばかり考えていたのでは絶対に不可能なのかもしれない。

自分が思い通りに生きるために、自分以外の人のことを考える。矛盾しているようで、それが核心ではないかと思ってしまう。

うーん、なんか違う。

休みたいときに休みが取れて、やりがいがありストレスのない職場で、残業しなくとも充分な給料がもらえる仕事をして、家では機嫌がいい妻とかわいい子供が待っている。家事育児は分担し、協力し合って円滑に生活をまわす、感謝と笑顔が絶えない家庭。家族みんなでご飯を食べて、休日は旅行に行き、たくさんの思い出をつくりながら子供はすくすく成長する。少し手を離れた頃には妻もやりたい仕事で社会復帰して、それぞれやりたいことに夢中になれる。子供が自立し夫婦2人に戻った頃には、お酒を飲みながら思い出を語り合い、ぐっすり眠る。朝起きてカーテンを開けると眩しい光。いつものように犬を連れて散歩に出かける。

…どうだろうか?
夢物語のようで笑ってしまう。

理想と現実のギャップに病みそうだ。


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