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メルボルン大学の建築学部生にオンラインで尾道と地域おこし協力隊を紹介した話。

こんにちは、尾道市地域おこし協力隊の池上です。
先に尾道市地域おこし協力隊について知りたいよ!という方はこちらの自己紹介記事をご覧ください♪

1. オンライン授業が決まった日

ある日。
友人から次のようなメッセージが来ました。

「Hi!今度よかったら、メルボルン大学の学生たちに尾道市と地域おこし協力隊制度の話をしてもらえない?」

その友人は、尾道の近くの島で暮らしながらオーストラリアの南部、メルボルン(画像下のピンの位置)の大学で日本の地域創生のゼミをみているという方。

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私が尾道に来てはじめた協力隊のInstagramを通して知り合い、お互いの地域の情報交換や地域のひとを紹介し合うような交流がはじまりました。

そんな友人からの滅多にない面白そうな誘いに、次の瞬間には「する!」と返信し、今回の話が決まったのでした。

2. 何を話せばいいんだろう?な準備期間

調子よく引き受けたものの、そもそも海外の建築学部生にどんな話をしたらいいのかさっぱり...。

「世界で最も住みやすい都市」ランキング常連のメルボルンには行ったことがありましたが、近代的なビル群と緑豊かな広場、開放的なカフェが混在するような場所で、尾道とはまったく異なる景観です。

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コロナの関係で尾道に来たことがないメルボルンの学生たちに尾道の写真や映像を見せることも考えましたが、正直私が介入しなくても収束してから来てしまえばいいだけの話。

もう少し意味のあることはないだろうか...?と考えていたとき、今回の話をくれた友人から以前言われた言葉を思い出しました。

「日本は世界的に見ても少子高齢化がもっとも進んでいる『先進国』として有名なのに、地域でおこなわれている取組について外国語で書かれた文献がとても少なくて困っている。」

そこで、地域おこし協力隊と尾道市の空き家(建築学部生なので)、産業についての日本語の情報を訳し、地域で自分が見聞きした情報も合わせて伝えることにしました。

3. 【授業内容①】地域おこし協力隊って?

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■ポイント
・地域おこし協力隊制度がはじまったのは約10年前
・隊員数は年々増加傾向
・専門知識は必ずしも必要ない
・自治体によって雇用条件が結構違う

地域おこし協力隊制度がはじまったのは、麻生総理大臣時代の2009年~。実は、はじまってから10年くらいしか経っていません。

都市部などに暮らすひとに、少子高齢化などの課題が深刻な地方に移住してもらい、活動するなかでその地域の活性化を目指すものです。

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募集の情報は、自治体のホームページや、移住・交流推進機構(JOIN)が運営しているサイトなどで見ることができ、IT・観光・教育・農林業など多岐にわたる分野のものがあります。

専門知識は必須ではありませんが、逆に活かせる求人も探せる幅広さもあり、隊員数は年々増加傾向にあります(下図のグラフ参照)。

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ただし、雇用形態や勤務日数は自治体によって異なるため注意が必要です。

雇用形態で言うと、募集をしている自治体に直接雇用される(雇用保険に入れる)ものもあれば、個人事業主になって(雇用保険に入れない)委託される形で活動をおこない、比較的自由に行動できるものもあります。

4. 【授業内容②】空き家の話

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■ポイント 
・尾道は空き家率が高い
・尾道は3つの地区に空き家バンクがある

「尾道観光=古い建物をリノベーションしたお店」というイメージの方も多いのではないでしょうか。しかし、実は他の地方と同じく尾道でも空き家は増え続けています。

どのくらい多いかというと、2015年の時点で全住宅に占める空き家の数(=空き家率)は、全国や広島県の平均を上回っています。

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さらに、高齢化によって空き家が増えている一方で、すべてが素敵なお店に...というのはなかなか難しいのも現状です。

空き家が活用されない理由はさまざまで、

「売りたくても改修や物の処分にお金がかかる」などの貸し手の意見もあれば、「建物自体は安くても改装費用が高い」などの借り手の意見もあります。

そこで尾道でも導入されたのが「空き家バンク」の取組みです。

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空き家バンクは、空き家を売却/賃貸したい家主が物件情報を登録し、買いたいひととのマッチングをおこなう制度です。

発足当時は市が運営していましたが、いまでは各地区のNPO団体などに引き継がれ、①尾道の沿岸部・沿岸部付近の傾斜地、②御調町(みつぎちょう)、③因島(いんのしま)、の3つの地区に空き家バンクがあります。

これにより、いまは尾道で空き家を知りたいときに聞ける窓口がある状態になっています。

また尾道の場合、移住して空き家を活用しているひとがたくさんいらっしゃるので、聞ける方が多いことも大きな強みかもしれません。

5. 【授業内容③】産業の話

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■ポイント
・第3次産業が6割
・製造業と小売/卸売、宿泊/レストラン業の就業者数が多い

尾道では観光に関係する「卸売/小売業」「宿泊/飲食サービス業」で働くひとや会社が最も多く、「製造業」がその次につけています。

尾道は長年造船業がさかんな地域だったことから、いまでも造船業をはじめとした「製造業」が産業に占める割合が多くなっています。

6. メルボルン大学生の反応

ここまでの話を受けて、メルボルンの学生さんたちは特に島の産業を調べて、新しい事業やプロジェクトの企画をしてくれています(進行中)。

ここでは、そのうちの1~2つを簡単にご紹介します。

1_杜仲茶(とちゅうちゃ)プロジェクト

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こちらは因島について調べたチームの企画案です。

1987年頃から因島(いんのしま)で育てられている、杜仲(とちゅう)という木の葉を使った健康茶を杜仲茶(とちゅうちゃ)と言います。

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その特産についての情報と、Google Mapで見つけた土地、そして因島の空き家情報を活用して、杜仲茶を提供するお店と農業体験ができる杜仲茶の畑の事業デザインを構想してくれました。

2_Market Station案

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こちらは生口島(瀬戸田)について調べたチームの提案です。

島を訪れたひとたちが必ず立ち寄るスポット(Market station)を島の各所につくり、地元野菜の販売や、地元のひとと観光客、移住者のひととの交流が生まれる場を構想してくれました。

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ご紹介したものも含め、どの案も地域の地場産業や地形を調べた上で、具体的にどの場所でどのようなことをするかまで練り上げられたものでした。

今後は、この構想をさらにブラッシュアップしていき、プロジェクトをどこまで実現できるかが課題になりそうです。

7. まとめ

オンライン授業の限られた時間で実際に話せたことは限られていましたが、資料をつくったおかげである程度のことはお伝えできたかなと思います。

今後は学生さんたちがつくられた案をどのように実現させていくかが課題になりそうですが、関係者への情報共有をしながら、少しずつ取り組んでいく予定です。

また、適切な表現がわからない...などの課題は、Google翻訳や検索である程度カバーできるので、今後もできるところから海外への発信をつづけていこうと思います。

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