【バンクシーよろしく】

僕ですか?あの漫画家のアシスタントしてます。ここにいるのはそのー、あっあなたも見たことがありますか?
あの映画のシーン。
本好きの女のコが図書室で本を借りる際に、必ず自分よりも先に本を借りている男の子がいるということを貸し出しの図書カードの名前を見て知る。
そこからどんな男のコなんだろうと思いを馳せる。
素敵な出会いじゃありませんか?

僕にも同じようなことが起きたんです。
と言っても僕は読書家ではないので図書カード越しの出会いではないんですが、うん。
あの、こんなことを改めて言うのも恥ずかしいんですけど、うん。
あの、僕はー、公衆トイレに卑猥な落書きをするのが趣味なんですー。
すみません…気持ち悪くてー。うん。そうあれ僕なんですー。
あのスリルを味わいたいんですよーうんー。
夜な夜な男子トイレで落書きをする。
最初は仕事のストレスの憂さ晴らしでやっていたんですが、
漫画のアシンスタントやってます。
これは男子以外の色んな人にもみてもらいたいと思うのは表現者として自然の話ですよね。

そこで目をつけたのが、小さな公園に設置してある男女兼用トイレ。

いつものように若者がたむろしてないか確認し、扉を開きました。
そこで立ちすくんでしまいました。
そこには僕よりも先に書かれた卑猥な落書きがあったのですが、
およそマジックペン一本で描き切ったとは思えない!
繊細にして豪快な臀部。
光と影が優しさと切なさを演出させる乳房。
卑猥な落書きとは思えない絵画があったんです。
まさにそれはオランダの画家レンブラントを彷彿とさせる絵画でした。

ふと絵の下に目をやると小さくローマ字でmarieと書いてありました。
こんなレベルの高い卑猥な絵を、しかも女性が…
僕は自分の持ってるスキルが恥ずかしくなり、その日は何もせずに帰りました。

それから、僕が目星をつけた男女兼用トイレには必ずmarieの絵がありました。
こうなってくるともう落書きはどうでも良くなってきて、
marieってどんな人なのかなー会いたいなーという気持ちが強くなってきました。うん。
そこで僕は!徹底的に脚を使い調べ上げ、marieが落書きをしていない男女兼用トイレを探し出しました!!
妄想だけ終わらない!行動に起こせるタイプの気持ち悪い奴なんですー。
執念が違う方向向いてたら今頃署内で評判の刑事やってたんかなー。うんー。

僕はmarieの落書きのないトイレに「marieさん良かったら連絡を下さい!!」と書きました。
本当にmarieのことしか考えてなかったんです!
昼夜問わずイタズラ電話がきました。
マジでトイレに落書きする奴民度低すぎ。

でもそこで見くびってもらっちゃ困るよ、僕を誰だと思ってるんだ?
刑事だぞ!
落書きをする場所の目星はついた。
あとはmarieが絵を描く時間がわかれば良い。うん。
そこで僕は!マジックペンの色素が太陽の紫外線で劣化していく時間を測定し、marieが落書きをするおおよその時間を割り出しました!!
計算もできるんですー!うんー実にぃですー。実にぃなんですー。
そして毎日現場の張り込みをしました。

運命の日。深夜3時。
渋谷区某男女兼用トイレ。
煌々とトイレの明かりが点っています。
いつものようにドアノブに目をやると、小さな扇子の形をした部分は青色ではなく赤色になっていました。鍵がかかっています。

耳をすませば、、キュッキュッとマジックペンの音が聞こえていました。
あー、扉越しにmarieがいるんだ…と喜びが溢れました。
出てくる所で声をかければよかったのですが、marieが!marieが描いている姿を見てみたい!!と思ってしまいました。
トイレの小窓が開いています。
そこへよじ登り、様子を見ました。
marieは、あの予想を遥かに下回る容姿をしていましたー。うん。
街で見かけたら二度見する醜さでしたー。
僕は知らないうちに捜査した努力分の見返りを求めてたんでしょうね。
腹が立ち警察に通報しました。

捕まるmarie。
何故ベレー帽を被り、マジックペンを持った状態でそこいたのかうまく説明ができなかった僕も捕まり、今こうして留置場にいます。
marieが先に捕まったので5番、僕が6番です。
本当にmarieはいつでも僕の先をいきますね!

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