[野球] 2019ドラフト会議

「2019年プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」交渉権獲得選手のお知らせ

 2019年のドラフト会議の結果が出ました。残念ながら1位指名した大船渡高の佐々木朗希投手は抽選でロッテにさらわれてしまいましたが、外れ1位で社会人の河野竜生投手の指名権を獲得しました。指名選手は次の通り。

1)河野竜生 : 投手(JFE西日本) 1998年5月30日生 21歳 174cm 81kg 左投左打
「野球太郎」の評価は、「社会人ナンバーワンの左腕」「先発なら今永昇太、抑えなら松井裕樹タイプ」里崎智也の評価は「チェンジアップ系を覚えれば更に良くなる」
*目標は杉内俊哉
指名の瞬間

ドラフト候補のスカウト評価簿

2)立野和明 : 投手(東海理化) 1998年4月3日生 21歳 181cm 81kg 右投右打
*「野球太郎」の評価は「非常に完成度が高く、伸びしろもある」「オースドックスな先発型で、河原純一タイプ」

立野和明がドラフト上位である理由。受けてわかった直球、変化球、精神。

3) 上野響平 : 内野手(京都国際高) 2001年4月26日生 18歳 174cm 65kg 右投右打
*「野球太郎」の評価は「プロの一軍でも遊撃を任されるだけの守備力」のある「小柄な金子誠」
*本人の目標は今宮健太
*高校の監督曰く「源田壮亮(西武)のように柔らかいプレーと、今宮のようなアクロバティックなプレーの使い分けができる」

遊撃手の新時代を築く逸材。京都国際・上野響平の守備はファンキーだ
甲子園にも、侍ジャパンにもいない。京都で見た、プロ志望の逸材遊撃手。

4) 鈴木健矢 : 投手(JX-ENEOS) 1997年12月11日生 22歳  177cm 77kg  右投左打
中継ぎでシーズン60試合登板を目標に掲げ、「宮西さんにはシーズンを戦い抜く方法を聞きたい」

ドラフトでひそかに注目を集める変則右腕 JX―ENEOS・鈴木健矢
人生を変えたサイド転向 社会人代表最年少投手 鈴木健矢(JX-ENEOS)【前編】
社会人ジャパン最年少投手が明かす、エネオス入社の理由と独特な握り 鈴木健矢(JX-ENEOS)【後編】

5) 望月大希 : 投手(創価大)1998年2月1日生 21歳 187cm 83kg 右投右打
*「野球太郎」の評価は「一皮剥ければ大化けの予感も」
指名の瞬間

日本ハム5位 創価大・望月、涙のプロ入り 野球を教えてくれた天国の父へ「ありがとう」

6) 梅林優貴 : 捕手(広島文化学園大) 1998年3月14日生 21歳  173cm 85kg 右投右打
*「野球太郎」の評価は「二塁送球1.8秒の<梅キャノン>」
幼少期に会ったことがある広島石原が目標。

7) 片岡奨人 : 外野手(東日本国際大) 1997年11月16日生 22歳 184cm 78kg 右投左打
*札幌市出身。「福島県いわき市にある大学は、台風19号の被害で断水状態が続き、ドラフト当日は商工会議所で指名を待った」
小学時代は「日本ハムファイターズジュニア」のセレクションも受けた。当時の監督で打撃投手を務めた白井康勝氏(50=現スカウト)から「たまたま」ヒットを打てた。3次試験で落選したがプロの世界と関わったことが上を目指すきっかけとなった。

東日本国際大・片岡 大学で培った自信胸に指名待つ

育成1) 宮田輝星 : 外野手(福岡大) 1997年12月2日生 21歳 177cm 69kg 右投両打
*憧れの選手はソフトバンクの周東佑京

育成2) 樋口龍之介 : 内野手(新潟アルビレックス) 1994年7月4日生 25歳 168cm 84kg 右投右打
*横浜高校で近藤の1年後輩、淺間、高濱の2年先輩
指名の瞬間

ドラフト指名を待つ遅咲きのスラッガー 新潟アルビレックス・樋口龍之介が開くプロの扉

育成3) 長谷川凌汰 : 投手(新潟アルビレックス) 1995年11月8日 23歳 188cm 92kg 右投左打
*「野球太郎」の評価は「独立リーグNO.1投手」先発でもリリーフでも。「ストレートのキレと変化球の組み立てで勝負する藤川球児タイプ」
指名の瞬間

新潟の153キロ右腕・長谷川凌汰、指名漏れからの進化《2019 ドラフト候補》
BCリーグで11勝1敗の好成績・150キロ右腕の長谷川凌汰(新潟)

 なんと本指名7名のうち社会人が3名、大学生が3名、高校生はわずか1名。さらに去年から解禁した育成ドラフトも、3名中、大学生が1名、残り2名が独立リーグの新潟アルビレックスの選手。ドラフト全体(10人指名)で高校生がたったの1人というバランスを欠いた指名は、近年のハムとしては異例中の異例と言えます。ちなみに社会人選手を1位指名したのは、なんと2000年の井場友和(富士重工業)以来19年ぶり、大学社会人選手が1,2位で指名されたのは2015年の上原健太(明大)加藤貴之(新日鐵住金かずさマジック)以来4年ぶりとなります。

 これまでハムのドラフトは、特に北海道移転後はチームの将来像を明確に描いた上で、高校生を中心に大学社会人、投手と野手もバランスよく指名するのが方針でしたが、ここまで大学社会人に偏ったドラフトで、しかも本指名の1,2,4,5位が投手とは異例です。唯一の高校生も内野手なので、なんと上位5人のうち4人が即戦力期待の大社投手というのは異常とさえ言えます。これは今年の成績不振を受けての球団フロントの強い危機感のあらわれでしょう。有原以外の先発がほぼ壊滅、上沢は故障で来季の見通しは不透明、マルチネスやロドリゲス、さらに金子弌大は来季チームにいるかどうかわからない。田中瑛斗や北浦竜次、吉田輝星ら若手の成長もアテにはしずらい。ブルペン組も今季の不規則起用で疲弊している。来季の上位を狙うなら先発リリーフとも、即戦力投手の補強が不可欠と言えます。が、それにしてもこれはちょっと偏りすぎですね。

 これがハムのドラフト戦略の根本的な転換を示しているのか、それとも今回限りのことなのか俄に判断できませんが、SKY-Aの解説でスポーツライターの小関順二氏が言っていたように、「球団が栗山監督のために、すぐに使える即戦力投手を用意した」と見るのが正解かもしれません。つまり栗山監督は、来季いっぱいで勇退することが(たぶん)今から決まっている。(来季で)9年間監督を務めた功労者・栗山英樹の最後の花道に有終の美を飾らせるため、数年後を見据えたチーム作りを放棄して、来季のみに照準を合わせた極端な即戦力投手中心のドラフト指名を敢行した、という見方です。2023年の新球場開場に照準をあわせるなら、ここまで偏った指名はしないはずで、それが栗山監督のためかどうかは別として、とにかく来季の優勝、最低限でもAクラス入り「だけ」を考えて、こういう指名になった。いつクビになるかわからない現場の監督は常に即戦力を求めるもので、そうした目先だけを見た要望に惑わされず、長期的なチーム作りを考えて戦力補強していくのがハムフロントの良さだったはずですが、今回はどうやら違うようです。口さがない向きは、「栗山お得意のショートスターター要員を大量指名しただけ」なんて言ってるようですが……

栗山監督コメント
「(河野投手の1位指名は)すぐに勝ってくれるピッチャーが必要だった。佐々木投手の場合は別枠でしたけれど。最もファイターズが必要としている左の先発ピッチャー。昨年の日本選手権での投球を見て、いいピッチャーだなと思っていた。普通に先発ローテーションに入れるピッチャーが必要だったので良かった。全体的に、社会人を多く指名したが、高卒から社会人へと進んだ3年目くらいの若い選手が多い。すぐ投手陣は何とかしなきゃいけないところで、うまくバランスが取れ、いいドラフトだったと思う。今シーズンの責任を感じているので、早めに戦力になってほしい選手たちを指名した。早く特長を生かせるようにしたい」

 それにしても下位の6巡目や7巡目、育成枠などは将来性のある高校生に使ってもいいはずなのに、ここでも全員が大社選手なのは、ちょっと納得がいかないですね。これはハムフロントの危機感、あるいは「自信のなさ」を示している気がします。つまり世間一般で思われているほど、ハム球団の育成システムは機能してない。現実に、ここ10年の高卒入団選手で完全に一軍の戦力になっていると言えるのは(大谷は別として)2011年指名の近藤と上沢、2010年指名の西川ぐらい。今年になって2013年指名の渡邊諒がやっとレギュラーの座を掴みましたが安定した戦力とはまだ言えない。あとは甘く見ても2014年指名の清水と石川直也、2016年指名の堀ぐらいです。特に高校卒の投手で先発としてある程度実績を残したのは、上沢以前は2006年指名の吉川にまで遡らないと見当たりません。大谷翔平というケタ外れの怪物、さらにはダルビッシュというスーパーエースを輩出したおかげで、ハムは育成上手というイメージが一般化してますが、実は全然機能していないのです。田中瑛斗や吉田輝星がモノになれば別ですが、おそらく球団はそこまで確信が持てないでいるのではないか。また、独立リーグの2選手がいずれも新潟アルビレックス所属なのは、新潟の監督が元ハムのドラフト1位清水章夫であることが関係しているのか、どうか……。

 もちろん今回のドラフトで佐々木を首尾良く獲得していればドラフト全体のイメージもがらりと変わっていたでしょうが、おそらく佐々木を獲得しても、即戦力投手中心の指名は変わらなかったでしょう。とはいえ「即戦力」と言っても、本当に戦力になるかどうかは、蓋を開けてみないとわかりません。ハムは伝統的に下位で大社投手を指名し、古くは武田久や武田勝、宮西、増井、谷元などをリリーフとして戦力に仕立て上げてきました。それがハム伝統の強力なブルペン陣を作り上げてきたわけですが、ここ数年ではせいぜい玉井と井口ぐらいしか戦力になっていない。ハムフロントには、そういう危機感もあるのではないか。つまり育成だけでなく、スカウトの「目利き」も鈍っている。それを、数多く指名することで補おうということです。

 しかし、そうした、いわば裏事情は、指名された選手には一切関係がないことです。今年指名した選手たちは育成の樋口と長谷川以外はみな21〜22歳以下と若く、伸びしろを残していると思われます(あるいは、期待されます)。首尾良くプロの水に馴染みさらに成長してくれれば、2023年シーズンには20代半ばの脂の乗った時期を迎える。即戦力として活躍しても新人の時がピークであとは下り坂、というのでは困る。私はアマチュア選手については全く詳しくないので、今回指名した選手の実力や将来性についてはわかりませんが、全員がプロで長く活躍してくれれば、ハムを優勝に導いてくれれば何も言うことはありません。

「社会人で同期の河野(竜生・JFE西日本)とか太田(龍・JR東日本)のほうが気になりますね。試合でいいピッチングしたとか聞くと、コノヤローみたいな気持ちになりますし」

 上記リンクの記事にある、2位指名の立野の発言です。こういうライバル同士が同じチームに入ったのは面白い。同級生の堀や高山も含め、ドラ1とドラ2で切磋琢磨して、どんどん成長してほしいですね。

 ちなみに、今年極端な貧打と長打力不足、機動力不足に泣いた野手の補強がいかにも手薄ですが、これはおそらく新外人の獲得やトレード、あるいは白村に続く投手の野手転向などで補うつもりと思われます。3位指名の上野は、もちろんFA流出が懸念される中島の後釜のイメージでしょう。これについてはまた後日。

日本ハムは即戦力投手を立て続けに指名できましたが、打力に問題のないヤクルトや西武とは違います。バランス的に『うーん』という感じです。

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