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妖怪人間

映画『演者』の撮影から2年か。
長いような短いような。
今もまだ転がり続けている。
面白いなぁって思う。
公開までも時間がかかるし公開してからだって時間がかかる。

僕が二十代前半の頃。
結構、おじさんたちに憧れていたのだけれど。
特に小劇場だとアングラ世代がどんどんおじさんになっていて。
この人たちはなんちゅうか、とんでもねぇなぁって思えていて。
まだまだ実際に一緒に呑みに行ったり話したりも出来てさ。
でも同時に文化の中心地は自分たちの世代だぜって感じもあった。

90年代の渋谷っていうのはなんかそういう場所だった。
アート的なものがどんどん集まっていくイメージ。
僕は池袋を根城にしていて、時々、渋谷や原宿に足を運んだ。
クラブ文化とか、パルコとか、ラフォーレとか、まぁ色々。
音楽もファッションも、その他の文化もなんかすごかった。
僕自身にもそういう影響はあったのだけれど、ありつつもその文化みたいなものを少し斜めから見ていた。
どことなく70年代の文化みたいなものの残滓の方がホンモノっぽくてかっこいいよなぁって思っていて、そっちばかり気になっていた。
あいつら、なんか、うわついてんなみたいに。

なんか自分の子供でもおかしくない年齢の子たちと話すとちょっと不思議な感覚になってくる。
同時に実は今の文化の中心地はお前らだよなぁって思う。
実際にそうなんだろうし、僕なんかの知らない空気もあるのかもしれない。
同時に90年代への憧れみたいなものもあるみたいで、バンドブームの頃の曲を意外に知っていたりもして、なんだか懐かしくなる。
あの頃、軽薄に思えた感じが今の人にはホンモノに思えるのかもしれないなぁなんて思って、はっとした。

70年代にアングラって呼ばれていたモノは90年代に入ってサブカルって呼ばれるようになっていた。
でも今、アングラっていう言葉が生き残っているらしい。
地下アイドルとか、まさにアンダーグラウンドそのもので、誰かがちょうどいい言葉として見つけたのかもしれないけれど。
逆にサブカルって言葉はあまり耳にしなくなっている。
僕が耳にしないだけなんだろうか?
ボカロとかはどんなふうに言われてるのかな。
ヴァーチャルアイドルとかも大きな会場でイベントをやってるらしいけど、あまり僕の界隈で話を聞くことがないだけで、きっと知らないだけなのかもしれない。

若者文化って多分、本質的に軽薄なんだと思う。
どこかかっこつけるから、うわっつらな匂いがしてしまう。
そういうとき、ベテランの持ってるホンモノ感ってのは説得力が違う。
でも、その若者文化みたいなものを乗り越えないとホンモノに辿り着かないのかもなぁって思うよ。
自己顕示欲が強くて、初期衝動のままに、感性のままに、何かを生み出す。
そういう勢いの先にしか見えないものがある。
それでぶつかる壁に直面してから見つかるものがある。
そういうことなのかな。

僕自身はどうなのだろ。
あの頃の僕はおじさんたちをまるで妖怪のように感じてた。
なんかわからんけどすげぇみたいな。
でも、僕なんかは普通の人なのかもしれない。
じじぃは引っ込んでろみたいに思われてもいいなぁって思う。
僕だってそれなりに積み重ねてきたのがあるし、無鉄砲に走り続けた経験もあるけれど、どうもあの頃先輩に感じたあの重みみたいなものが身についているかと聞かれると危うい。

ナメられそうじゃない?
うふふ。
まぁ、いんだけど。それで。
というか、その方が頼もしいんだけど。

そんなことを思いつつ。
同世代の人を見ると、おっさんだなぁって思う僕は何者なのか。
どうもまだ無鉄砲のままのようで。
妖怪にすらなれない。
中途半端だの。

よーかいにーんーげんっ

映画『演者』

企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル

「ほんとう」はどちらなんですか?

◆終映◆
2023年3月25日(土)~31日(金)
K'sシネマ (東京・新宿)

2023年4月15日(土)16日(日)
シアターセブン(大阪・十三)

2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)

出演
藤井菜魚子/河原幸子/広田あきほ
中野圭/織田稚成/金子透
安藤聖/樋口真衣
大多和麦/西本早輝/小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟 録音 高島良太
題字 豊田利晃 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希 制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。