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それは自分自身を探す旅

今度は急に寒くなるってさ。
11月なんだから当たり前だけどさ。
寒暖差が激しくて自律神経がついていかん。
なんか体調がおかしいぞという時間帯があって凹む。
アレがアレしたらしくて大騒ぎ。
お堀に飛び込んで風邪などひきませぬように。

コロナの頃、やけに縛られているということを実感した。
呑みに行くな、マスクをしろ、出歩くな。あれもこれも。
芝居をするな、ライブをするな、映画館は閉鎖。
それもすべて自分の責任でのお願いベースという世界でもまれな形。
雰囲気が一番強い拘束力を持っていた。
あの時期を越えて今があるけれど。
今はもう縛られていないような感覚があるだろうか。

僕はなんだかより鮮明に縛られているんだなぁと感じることがある。
コロナはまだ目に見えているだけましだった。
でも今は目に見えない分、何に縛られているのかすらわからなくなるような曖昧模糊とした縛りがうっすらと漂っている。
鬱屈していく何かが僕の腹の中にあって、こいつが爆発してしまうのではないかなんて怖くなったりする。
窮屈だ。なんだか息苦しい。なんだこれは。
そういう感覚。

金儲けして、うまいもん食べて、楽しい人生送ればいっか。
なんてそんな簡単じゃないよな。
色々うまく行かないことの方が多いしさ。
そもそもセレブとかみてもまったく憧れないしさ。

あの頃に比べれば街は賑やかだ。
ご機嫌そうなやつらがうろうろしているよ。
でもなんか、嘘くさい。
来ないでと声を上げた渋谷のハロウィンは想像以上に仮装した人がいなかったなんて言われているけれど、そんな簡単なことじゃないよ。
二の足を踏んでしまう雰囲気のようなものがそこに横たわっている。
真面目に粛々と生きればいいのはわかってるけどさ。

人生っていうのが生まれて死ぬまでだというのなら。
人は生まれた瞬間からゆっくりと死に近づいているだけになる。
まるで真綿で少しずつ首を絞められているかのように。
未来とはなんなのか考えることも、なんだかバカバカしいほどに。
でもそんなことじゃあないだろう?
人は生まれた瞬間から、ずっと生きていくんだ。
死はどこかでやってくる現象に過ぎない。
どんな未来だって望んでいくべきだ。
なんだかバカバカしくなっても、シラケそうになってもさ。

嘘くさいんだよ。なんか。お前。
この雰囲気、見て見ぬふりをしているんだろう?
じわじわと縛りつけてくる目に見えない雰囲気ってやつ。
僕にはよく見えるよ、がんじがらめ。
豊かな老後のために何か生きていけるかよ。
そんな準備しても、豊かになれる補償なんかないだろうさ。
そもそも、豊かなって何をもって豊かになるんだよ。

渋谷駅、ハチ公口からスクランブル交差点を渡って109を公園通り側に進んでいくと旧東急本店の交差点に出る。左側に進めばすぐに左手に坂道がある。渋谷という谷から山に登る道さ。その道を進んでいけば右側にユーロスペースが現れる。向かい側には大きな駐車場。建物の一階はカフェがあってその上に大きな看板もある。コンクリート打ちっぱなしの建物だ。

仕事行って、テレビ見て、飯食って、Youtube見ながら寝る。
それだけ繰り返していればハッピーになれるわけじゃない。
とりあえずの時間は埋まっても、心のどこかは隙間だらけだ。
自分は幸せだなんて言ってみても。
どこかで、ほんとうに?って声が聞こえるはずさ。
僕は僕を演じているだなんて、いつか気付いてしまうのさ。

日常は偉大だ。
それほど大事なものはない。
その中に小さな良心が詰まっていればなお良いだろう。
だからこそだ。
日常の偉大さをみつけにいくべきだ。
非日常の中に見つければいい。
それが無理なら街に出るだけでもいい。
きどったり、無理に笑わないでいい。
自分の心が動く瞬間がどこにあるのかキャッチしに行くべきだ。
どんなことで笑って、どんなことで泣いて、どんなことで痺れて。
震えて立てなくなるような作品に出会うべきだ。

それは自分自身を探す旅だ。
見て見ぬふりなどするものか。
豊かになるってそういうことだろ。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。