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非日常なんてない

明けて今日発売の映画雑誌に紹介記事が書かれているらしい。
内容についてとかなんにも知らないんだけれども。
週末が重なっているので発売後に家に届くのだけれども楽しみ。
紙媒体というのは、逆に手が届かない層に届くというイメージがある。
何人かでも興味を持ってくれたらと願うばかり。

サボテンの花が咲いているのをみた。
あんまり見たことがない奴だった。
異常気象だから今が咲く季節であっているのかもわからない。
なんだか急に異世界に紛れ込んだような感覚になった。

映画館といいうのは非日常の入口なんて言われたりする。
朝起きて、ご飯を食べて、仕事をして、眠る。
その繰り返しを日常というのであれば恐らくその通りだ。
けれど芝居をすると日常という言葉を強く意識するようになる。
日常的だから駄目だと言われたり、もっと日常っぽくと言われたり、日常という概念が不思議なほど安定しないまま纏わりついてくる。
非日常を感じる作品の中で日常を重要視する不思議。
しかも撮影現場は常に非日常そのものだったりもする。

というよりも定義が違う。
日常という言葉の定義。
繰り返しの生活の中のことを日常というのも正解。
ただ映画の中の日常はきっと世界観をさしている。
映画館に非日常を感じるのは、自分とは違う世界観を感じることができるからだ。
時にはドキュメンタリーで異国の違う文化の中で生きる人を感じる。
時にはフィクションとはいえ社会の裏側で暗闘している殺し屋の心理を楽しんだりもする。
彼らには彼らの日常生活があって、それが彼らの世界観そのものだ。

よく役者はバックボーンを創るというけれど。
むしろ、この世界観の方の日常を創ることのほうが大事かもしれない。
過去にどんなことがあったとか経歴は結局、文字情報だけれど。
いつも何時に起きて、何を食べるなんていう生活のリズムは言葉で測ることができないほどの大きな情報を持っている。
登場人物にとっての日常というのは世界そのものなのだと思う。
そういうものをきちんと積み重ねておくことはすごく重要なのだと思う。

その上で。
その登場人物にとっての非日常をどう捉えるかなのかもしれない。
生活リズムとは違ったもの。
年に一度の祭のようなものだろう。
高揚して、興奮して、普段とは違う表情が溢れる。
その刹那をどう生きるか。

なんで人は非日常を求めるのだろう。
というかたぶん非日常なんてものは実は存在していない。
毎日、違う時間が流れて、毎日細胞が入れ替わっている。
日常的だと感じるのは脳内情報で似ていることが多いだけのことで。
実際には日々、同じ日なんて存在していない。
それでも非日常を求める。
祭りやイベントを待つし、旅に出るし、映画を観る。
そこに答えがあるのだろう。

現代人は安定を手に入れた。
明日食べるものがあるかわからないまま狩猟に出かけていた動物の時代から今は、食べるものも寝る場所も確保している。
生きるということの可能性を飛躍的に上昇させた。
だとすればその安定の中にじぃとこもっていればいいのに。
それだけでは何かが足りないと思っている。
だから娯楽も芸術も生まれてくる。

僕はたぶん、そもそもの日常なんていうものを疑っているような作品が好きなのかもしれない。
すごく日常を描いているように見えても、作家によってはその日常をあやういものとして描いていたりする。
逆に日常を信じている作品もあるけれど、僕にはなんだかそんな作品は嘘臭く感じてしまう。
そんなことあるのかなぁなんて思ってしまう。

日常のループの中で。
閉塞感のようなモノを感じている人はたくさんいる。
僕の周りでも、なんとなくこのままでいいのかなと感じていたりさ。
苦しむところまでいかないまでも、何か息苦しさを常に感じているような。
そんな声を何度か聞いてきた。
ストレスなんて言葉で片づけたりさ。
たまに旅行に行ったり、ソロキャンプしてみたりして、何かを氷解させようとしている。

僕は映画館に非日常を感じに来て欲しいのだろうか。
でもなんというか、それだけじゃないんだろうなぁって思う。
日常なんてものはないのかもよ?って。
小さな小さな石を放り投げるような。そんな感覚。

何もないように見えても。
サバイブしてるぜってそんな感覚。


映画『演者』
企画 監督 脚本 小野寺隆一
音楽 吉田トオル
題字 豊田利晃

「嘘ばかりの世界」だ
  「ほんとう」はどこにある

【上映館】
・2023年11月18日(土)より
ユーロスペース(東京・渋谷)
http://www.eurospace.co.jp/
劇場窓口にて特別鑑賞券発売中
先着50名様サイン入りポストカード付

出演
藤井菜魚子 河原幸子 広田あきほ
中野圭 織田稚成 金子透
安藤聖 樋口真衣
大多和麦 西本早輝 小野寺隆一

撮影 橋本篤志 照明 鈴木馨悟
録音 高島良太 絵画 宮大也
スチール 砂田耕希
制作応援 素材提供 佐久間孝
製作・宣伝・配給 うずめき

【あらすじ】
昭和20年春、終戦直前のとある村。嶋田家に嫁いだ3人の女たち。
血の繋がらない義理の三姉妹は男たちが戦時不在の家を守り続けている。

家長であるはずの長男の嫁、智恵は気を病んでいた。
三男の嫁、恵美は義姉を気遣う日々を送っている。
次男の嫁、陽子は智恵がおかしくなったふりをしているのではと疑っていた。

やがて魔物が再び女たちの前に現れる。
世界は反転して、演技は見抜かれる。

◆終映(特別限定先行上映)◆
・2023年4月15日(土)16日(日)※限定2日間
シアターセブン(大阪・十三)
・2023年4月15日(土)18日(火)21日(金)※限定3日間
名古屋シネマテーク(愛知・名古屋今池)
・2023年3月25日(土)~31日(金) ※限定1週間
K'sシネマ (東京・新宿)

投げ銭は全て「演者」映画化計画に使用させていただきます。