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2014年6月の記事一覧
やっぱりあなたを刺せない
翔太は私の婚約者で、半年後に籍を入れる予定だった。
――結婚したら、もう少し広い部屋に移ろう。
事件が起きたのは、そう話していた小さなアパートでだった。翔太とはこの部屋で同棲をはじめてからもう随分たつ。玄関を入ってすぐ右手に電子レンジを上に乗せた冷蔵庫があって、二口のコンロとシンク。左手にはトイレと浴室。三畳のキッチンの奥には居間兼寝室があって、引き戸が開いていた。
「ただいま」
だから
傾斜率(90°-23.4°)
深夜に実家にいる弟の芳樹から電話があって、「母さんが大変だ。助けて欲しい」と言われた。「顔が曲がって大変なんだ」
電話の向こうの芳樹は焦っているようだった。大学生だが専門は医学じゃない。こういうときどうすべきかわからないのは理解できるが、俺だって同じく医学については何も知らない。とりあえず「すぐ行く」と言って電話を切ると、上着を羽織ってアパートを出た。何かを出来るあてはないけど、そうする以外
まだプレビューできず
リコーのGRというデジタルカメラを買ったのが今から四年前だった。フォトレタッチの仕事をしている当時付き合っていた彼氏に勧めれて、言われるがまま買ったのがそれだった。
「黒がすごく良く出るんだ」
毎日、広告写真の加工ばかりをしているからか、そういうことに詳しい男だった。当時はそんな専門的なことを熱く語る彼が好きだったが、今思い出すと何だか子供っぽい感じがする。「本当にお勧め!」
あなたがそんな
人は見かけによらぬもの
高校を出てからだから十、いや十一年振りか。久しぶりに地元へ戻ってきた。もう誰も私のことなんてわからないだろう。期待はしてないし、学生時代の友人に連絡を取る勇気もなかった。結局、私が拒んでいるのだ。
午後六時過ぎ。実家にいるのが辛くて、外に出た。どこか食事出来る良い店はないか、と駅前を歩く。ポーキーというバルがあった。新しい店だった。まだ客も多くないだろう、と入った。
赤ワインとポテトサラダ。
急ぐ理由はないはずなのに
IT系のコンサルティングファームに就職したのが22歳のときだった。何人かの経営者と会っていくうちに、自分でも出来るんじゃないか、とシステム会社を立ち上げた。仲の良い、大学からの友人と起業した。俺は技術者ではなく、そっち方面はもっぱら友人の担当だった。だから俺の主な仕事は、資本を提供することと、営業で仕事を取ってくること、この二つだった。
26のときに会社を立ち上げ、それから寝る間を惜しんで働い