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「SAY YES」はジャンプ漫画で読み解け!!歌詞徹底解析前半

 早速ですが、私が最も多く聞いている楽曲「SAY YES」の歌詞を「徹底的に解析していきましょう。

「SAY YES」 CHAGE and ASKA  作詞:飛鳥涼 作曲:飛鳥涼

 まずは1番から見ていきます。

余計な物など無いよね
すべてが君と僕との愛の構えさ

 いきなり、「余計な物なんてないよね」と語りかけてきました。つまり、この場所には必要な物しか存在していないということです。

 ここで重要なのは「もの」でも「モノ」でもなく「物」と漢字で標記している点です。筆者は物質的な話をいきなり最初に展開しているのです。それはなぜか。

 それが、2行目の「すべてが君と僕との愛の構えさ」で説明されています。「構え」というのは、主に建物の造りを意味する言葉で、特に一般的な家屋に対して使われます。

 つまり、ここにある全てが君と僕との愛の住処を構成しており、余計なパーツや什器備品などが存在していないということです。

 そして、もう一つの意味が含まれています。「構え」という言葉は格闘技などで対戦相手に対峙するときの姿勢も意味します。ここでは「君と僕」が相対しているのです。

 武道の達人は、敵に対峙していてもその構えは余計な力が完全に抜けて、一見すると戦う姿勢には見えないくらいリラックスしているものです。つまり、武道の達人である「君と僕」が自然体で構えて向かい合っている状態というのも同時に描いているのです。愛とは戦いなのです。自分の全身全霊をかけて相手と向かい合って全力を出し切る。それが究極の愛。歌の最初でここまで一気に描写してしまうところがさすがASKAさんです。

次に進みます。

少しくらいの嘘やワガママも
まるで僕をためすような恋人のフレイズになる

 フレイズとは英語で標記すれば「phrase」文節や慣用句と意味します。また音楽用語として音節や短いメロディを表す言葉としても使われます。

 せっかく余計な物を排除して純粋な空間を作ったと思ったら、次にいきなり「嘘やワガママ」といった装飾のためのフレイズを入れてくるのです。なんと行ったり来たりの展開でしょう。

 しかし、こういう光景を思い浮かべてはどうでしょうか。武術の達人同士が、お互いの力量を確かめ合うように本域ではない技をお互い出し合って組手のようになっている。この光景を表現していると考えればしっくりくると思います。

 純粋な戦いの場だからこそ、その真剣勝負を楽しみたい。ギリギリの命のやり取りを楽しみたいということなのです。まさに刃牙の世界観です。

 サビ前を見てみましょう。

このままふたりで 夢をそろえて
何げなく暮らさないか

 主人公は、完璧な愛の構えの中で、小粋なフレイズでじゃれ合いながら、何げなく暮らす提案をしてきています。そうです。武術の達人などそう簡単に出会えるものではないわけで、この出会いを大切にしたい。二度と出会えないかもしれない。そう思うからこそ、このような提案になったのです。それではサビです。

愛には愛で感じ合おうよ
硝子ケースに並ばないように
何度も言うよ 残さず言うよ
君があふれてる

 サビ前半。これは逆説的に「硝子ケースに並んでしまっていると、愛に対して愛で感じ合うことができない」と言い換えることができます。

 では硝子ケースに並んでいるとはどういうことなのでしょう。一般的な家庭で硝子ケースに並べるものと言えば「趣味のコレクション」でしょう。腕時計や貴金属、モデルカーやブランド品、フィギュアなどを硝子ケースに並べている方も多いのではないでしょうか。

 更に考えなければならないのは、そもそも「何を」硝子ケースに並べていたのかということです。文脈から見ると「愛」を並べていると解釈されてしまいがちですが、違います。「愛」を硝子ケースに並べたら、いちいち取り出さないと直接「愛」を触ることができないのは当たり前だからです。そんなことをいちいち歌にするでしょうか。

 つまり、ここで硝子ケースに並べてはならない対象というのは「君と僕」なのです。人形のような飾り物になってしまっては、命のやり取りはできない。では、「真剣勝負してください」と高田延彦にマイクアピールしたUWFインター時代の田村潔のようなことを言っているのかというと、それもまた違います。

 筆者は、真剣勝負においても「フレイズ」という遊び心を忘れるなとAメロで述べています。真剣勝負だからこそ、心に余裕が必要であるし、たとえ命を落とすことになったとしても全力を出し切って、思い残すことが無いような戦いをしたいという、痛切なメッセージが込められています。だから筆者は「何度も言う」し「残さず言う」のです。「君があふれている」と。

 もう説明の必要もないかもしれませんが、ここであふれているのは「君からの闘志・オーラ」です。みなさんはHUNTER×HUNTERという漫画・アニメをご存じでしょうか。その中に出てくる「念」の概念が最も近いように思います。むしろ、念はSAY YESから着想を得ている可能性さえあります。ワンピースの覇王色の覇気のニュアンスもあると言えます。

 「SAY YES」を正確に理解するには、週刊少年ジャンプのバトル漫画をイメージする必要があります。ありきたりな恋愛風景だけでは、この歌の深い歌詞の意味を解釈しきれないのです。

では、次回は「SAY YES」後半を徹底解説します。


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