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ミュージカル エリザベート感想②~ルキーニについて~

2022年10月23日(日)マチネ
今日は花總まりさんのファンクラブ 花の会の貸切公演でした!

わたしがファンクラブに入ったのは2021年の3月なので、こうした貸切公演は初めての経験でした。
感動的な体験だったので、また別途書こうと思います。

今回はルキーニについて印象が変わったので、彼についての感想を述べます。

ルキーニはエリザベートに母を重ねているのではないか?

※実在の人物のルキーニではなく、作中のルキーニの話です。

10月22日に上山さんがルキーニの人生をまとめた記事をシェアしていたので読んでみました。

私生児として生まれたルキーニは母親に捨てられ、孤児として育ち、幼い頃から働かざるを得ませんでした。

ルキーニが親からの愛情を受けずに、貧しく厳しい暮らしをしていたと知り、彼への見方が少し変わりました。

10月23日マチネ公演はツイートした上山さんではなく、黒羽さんの回でしたが、どことなくルキーニはずっと寂しそうに見えました。

1回目に観た時には、ルキーニにはどことなく掴みどころがない印象を受けました。
ただ面白おかしく引っ掻き回して楽しんでる狂人でもなく、エリザベートを激しく憎悪している訳でもなく…。

冥界の審判もそりゃ何で?と疑問を抱くでしょう。
わたしも1回目は同じ気持ちで、終演後もよく分からないままでした。

しかし今回、前日に上山さんのツイートを見たこともあり
「ルキーニはエリザベートに会ったこともない母親を重ねているのでは?」と仮説を立てて観てみることにしました。

誰にも本心を明かさないルキーニ

ルキーニは裁判で「動機は愛、黒幕は死」と嘯き、はぐらかします。
1回目はルキーニの言うことを鵜呑みにしたので、混乱しました。
ルキーニの台詞は言葉通りに受け取ると読み違えそうです。

とにかく、ルキーニは作中でほとんど本心を明かしません。
「ミルク」「キッチュ」でエリザベートを批判しますが、ノリのいいメロディを陽気に歌い上げることで何となく茶化しているように聴こえます。

しかし彼の壮絶な半生を考えると、皇族たちの贅沢な暮らしは心底憎かったでしょうし、息子の死を悲しむエリザベートも「母親」として嫌悪感を覚えたと思います。

そんな彼のドロドロした感情を、明るい音楽で誤魔化しているようです。
そういう陽気なキャラクターが観客の観たい「狂言回し」だからかもしれません。

つまりはルキーニはルキーニ自身も含めて「キッチュ」を体現しているのだと思います。

ルキーニの本心はどこにあるのか

そうやって歌で本心を覆い隠し、言葉でもはぐらかすルキーニの素顔はどこで見られるか考えてみました。

1つはカフェの場面です。
舞台転換のためでもありますが、ルキーニは実に働き者です。
キビキビと椅子を並べて、注文も取り、愛想よく働いています。

10歳から働き、16歳で独立した彼の生前の姿がここで垣間見えます。
そんな生粋の労働者である彼が、無政府主義者達の会話を耳に挟みます。
ここで彼は興味津々に顔を近づけてもっと会話を聞こうとします。
(でも注文を受けて仕事に戻ります)

わたしはこのカフェの場面が、生前の彼の姿に一番近いのではないかと思います。
働き者で、でも世の中に不満は持っている、ごく普通の青年。

もう1つは「キッチュ」です。
高らかに歌い上げた後、「キッチュ」と吐き捨てます。
ここだけ歌ではないのです。
本当に世の中を憎み、そして諦めている、そんな心の叫びに聴こえました。

ルドルフとルキーニも鏡?

作中で、エリザベートとルドルフは鏡であると明言されています。
乱暴に言えば、エリザベート=ルドルフ になります。

ここで冒頭に述べた、ルキーニと母親について話を戻します。
ルキーニは母に会ったことはありません。
ずっと母親は不在、孤独に生きてきました。

彼の抱く母親像は、子どもを捨てた母親だと思います。
ここがエリザベートと重なるのではないでしょうか?

子どもの傍にいることなく、自分勝手にどこかへ行ってしまう母。
そして、置いて行かれる子ども。
この子どもはルキーニであり、ルドルフでもあります。
また乱暴に言えば、ルキーニ=ルドルフ になります。

ルキーニはルドルフにはあまり絡んでいない気がします。
いなかったり、後ろを向いていたりして顔が見えませんでした。
なので、親子に絡むことはルキーニの本心に触れるポイントなのだと思います。

ルキーニがルドルフにシンパシーを感じ、鏡の存在ならば、エリザベートへの感情も少し見えてきました。

子どもを置いて世界を旅し、子どもの世話はしないのに精神病患者の見舞いには行き、散々放っておいたのに死んだら棺に追いすがる母親。
世間へのアピールだと馬鹿にしているだけでなく、何を今更とも思ったのかもしれません。

ルドルフは自らが死ぬことを選びましたが、
ルキーニは母親を殺すことを選びました。

何となく、作中でルキーニはルドルフができなかったこと・言えなかったことを代弁しているように思えました。


色々述べましたが、あくまでも個人の感想です。
演出家・演者の意図は違うかもしれません。
でも、こうして俯瞰して色々関係性を考察するのは面白いのでオススメです。


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