第二の「夢花火」コンテスト開催

皆さんは井上陽水の名曲「少年時代」を聞いたことがあるだろうか。

~♪ 八月は夢花火 私の心は夏模様 

といった歌詞を書けば、思い出せるかもしれない。曲の内容としては、どうしようもない懐古厨ではあるが、いかんせん選ばれている日本語とそれを乗せるメロディが美しく、厨臭さを見事に名曲へと昇華している。

有名な話かもしれないが、実は歌詞の中には存在しない(既存でない)日本語が含まれている。「風あざみ」と「夢花火」である。この二語は既存の日本語ではなく、井上陽水の作ってしまった新たな日本語である。だが、どこか日本人にとっては馴染み深く、耳に小気味よい単語である。それはいいとして、じゃあ意味は何なんだよと聞かれたら、よくわからんと答えるしかないが、やはりどこか”良い”気分のする言葉である。これは井上陽水が持つ言語的センスによって創作された言葉であろうが、こんな感じの言葉を自分も何とかして作ろう!というのが今回の記事である。

しかしながら、私は言語センスがからっきしで「作者の気持ちを答えよ」なぞ説かれたら、キレる類いの人間である。そこで今回は第二の夢花火作成アルゴリズムを用いて、それっぽい言葉を機械的に大量作成していき、それを一つ一つ私が吟味していく手法をとっていこうと思う。

アルゴリズムを作る前に、「夢花火」「風あざみ」の持つ”良さ”について分析していこうと思う。以下、言葉の要素を挙げてみると

・音数 ・音韻 ・単語の組み合わせ ・文字面

まず、音数から これはメロディの都合もあるだろうが5音が最適であろうと思われる。これは俳句や短歌等でも用いられる日本人が心地よいと感じる音数であることに違いない。あとは「2+3(3+2)音」という形も採用してもよいだろう。

次に音韻から 両方とも「・eaai」の形である。これは曲としての韻を踏むために合わせたといった意味もあるだろう。そこでここは韻を踏む意味が強いであろう「・・・・i」の部分を除き、「・eaa・」の形を採用しようと思う。

次に単語の組み合わせ これは明らかに綺麗な、風流な単語を組み合わせたほうがよいだろう。よさげな言葉は歳時記という本にたくさん掲載されている。歴代の歌人のお墨付きである言葉を採用すれば間違いないだろう。

最後に文字面であるが、これはそんなに考慮しなくてもよいと思う。けども、あまりにも画数の多い感じは堅苦しさが出るので、弾いてもよいかもしれない。まぁ、恣意的にやります。

そんな感じでアルゴリズムを作っていきましょう。(2+3形)

①歳時記から2文字と3文字の単語を抜き出す。

②3文字の中でも「aa・」の形の単語を抜き出す。

③2文字の中でも「・e」の形の単語を抜き出す。

④単語をランダムに組み合わせる

⑤吟味

完成しました。あとは手間を無視して、実行していくだけです。手元にちょうど秋の歳時記があったので、とりあえず①と②を実行した三文字のリストがこちら

赤い 茜(あかね) 袷(あわせ) 高し(たかし) なかば たたき 案山子(かかし) 花壇(かだん) 烏(からす) 河原(かわら) 川施(かわせ) 膾(なます) 畑(はたけ) 豇豆(ささげ) 高き  田刈る 煙草(たばこ) 中稲(なかて) 流れ 菜種(なたね) 真雁(まがん) 夜学(やがく) 柳(やなぎ) 夜半(やはん) 大和(やまと) 渡り

だいぶ風流な言葉が並んだ。つぎに2文字のリストがこちら

風 声 蠅(はえ) 峰 晴 畦(あぜ) 雨 稲 梅 暮 解夏(げげ)鮭 酒 実(さね) 竹 種 鯊(はぜ) 稗(ひえ) 船 豆 郁子(むべ) 破(やれ) 夢 嫁 早稲(わせ) 吾(われ)

こちらも意味を知らない言葉は多々あるもよさげな言葉が並んだ。これで、3文字、2文字ともに26種類の単語がリストアップされた。これを後は機械的に組み合わせて吟味するだけである。そして、26の2乗=676通りの夢花火候補の中から、吟味したのがこちらの12個である。

風茜(かぜあかね) 風豇豆(かぜささげ) 峰中稲(みねなかて) 晴茜(はれあかね) 畦真雁(あぜまがん) 雨煙草(あめたばこ) 姫袷(ひめあわせ) 破夜半(やれやはん) 稗河原(ひえかわら) 夢夜学(ゆめやがく) 早稲烏(わせからす)

これらの中からgoogleで検索にかけて、ヒットしたものを除外していく。風茜と晴茜はハンドルネームとして存在した。また、稗河原は地名として存在した。破夜半はやばそうな中華サイトの文章中に存在した。ということで、それ以外は私が創作した単語である。意味はそれっぽいものを選んでいるので、後は読み手が勝手に解釈してもらえればよい。機械的に作った単語であるから、特に深い意味や歴史などない。それにしては、クオリティの高い単語ができて驚いている。この中の単語のどれか一つでも世の中で使われて残ってくれれば本望ではあるが、それは無理な願いであろうことなどで、このnoteの内の記事として供養しておくことにする。この手法やってみると割と面白いので、皆さんもなかなか良いハンドルネームが決まらない時や何か新しい言葉を作りたい欲が出た時にこの手法を使ってみてはどうだろうか。


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