映画『教育と愛国』から思うこの国の深すぎる闇
映画『教育と愛国』を見てきました。いまの教科書に国家権力が定義する「愛国」がいかに踏み込んでいるかを描いたドキュメンタリー。
この映画を見た1週間後に安倍氏襲撃事件がありまして、映画を自分に落とし込むのにいつもより時間がかかりました。
国が教育内容を定める恐ろしさが急増
学校で教えられる内容は学習指導要領に基づいたもの、教科書は教科書検定を通ったもの、つまり両方とも国が認めたものである。これは日本人にとって当たり前のことですが、世界的に見ると珍しいことです。各学校で自由に教えていいよーという国も結構あるんですね。
とはいえ、こうした国の基準があるから日本全国で均一な学びを実現できる側面もあります。学年の途中で転校しても前の学校の続きが学べるのはそういう訳です。
しかしこの大事な国の基準がある特定の方向に強く引っ張られて行ったらどうでしょうか。日本の教育全てがあっという間に染め上がってしまいます。戦前の軍国教育のように。
この映画はまさにその危機を感じさせるものでした。いまの教科書にこんなにも政治の手が入っているなんて。「既に戦前なんだ」と思わずにいられませんでした。
教育に、政治の手が深く介入している
数年前に、道徳の教科書にあったパン屋さんが和菓子屋さんに書き換えられたという話題があったのを覚えていますか?
当時「なにこれ、こんなと指摘して…下らないことしてるなぁ」と思ったんです。笑って流したくらい。
でも映画にあった話の流れで捉えなおしたら背筋がゾッとしました。これを指摘した人たちは本当に大真面目に「国への愛着」とか「洋物のパンではなく伝統の和菓子で」とか考えたのだと思います。それくらい細かく、執念深く、教科書から教育へ『愛国』を盛り込もうとしているのです。
ここでパンフレットにある鈴木大裕さんの言葉を引用します。
パンか和菓子かだけではないのです。特に日本史の二次大戦の記述をめぐって、政治の手が深く深く介入しているのです。もう既に。
この国の闇が深すぎる
映画を観終わって、「なんであの人たちはこんなことをしたがるんだ?」という思いがしばらく続きました。戦争したいの?なんで?子供を戦争の道具にしたいの?そんなことのために子育てしてない、やめて。
中でも、あの人は一体何なんだ、首相の頃から意味わからん。そう思ってこの本を読みました。映画にも中心人物としてでてくる、この人物です。
表紙にインパクトがありすぎて、テーブルに置いておいたら家族から「何読んでるの!?」と驚かれちゃった。安倍氏の人物像を父方の祖父から辿ったノンフィクション。その中で著者で青木さんが安倍氏について語った部分を引用します。
この国の政治システムの穴、そのうちの一部または大部分が、恐らくは宗教団体なんだろうなと分かったのがあの事件です。
事件の暴力性についてはもちろん受け入れられません。と同時に、特定の思想が空虚な宰相を乗っ取って国のかたちを変えてきたのなら、これも全く受け入れられません。
なんなんだこの国は。私は何に巻き込まれているんだ。我が子は何に囲まれてるんだ。姿を見せない大きな闇の気配を感じる。
なにこれ、なんのファンタジーなの?ハリポタのヴォルデモートでもいるの?しかも誰も倒そうとしてない、むしろ歓迎されてるラスボスが。
映画や本から考えたこと、考えること
こうした一連の出来事により、公共への信頼が改めて、そして一気にどかーんと下がりました。あーもうどうしよう、これから。
最後に、学校についての話を2つ。
1つ目。公立で先生をしている友達が何人かいます。その人たちは本当に毎日大変なお仕事を頑張っていて…。彼らの努力を思うとやるせない気持ちがどっと押し寄せました。
あんなに頑張ってるのに…。子ども達のためにってやりがいをもって身をささげているのに。決して子どもを戦場に送りたいような人たちではありません。こんな教科書を使わせるなんて惨いと、ますます悲しくなりました。教科書を作る人たちの中にも断腸の想いがあるでしょう。本当に酷い。
2つ目。私立男子校に通った甥に「教科書は何を使ってた?」と聞いてみました。もしかしたら『学び舎』の教科書を使っているかもと思ってからです。(学び舎の教科書がどんなものかは、こちらの記事をどうぞ)
そうしたらまさかの答えが。
「教科書は受け取ったら使わずに返す」「教材は先生が作ったもの」「受験に出るものは全部やるから、従軍慰安婦も南京虐殺もやった」
おぉ…なるほど、これが私立のやり方なのか…と驚きました。
んー、でもじゃあ私立に行けばいいじゃんっていうのは何か違う気がする。公教育ですべての子どもに、どんな環境の子にもいい教育が届いてほしい。公立で学ぶ子は修正後の歴史観に触れるしかないなんてあまりに酷いじゃないか…。
そんなことを考えています。まだまだ、考えています。
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