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ニートが家に住むことになった。#03

どうも、この度ニートが家に住むことになりました。

(キ)2日目

翌日。10時半までいびきをかいて爆睡。寅女の仕事の電話の声で起きる。とりあえず12時までにお風呂と洗濯をしてもらい、寅女の昼休みに昨日書いたTODOを見ながらタスクを整理。「やりたいことリスト」の優先順位付けと不明点の洗い出し、期限設定、所要時間とやるべきことを伝えた。また、やるべきことは何となくわかるが当事者であるニートも部外者である寅女もよくわかっていないことが多い。これじゃ何にも進まない、と考えた寅女はニートに「今日社長とMTG設定して不明点全部明確にしてみよう」と伝え、その場で設定してもらった。

なおタスク管理に関しては寅女、苦手分野である。仕事場で頭を抱えながら「終わらない〜」と悲鳴をあげているのが聞こえてきたら間違いなくそれは寅女だ。ただこのニート、新卒で入った会社がゴリゴリの営業職すぎて「ひたすら量を追い、受注を増やす」活動以外やったことがないらしい。寅女の説明を聞くたび「そんなものが世界には存在するんだ!初めて知った!」という表情で大きく頷いてくる。まあ寅女としては仕事が忙しいので「わかったならいいや、わからないことがあったらいつでも声かけて」と言い残し放置した。

そこからというもの、30分に1回の頻度で話しかけてきたり煙草を吸ったりするニート。どうやら足腰を使った営業職しかしたことがないらしく「じっと座って事務作業」ができないらしい。作業をしている間もあまりに静かなのでふと除いてみるとパソコンの画面に向かってじっと睨んでいる。ようやくタイピングが始まったかと思いきや寅女に衝撃が走る。人差し指しか使わずひとつのボタンを押すのに約3秒ほどかかっているのだ。これだといくら時間があっても足りない。少し近づいて「少しでも暇があったら寿司打で練習して」と伝えた。

無事社長とのMTGを終えた。MTG準備に関しても寅女が自分の仕事の合間を縫って事前準備をしたため普段のMTGよりは格段に質が上がっていたらしく社長「これは素晴らしいw」と声を上げていた。達成感満載。2日目任務終了〜〜〜と思い残っていた自分の仕事を終わらそうと思ったがニート「今日はピザが食べたい」と言い出したため近くのドミノピザに買いに行くことにした。

ピザを食べながら唐突に「世界には何本鉛筆があると思う?」と質問された。「ざっくり1人2本持ってるとして140億本くらい」と適当に答え、すぐさま「なにその質問」と言うと「新卒採用の面接で質問された」「周りの友達全員に聞いている」「ちなみに友達全員実数で答えてきてすごいと思った」「ニートくんはなんて答えたの?」と聞くと「俺は無限本って答えて落ちたんだ」と言われて寅女は心の中で「だから何なんだ、、、」と思っていた。

続いて「俺は話が下手くそで長いって昔からよく言われるんだよね」と。この2日間で寅女が最も首を縦に振った瞬間だった。話が長いとたまに自分が何を話そうと思っていたのか忘れることがあるらしい。「話が長いと損することあるよ、仕事においては」「結論から話す練習はしたほうがいい」と伝えると「話長かったら指摘してほしい」と言われた。

その日も早速話が長くなりそうだったので強制就寝した。

(ク)3日目

この日は寅女は久しぶりの出社日。寝ているニートを横目に準備をし家を出た。

昨日からニートに伝えていたことがある。「誰かと一緒に仕事をする上で最も大切なのは報連相。特に今は社長や私に協力してもらっている立場なのだから、自分から報告・連絡・相談をすること」
昼休み、LINEをみるとニートから連絡が入っていた。「昨日言われた○○やりました、社長にも共有済みです」とのこと。成長している。寅女が家を出たのちちゃんと活動していたこと、何も言ってないのに自分から連絡をしてきたこと、この2点に感動した。

ただ寅女、この後とんでもない衝撃を受けることになる。

19時頃LINEを確認すると例のマッシュ男から1枚のスクショが送られてきていた。確認するとニートがマッシュ男に「やばい、店から出られなくなった。助けて」と送っているトークのスクショだ。ナニゴト?!?!と思いすぐさま「どこの店にいるか聞いてもらってもいい?」と伝えると「もう店から出れたらしい」「もう二度とお金貸さないって言ってんのに連絡してきて腹が立つ」「この前夜勤で2万円弱稼いだのにあと50円しかないって言ってるけど何にお金使ってんの?」とのことだった。

ちなみにこのマッシュ男かなりの大金をこのニートに貸しているというのはチラッと耳に挟んでいた。だが私には関係のないことだと甘んじていた。頭が痛い。仕事でかなり疲れている上に他人のお金の貸し借りにまで首を突っ込まなければいけないのか。というかそんなにお金がないなら私にお金貸してと言ってくる未来もそう遠くない。駅から家まで歩いている間残り僅かな考える力を振り絞って色々考えたが寅女は「お金の話にも首を突っ込む」と決断した。

帰宅するとニートがポーカーのオンラインゲームで楽しそうに遊んでいた。もう一度言おう。帰宅するとニートがポーカーのオンラインゲームで楽しそうに遊んでいた。

まあいい。落ち着いて話始める寅女「今日カフェから出れなくなったんだってね」ニート黙る。続いて寅女「自分がいくらお金使ってるか把握してる?」「全部紙に書いて計算して見せて」と伝え紙とペンと電卓を渡し煙草を吸いに行った。

やけに静かだと思い少し覗いてみると何やらとてつもなく言いづらそうな顔でこちらを見ている。「言いづらい金額になったでしょ。いくら?」そっと紙を差し出され見ると「30万円」と記載されていた。すかさず「先月夜勤どれだけ入ったの?」と続けると「4回くらいしか入ってないね、、」とのことだった。
夜勤は1回9000円。なんでこいつ生きてられるんだという文字列だけが寅女の脳みそを支配する。

「生きてるだけで、呼吸をしているだけで嫌でもお金は出ていくもの」「お金の切れ目は縁の切れ目。友達を失いかけてるのに気付いてる?」と伝えると信じられない、というような表情と悲しい目でこちらを見つめているニート。

少しの静寂があったのちに「でも俺頑張るよ」と言われ、寅女のHPが0になったため強制就寝した。

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