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なぜ子どもは本音を話さなくなるのか

 先日、衝撃的な本に出会いました。岡本茂樹さんの「反省させると犯罪者になります」という本です。題名から衝撃的ですよね。この本を読んだ瞬間に、みなさんに共有しないと!という使命感に駆られ、今回の記事を書きました。まずは、事例を紹介したいと思います。

さかのぼっていくと…。

 40代後半の男性受刑者のお話です。彼は、覚醒剤常用者で殺人を犯しました。殺人をした理由を問うと、「覚醒剤を使ったことです。だから覚醒剤を使ったことを反省しています。」と答えました。事件を起こした原因は、覚醒剤の使用にあると思い込んでいる様子です。しかし、さらにそのきっかけを尋ねると、「タバコを吸うようになったから」と答えました。さらにさかのぼって聞いていくと、タバコを吸ったきっかけは悪い仲間に入ったからであり、悪い仲間に入ったきっかけは「いじめを受けていたから」と答えたのです。

 さあ、ここまでいかがでしょうか。もしも、「覚醒剤を使ってしまったこと」で内省することを止めていた場合、この受刑者の根本的な問題に向き合うまでに至らなかったでしょう。自分を振り返ると、子どもの問題行動を指導する時、このレベルでの内省をする機会しか与えず、反省させてしまっていたことが多かったように思えます。著者は本当の意味で子どもが反省をするには、さらに遡って自分の痛みと向き合っていく必要があると言います。では、この後受刑者はどのようになっていくのか。続きを見ていきましょう。

本当の意味での反省。

 いじめを受けていた受刑者は、いじめを受けた相手に、父親の財布から盗んだお金を渡すといじめはなくなったといいます。お金を盗んだことがバレた時、父親はいじめには無関心で、とにかく「家から盗んだ金を返せ」と彼に暴力を振るったのです。それまでも彼は日常的に暴力を受けており、この時も黙って耐えるしかありませんでした。カウンセラーに「もし今、その時の自分に戻ったとしたら父親になんて言いたい?」と問われると、父親に対してたまった思いを激しい口調で言い始めました。それはそれは激しかったそうです。気持ちが治ったところで、「今、どんな気持ちですか?」と問われると、「私は、本当は父親が好きだった。父親に甘えたかった。それなのに自分が悪いことをして刑務所に入っている。自分が情けない、父ちゃん、ごめんんなさい」と号泣しました。彼の心の中でずっと憎しみしかなかった父親と和解できた瞬間です。彼は後日、「なぜかすがすがしい気持ちです」と語りました。さらには、「あれからなぜか被害者のことを考えるようになりました」と語ったのです。

 さて、いかがでしょうか。受刑者が自分の悲しかったことを吐き出した後、被害者のことを考えるようになることは珍しいことではないそうです。つまり、彼らが被害者の心の痛みを理解するためには、まず自分自身がいかに傷ついていたのかを理解することが不可欠であるということです。それが実感を通して分かった時、はじめて相手の心情が自然と湧き上がってくるんですね。これが本当の反省へと通じる流れです。

『居場所』とは…

 最後に『居場所』についてお話をして終わりたいと思います。『居場所』とは、「ありのままの自分でいられる場所」のことです。子どもの本音をそのまま受け入れてくれる場所のことです。子どもが本音を話した時に、「その考え方は間違っている」と正論で否定された時、子どもは何も言い返せなくなります。そして、もう二度と本音で話そうとはしなくなるでしょう。そして、表面上で真面目なことを話し、“立派”なことを言うようになっていくでしょう。学校では、ある意味一番シビアな他者評価を周りの友達から、あるいは先生から受け続けています。学校ではどんどん“立派”な子が育ちます。何か問題行動を起こしても、それはそれは“立派”な反省の言葉を口にします。しかし、先に話したように、人は自分の不満やストレスを言語化し、苦しい思いを受け止めてもらうことによって、はじめて自分の問題行動の過ちに気づくことができます。私は、子どもの考え方が間違っていても、「そんな気持ちでいたのか、よく話してくれたね」と受け止めてあげる『居場所』を作っていきたいと思いました。皆さんはどのように考えられましたか?是非、お話をできる時にお話をしましょう!

今週も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 

参考文献 岡本茂樹、「反省させると犯罪者になります」、2015

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