「能力が同じでも結果に差が広がってしまう子がいるのは、なぜなのか。」
「能力が同じでも結果に差が広がってしまう子がいるのは、なぜなのか。」
――ということで今回は、教育心理学者のキャロル・S・ドゥエック氏が上記の疑問をもとに、20年以上も調査・研究を重ね、導いた結論について紹介していきたいと思います。
『成長マインドセット』と『硬直マインドセット』
人の成長に関するマインドセットは大きく以下の二つに分けられるそうです。一つ目は、硬直マインドセットというものです。硬直マインドセットとは、自分の能力は遺伝的なもので、固定的で変わらないという考え方です。二つ目は、成長マインドセットというものです。成長マインドセットとは、人間の能力や結果というのはこれからの環境や努力しだいで変わるという考え方です。人は成長マインドセットを持つことによって、あらゆることに成果を出せると言うことが研究によって明らかになっています。
「そんなの当たり前じゃないか。」と思われるかもしれませんが、人は想像以上に硬直マインドセットになる傾向があります。例えば、絵が苦手な子どもの多くは、「もともと絵が下手だ。」と言います。これは明らかな硬直マインドセットです。たくさん絵の練習をしたわけでもなく、技法を学んで実践したわけでもないのに、「もともと絵が下手だ。」と言うから不思議なものです。また、スポーツが得意な子どもは「自分にはスポーツの才能がある。」などと言います。これも硬直マインドセットです。自分の努力や、様々な工夫があってできるようになったスポーツを、才能のおかげであるとみなしているのです。この硬直マインドセットには問題があります。それは、できないことを見つけた時に、「才能がないからできない。」という理由で努力することをやめてしまうということです。残念なことに学校には、様々な場面で他人と比べる機会があります。発達段階の違いで、他人と比べて「自分はできない。」と決めつけたことが、硬直マインドセットにつながり、努力すればできることさえも「才能がないからできない。」と決めつけてしまうのです。これは由々しき事態ですよね。
『君天才だね!』『君才能があるね』は危険!
「君天才だね!」「君才能があるね!」などの言葉は、褒め言葉としてよく使われます。この言葉は一見子どもの才能を伸ばすかのように思われますが、実は硬直マインドセットに繋がる言葉なんです。それは、子どもが何かを達成した時に、「君才能があるね。」と言われると、「才能があるからできたんだ。」と理解します。このように理解した子どもは、何かできないことがあると「これは才能がないからできない。」とすぐに諦めてしまうようになります。実際に行われて実験で、難しい問題を解いた後「君は優秀だ!」と褒められた子どもは知能指数が下がっていったという研究があるほどです。逆に、「頑張ったんだね。」と努力を褒められた子どもの知能指数は上がっていったそうです。面白い研究ですよね。
褒める時は「努力」「戦略」「選択」を褒める
安心してください。子どもを成長マインドセットにする褒め方があります。それは、「努力」「戦略」「選択」を褒めることです。以下に例を示します。
「努力」…「100点とったんだ!そのためにたくさん漢字の練習をしていたもんね。すごい!」
「戦略」…「ゲームしていた時間をサッカーの練習時間にしたんだね。良い戦略だね!」
「選択」…「遊びたいと思っても勉強することを選んだんだね。すごい!」
と言った感じです。このように、子どもの成果のプロセスを褒めることで、子どもはしなやかなマインドセットである成長マインドセットになります。成長マインドセットになると、学業、スポーツ、芸術など様々な分野で成果を発揮できるようになるそうです。まずは、自分を成長マインドセットにすることを意識し、子どもが成長マインドセットになるような褒め言葉をかけ続けたいですね!
今週も最後まで読んでいただきありがとうございました。記事を読んでいただいた方のお役に少しでも立てれば幸いです。
「マインドセット やればできる!」の研究 キャロル・S・ドゥエック著 2016