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キノコサムライ参上!:ウレシかった体験から菌糸を伸ばしていく人

キノコとICTと居合剣術で未来を開くキノコサムライ。なんじゃそれ? 彼の変だけど変じゃない、ブットい感じはどこから来るんだろ、聞いてみたいなと思って3年。やっと聞けました。子供の頃のキラッキラの体験が「生きるタネ」になって伸びて行ってたんですね。森みたいな人、島田効太朗さんの無名人インタビュー、お楽しみください。長いのでせっかちな方は、最後の「これだ!子供の頃の衝撃」からでもどうぞ。

今回参加してくださったのはこの方:島田効太郎さん


羽田の空の下から

オンキ:さあて、今日は何の話しましょうかね。

効太朗:そうですね。じゃキノコとICTの話から。僕、いま横浜でSBC、サイド・ビーチ・シティっていう街づくりのNPOと一緒にCode for Hodogayaっていう「キノコとプログラミングで保土ヶ谷を盛り上げよう」という活動をやってるんですけど、ちょっとその話させて下さい。

Code for Hodogayaの紹介ページはこちら

効太朗:僕がずっとやってる循環経済農法ってのがあって、それがどこまで進んでいるのかっていう。

オンキ:循環経済農法?

効太朗:例えば「羽田スカイブルーイング」って、ビールを醸造してそのビールを出すレストランもある施設で僕、仕込み手伝ってるんですけど、通常だったらビールを仕込んで作って、搾りかすはそのまんま捨てるってやり方だったんです。

羽田スカイブルーイングはこちら。

効太朗:でも搾りかすをキノコ栽培に利用して、キノコの廃菌床がまた肥料になってホップを作り、またビールに帰ってくるっていう。今でいうSDG’s的なもの?ヨーロッパで流行ってるパーマ・カルチャーみたいな持続可能な産業や生活を作れる農業を目指す、そんな活動なんです。

オンキ:なるほど。


キノコサムライの今

効太朗:じゃ僕の簡単な自己紹介ビデオ流してもいいですか?
キノコサムライの紹介です。

効太朗:毎回この動画出してるんで。

オンキ:だいぶ駆け足で、しかもダブルオー・セブン的な作りで。

効太朗:音楽が怪しいって言われる。

オンキ:怪しいっていうかメジャーなスパイ・サスペンス系ですよね。

効太朗:僕はどんな人なのかって話しますね。まず週に3回エンジニアとしてフリーランスで働いてます。マイナビさんとかグルナビさんとかの企業の情報を取ってきたり、ビデオの画像解析だとかをするパイソンっていう言語のプログラミングしてます。それが週3、4。それで月30万、40万円くらいもらってる。その金を当てにして、羽田でビールかすやコーヒーかすなんかの食料廃棄物でキノコを作る農家を週3でやってます。

オンキ:ふーん。

効太朗:そして、私は無外流の居合の剣士でして。なのでキノコサムライってことで。

オンキ:効太朗さん、4+3だと7になっちゃって休日ないですよ。

効太朗:ないですね。ゴールデンウィークもないです。でも僕が好きでやってるんで。普通の会社員なんかとはまるで違う、半分素浪人みたいな仕事してるんで。平日休める時は休んでますけど。

オンキ:見ましたよ朝練の動画。


効太朗:何で僕がキノコを選んだのかっていうお話しますね。4年くらい前に江戸川の鹿骨(ししほね)で小松菜の農家やってたんです。僕は明治大学の農学部農学科出身です。まず木材の会社入って、IT事業部で「これから農業とITがくる」っていうアグリテックの話が3、4年前に出て、これはお金儲けになるし、面白いなーみたいな感じで。じゃあ一念発起してやってみようかって、鹿骨に畑を買って。温度湿度とか天候とかをIoTのセンサー使ってモニタリングしたりとか、畑で飛ばせるドローンのカメラ使ったりとかで、新しいサービス作れるんじゃないかって。野菜作りをトマトや小松菜から始めました。でも、都会で農業やるには3つのデメリットがあって。

第一に土の質があまり良くない事。
次に土地が狭くて入り組んでいて効率が悪い事。
おまけにビルの谷間なので日当たりが悪い事。
なので田舎の様にしっかりした野菜が育たない。

で、その当時、一株75円の小松菜が全然売れなくて。師匠のおじいちゃんが倒れちゃって。僕も全然賃金なくてダメんなっちゃった。そこで、同じ場所で何度も収穫できるキノコに目を付けたんです。キノコ栽培には5つのメリットがある。「東京の土を必要としない」「スキマで栽培できる」「気を付けるのは温度湿度だけ」「運ぶの簡単」「コストが安い」。だからキノコで再起をかけた。

オンキ:うん。

効太朗:目指したのは、ただの都市型農業じゃなくて、資源を循環して回せる農業。キノコならそれが出来るんじゃないかって考えました。キノコってコーヒーかすでも育つんです。それなら酒粕とか米ぬかとか、従来捨てられてた食料廃棄物も資源として活用する農業がキノコなら出来るんじゃないかって。無駄のない持続可能な農業が僕の理想で。

オンキ:よく分かります。循環型で、都市で出来る農業の可能性をICTを使って試す。ここまではよくわかりました。ここから先は、島田さんの人となりが知りたいんです。


バラの花園からカナダの山奥へ

効太朗:僕、大学で花卉園芸部にいたんですね。

オンキ:かきえんげいぶ?

効太朗:本当は野菜を育てたくて、田植えしながら友達と一緒にやってたんですけど、花の方の雑草も抜いてたら、バラを育てる花木部のグループに入っちゃったんです。

オンキ:入っちゃったんですね。

効太朗:無理やり。花木部は女子がいっぱいで。「島田君やってみなよ、男子いないから」って。「いや僕、大根とりたかったんだけど」「でも大根もバラも変わんないよ」みたいな話されて。したら花木の方に夢中になって。バラとか観葉植物とかデッカい木に興味持つようになってきて。バラの剪定講習とか、どうしたら枯れないかの講習とかに毎回出て行って植物に触れ合ってました。毎年、高島屋で「バラ展」って皇室の方もいらっしゃる販売会にも3年間出店しました。バラと植物に夢中になった大学時代でしたね。

オンキ:なるほど。

効太朗:その頃、交換留学制度があって。カナダの山奥のカルガリーの北にエドモントンって街があるんですけど、そこに行けて。リニューアブル・リソース、まさに再生資源の学科に入学出来たんです。とはいえ時代が遅れていたので「木材を売って、肥料にして循環させる」って形で、実際はまだ林業の枠内だったんです。

オンキ:ふん。

効太朗:黄色いバスに乗って森の中に入って剪定したり、山火事でどうやって害虫を駆除するかとかって事してました。

オンキ:カナダで勉強して、いろんなご縁があって今に至るのお話しは分かりました。で、もうちょっと前の話も伺っていいですか。なんで植物にはまり込んで農学部に入ったのか。島田さんはどんな子供だったのかまで戻って伺ってもいいですか。


青春の出会いとさまよい

効太朗:僕は小さい頃、まあ理科とか大好きだったんですけども、数学は嫌い。理科とか生物とか化学の実験とかすごい大好きで。それが応用できたらいいかなと思ってた。なんか僕は、論理的に物事を話したり、物を作って表現したりっていうエンジニアの方になりたかった。でも、いかんせん難しいのが数学で。どうしようかって時に「ああ農学部だったら数学そんなに使わないよね」って。あと僕の高校、日比谷高校なんですけど、中庭を畑にしちゃう変わりもんの先生がいたんです。

オンキ:その先生、どんなんだったんですか。

効太朗:その先生は、もう庭をガンガン掘り起こして自分で大根とか野菜育てて「こういうのをみんな食べてるんだぞ」とか言って。それがものすごいカッコよく見えて。

オンキ:カッコ良かったんですね。

効太朗:将来、ああやって自分でサバイバルする能力を養ってくような人間になりたいなって思うようになった。で、農学部目指したんですけども、僕は、ザ・農業をやりたいってワケではなかったかも知れない。

オンキ:だって、今もそうですもんね。農業とICTエンジニアって、かなり距離のある分野に足突っ込んでる。最初からその両方にいたんですよね。普通その両方に足掛けてる人ってちょっと珍しい気もするんですけど、違いますか?

効太朗:いや、まさにそうですね。最初は林業の世界に行けたので良かったんです。木材とかはIT化が進んでましたから。カナダとか欧米とかでは木材の断面の画像解析したりとか。機械に触れることも多くて。

オンキ:想像すると、そういう機械、理系の人が農業に行くって、憧れはあっても、やっぱり誰かを介さなければならないだろうし、逆に農業の人がICTの世界に行く時には誰かを介さなきゃって事になるでしょうし。島田さんて「繋げられる人」って感じしますけど。

効太朗:まあ、でも最初は農業の方に進んで行った。いったん木材会社に入ったですけど、僕みたいに海外に留学してるし、カナダから輸入される原木とかもあるんで、貿易部に入りたかったんです。でも、何度部長と面談してもダメだって言われ続けて。もうじゃあ辞めたろか!って。

オンキ:なんでダメだって言われたんですかね?

効太朗:もうよく分かんないんですよ。社会人になって2年目くらいでダメだダメだって言われたんで「もう辞めたるわ!」って感じで。会社は広島の呉にあったんですけど、手帳も全部捨てて、東京までずっと鈍行で帰ったっていう。

オンキ:なんか青春ですねそれ。

効太朗:すごい面白かったですね。あちこちに友達いるんで途中下車で会って。飲みながら東京まで帰ってくるっていう。京都行ったら、鴨川の川っぺりで朝まで酒飲んだり。名古屋でクラブ行ったりとかして。

オンキ:何日かかって帰ったんですか、それ?

効太朗:10日以上かかってますね。

オンキ:10日…

効太朗:先がなかったんですよ。何をしていいのか、もう木材会社が僕のすべてだったんですよ。

オンキ:その時はね。

効太朗:僕の社会人としての頭の中だと。で、それをぶち壊してくれたのはラグビー部の親友のお父さんである鈴木さんて方で。製造業の会社の社長さんだったんですけど。どうしようもない飲んだくれの僕を雇ってくれたんですよ。「おまえクラブ遊びばっかしてんじゃねえ!」って。

オンキ:だいぶ荒れてましたね、その当時。

効太朗:荒れてましたね。六本木も行ってたし、家から新木場が近かったので…

オンキ:アゲハ(新木場にある巨大クラブ)行ってましたね!

効太朗:もう毎日のように行ってました。そんなバカなことやってる内に、親友のオヤジさんの会社で「なんか修行してみろ!」って話になって。その会社の中でやって欲しいと言われたのは、新規営業開拓でホームページを作るって仕事で。

オンキ:はい。

効太朗:デザイン会社に出向してイラストレータとフォトショップの修行してこいと。2ヶ月後にホームページ作れと言われて。

オンキ:ほう。

効太朗:で、イラストレータ覚えながらHTMLとCSSを独学で勉強しました。多分そこで丁寧にやってたらか、大手の会社さんから新規営業の依頼が来て。そしたらホームページで宣伝するだけでこんなにスゴいアクセスかかってくるんだなと。これは面白い、これは商売になると思って、ITと集客支援にのめり込んで行ったのが、まあ浮気だったんですね。

オンキ:浮気って言うかですね。

効太朗:で、その会社でお世話になった後に東日本大震災が起きて。ちょうど10年前ですけど。

オンキ:おお。

効太朗:それで会社を辞めて。PHPって新しいプログラミングの勉強に職業訓練校に入って勉強し直して。で、今度はポータルサイトを運営してる会社に入って、大槇精機って切削加工で有名な製造業の会社さんの集客を支援するグループの一員になりました。

オンキ:はい。

効太朗:それで切削加工の技術で作ったタイピンとかをネットショップで、僕英語も使えるので、ブランディングして売っていくという仕事が、今の事業に繋がっているのかなと思います。 

オンキ:ここまで伺って島田さんは、色んな風にさまよって、色々な興味、関心があって、たまたま入った会社で勉強したことなんかが今、全部結びついてきてる感じしますよね。

効太朗:そうですね。IT使ってエンジニアやったりとか、ネットショップで販売したりとか、やってきたことすべてが今の自分に活かされれてる…

オンキ:そんな感じですね。

効太朗:無外流の教えの中で「山川の しずく流れて 大河成す」みたいなのがあるんですけど。

オンキ:おっと、ここで武道きますか。

効太朗:ははは。スティーブ・ジョブス的な。

オンキ:生々流転ですよね。

効太朗:そうですね。点と点が線で繋がってゆく。繋がりやすい時代になったのかも知れないですけど。

オンキ:うん。そんな風な人材がこれから先を開けるんだっていうのが共通認識になってきてる感じします。

効太朗:しますね。当時、友達から「島田は色んなとこコロコロするな」とか「おまえ何が身についたんだ?」とか「地に足着けろ!」とか「また変えたのか会社?」とか、結構言われましたね。ボロクソだったんですけどね。

オンキ:ボロクソだったんだ。

効太朗:スゴくて。へへへ。「なんで農業やってるのにITやってんだ?」みたいな。でも変わりましたね時代が。

オンキ:とてもいい感じに。で、これから自分がどんな風になってくかって未来、見えてますか?


アイデアをすぐ形にする

効太朗:僕、これからやりたい事があります。今の世の中、プレゼンしたり資金調達したりする時に、物がないとダメなんです。成果物がないと出資とかしてくれないんです。

オンキ:はい。

効太朗:それを、ラピッド・プロトタイプと呼んでるんですけど、プロトタイプを作るまでの指導をするキッカケとなる教育組織を、横浜の保土ヶ谷で作りたいと思ってますね

オンキ:それがCode for Hodogayaなんですね。ラピッド・プロトタイプってつまり「急速試作品」ってことですか。

効太朗:そうです。ラピッド・プロトタイプに関しては、例えば3Dプリンターみたいな物であってもいいし、SSLに認証されたホームページでもグーグルで簡単に作れるって事でもいい。

* SSL(Secure Sockets Layer)は、Webサイト側と閲覧しているユーザとの通信を暗号化するための仕組み

オンキ:ふんふん。

効太朗:物事をGOする前に簡単にプロトタイプを作る、プレゼンも出来る世の中になってきてるんです。それが相手を説得させる一番の材料かなとは思って。その中にキノコの菌床もあるって。菌床をお客さんの所へ持って行って「僕はこういうものを循環経済型の一つとしてやってます」と持ち込んで行くと相手の納得を得られたりする。プレゼンの場で「じゃこのキノコを切って食べてみよか」なんて事にもなる。「面白いなあ、これ羽田で出来たら羽田ブランドのキノコだね」みたいな話を、ラピッド・プロトタイプをリアルに使ってもらいながらする。資料より物を見せて共感を得て、人が動いてくれるような世の中にこれからなって行くんじゃないかと。

オンキ:そんなアイデア段階でもリアルに感じられるような新しいツールとかモチーフが、これからどんどん出てくるだろうって想像することありますか。

効太朗:ありますね。その新しい世の中を作るっていう中で、まさに今、VRとかが出てきている。アバターがいたりVR空間があったりとか。いまその全てを包括してプロトタイプと呼んでいます。

オンキ:そうかあ。それって夢物語でも何でもなくて、もう数年後にキチンと育って、使える人もどんどん増えてるような気がしますね。

効太朗:しますね。で、今VRのSNS空間で「Unity」ってゲームイメージ作ってるんですけど、実際そんなに動くプログラムは書いてないんです。テンプレートをダウンロードして配置を変えてプログラムしたら、簡単なVRがすぐ出来る方法を身につけました。

オンキ:あっという間にね。

効太朗:針金で自分の胴体を作って動くみたいな。VR空間の中でアバターが動く。
こんな感じです。

オンキ:その、都市循環農業みたいなものをVR空間で育てて試せる。ゲーム感覚でやれるようになるのは、もう目の前って事ですよね。

効太朗:そうですね。だからもう羽田スカイブルーイングのVR空間でビールとかキノコとか菌床とか育てられる。

オンキ:はいはい。それ3年後って感じしますね。

効太朗:できますね。

キノコの開く未来

オンキ:では、そのもっと先の、そんな事が普通になって、皆がいろんなアイデアをワーっと共有できるようになったそのまた先に、何がやって来るっていうか、来させたいって思ってますか。

効太朗:来させたいのは、グリーンかなと思ってて。

オンキ:グリーン?

効太朗:なんか物やイベントっていうよりは生物。いま日本の食料自給率は20%くらいで、これからコロナでどうなるか分からないですけど、国はもう農地は商業用地になってもいいって動きが。もう来年から始まる。

オンキ:はいはい。

効太朗:どんどん農家の人いなくなっちゃうんですよ。で、災害起きたり色んな事になったら、食料自給率こんなに低い国ってないじゃですか。

オンキ:すごいことですよね、はい。

効太朗:多分、大惨事になると思うんです。地震も起きて台風も来たら、食料供給ネットワークなくなるじゃないですか。だからこそキノコなんだなと思います。

オンキ:だからこそキノコなんですか??

効太朗:はい。なぜなら都市では空きスペースや空間の中で育てることが出来て、なおかつ出来たキノコを簡単に運んで食べられる。廃菌床が肥料なって昆虫用のエサになったりもする。食料問題を解決するって点でも、キノコは将来を見据えてすごくいいなと思ってます。

オンキ:なるほどね。いま牛を食べ続けることが環境破壊になるみたいな話もある。

効太朗:ああ、そうです。

オンキ:その循環できない物として、牛がトピックに上がってたりしますよね。

効太朗:なんかゲップがCO2になるみたいな。 

オンキ:そうそう。それで工場よりも牛のゲップがダメだって話になってますね。

効太朗:でもなんかすごいですね、いま3Dプリンターで筋肉の繊維までも表現できるようになって、大豆のステーキとか作れる世の中になってきましたね。

オンキ:ええ?3 Dプリンターで大豆のステーキ作れるんですか。

効太朗:大豆のペーストを使って。3 Dプリンターってこう、模様を描くじゃないですか。

オンキ:はいはい。

効太朗:それを筋繊維に似たような筋の形にしてステーキ作るんですよ。こんなペラペラで薄いんですけど。実際にナイフで切って食べてみると「あっ!肉だね」って感じのフードプリンターが、もう出てます。

オンキ:マジか。

効太朗:2025年かなんかに向けて、今JAXAが開発してるんですけど。

オンキ:JAXAなんだ、それやってるの?

効太朗:宇宙に持って行くって話になってるんです。

オンキ:あーなるほどね。原材料さえ持っていけば宇宙でステーキ作るんですね。保存とかじゃなく。人間の舌もいい加減ですね、細い繊維があると「これ肉なんじゃね」って感じちゃうんだ。

効太朗:感じちゃうみたいですね。もう「フードプリンター 肉」で検索したら、結構出てきます。

オンキ:フードプリンター。人工肉の世界はそこまで来てんですね。

効太朗:来てます。昔はただもうベロンと肉の形みたいのを出せば、もう肉だと思ったんですけど。今は違う。

オンキ:こう言っては失礼ですけど、キノコだけじゃ食料自給っていうか、皆んなのお腹を満たすものにならないじゃないかって疑問に思ってたんですけど、その筋繊維の構築とか人工性も考えると、もっともっと広がるんですね。

効太朗:そうですね。もっとリアルになる。多分、野菜とかも繊維に沿って作っていければ、例えば竹とか。

オンキ:竹?

効太朗:タケノコみたいな。繊維に沿って作ればタケノコのような食感にもなるんじゃないか。

オンキ:あららら。それ楽しみなようでいて罪深いような、恐いようなですね。

効太朗:恐いですね。

オンキ:昨日、タケノコ食べたとこだったんで、まざまざと思い出します。うまかったんです。

効太朗:はははは。今タケノコの時期ですもんね。昨日小机に行ったんです。

オンキ:ああ。そういえば小机の森みたいなとこ行ってらっしゃってましたね。

効太朗:そそそ。そこにタケノコめちゃくちゃあって。

オンキ:あの辺り竹林多いですね。

効太朗:多いです、多い。タケノコも良い再生資源だと思うんですね。生命力の強さはすごい。

オンキ:タケノコは、廃屋とかの屋根をズドーンと突き抜けて竹林に戻って行く。森に侵食されてく感じがしますよね。

効太朗:そうですね。いま廃墟とか竹に結構やられてるみたいですね。


ダジャレでGO

オンキ:さて、そろそろじゃあ締めの話に待っていきましょうか。あと10分ぐらいかな。あらためて御自分の来た道と先のことをお話しされて「アレ、自分こんなこと考えてたっけ?」なんて気が付いた事ありますか?

効太朗:うーん。再生資源とか言ってキノコの菌床を作って、VR空間に出してやろうってくらいしか考えてなかったんですけど、キノコ・エンターテイメントで農業を救っていくっていう形が今、面白いかなと思います。

オンキ:キノコ・エンターテイメントなんですね。

効太朗:菌床を育てて収穫して、焼いて食べて。それをVR空間でみんなと共有したり。菌床にQRコード貼ってあって、読み取るとゲームのキノコになって、一緒に遊んでくれるとか。みんなでコンペをしたりとか。「キノコンペ」って言ったり。

オンキ:「キノコンペ」。くっ付けたな。

効太朗:あと「キノコイン」って、キノコの通貨が出回るのもすごくいいかなと。

オンキ:ダジャレ満載じゃないですか。

効太朗:そう。それで「キノコミュニティ」を作る。

オンキ:「コ」さえ付いてりゃ何でもエエんかい!

効太朗:もう仲間と一緒に面白くやって、それが日本の食糧危機を救うっていう将来像を今回見出せたかなと。

オンキ:「キノコミュニティ」ね。それ、もう出来てるみたいですよね。じゃ最後にもう一つ聞こうかな。どんな自分の幸せの姿を描いてますか、その先にある?

効太朗:ああ、幸せですか。

オンキ:はい。

効太朗:なんとなく大きく稼ぐとか、お金持ちになって悠々と過ごすとか、60歳以上で働かないとかっていうのは、幸せそうに見えないんです。

オンキ:見えないんだ。

効太朗:見えないですね。酒飲んで次の日何しようかなって。じゃなくて自分でやれるサービスとか、小商いみたいなのを作る。

オンキ:それやっぱ小商いって言っちゃダメですよ。「キノ小商い」って言わなきゃ。「コ」がつくもの全部それにしなきゃ。

効太朗:ですよね。そういうものを100年後とか200年後の後世に伝えられるように作っていくのが幸せなんだよなと思ってます。

オンキ:もうねえ、子供達にその話してほしいですね。

効太朗:ありがとうございます。学校ってそういう事教えてくれないじゃないですか。

オンキ:そうですよね。


「これだ!」子供の頃の衝撃

効太朗:僕、ちっちゃい時アメリカにいたんですけど、必ずレモネードを売るみたいなことするんです。

オンキ:あー、はいはい。

効太朗:家の外に出て、子供たち二人で近所回って売るんです。それでオッちゃんとかおねえちゃんとかオバさんとかやって来てくれて、レモネード渡して25セントもらってサンキューみたいな。なんかそういうの日本にないんです。

オンキ:それ絶対楽しいですよね。

効太朗:そう、それがすごく楽しくて。多分、自分がキノコのイベントやって、来てくれた人が撮った写真もらったりしてうれしいと思う事って、昔のその体験、レモネード売ってサンキューって言われた子供の頃の記憶が、よみがえってくるんじゃないかなと思うんです。

オンキ:絶対そうですよね。

効太朗:で、売った時って面白いんですよ「ヤッたあ!俺のサービスで売ったんだ」みたいな。

オンキ:それ分かるわ。

効太朗:その感覚つかませるとね、子供達がどんどん新しい事考えて商売しようと思ったりすると思う。

オンキ:その気持ち自体が菌糸になって繋がっていくんですね。

効太朗:そそそ。商売してお金をもらう事が悪い事だとか、お金がない時は我慢するみたいな概念をくつがえして「ありがとう」って対価がお金になってくるんだよってところを、キッチリ子供に学ばせる事は、すごく大事だと。

オンキ:もう三河商人か近江商人の教えみたいなこと言ってますね。

効太朗:へへへ。でも本当はそれが幸せですよ。はい(笑)

オンキ:もうメチャメチャわかりました。ええ。今日のこの声を200年後の子供にちょっとだけ伝わる形にまとめさせてもらいます。

効太朗:ありがとうございます!メッチャうれしいわ。涙目くらいになる。

オンキ:うわっはは。だってそれ素敵ですもん。ってか羨ましいわ。

効太朗:いやいやいや。そんな金持ちじゃないです、貧乏です。

オンキ:何言ってんですか、それがリッチってことですよ!それが大金持ち。もう「あなたは富まみれ」ですよ。数えられない富を、もう山ほど持ってますよ。

話の流れで思い浮かべてしまった椎名林檎の「ありあまる富」

効太朗:ありがとうございます。

オンキ:すげー。参りました。

効太朗:いやホントに、今日はお時間頂きまして。

オンキ:いえいえ、逆に僕がお時間頂いたんですから。何をおっしゃいますやら。素敵なお話ありがとうございました。なんとちょうど1時間。本当ですよ凄いぴったり。1時間って長いですよね。ありがとうございました


あとがき




2019年の「横浜キノコ大祭」のブースで菌床を買って育てて以来、効太朗さんのことが何故かズーッと心に引っかかってました。今回ほぼ、はじめてお話できて、そっかあ、そういうことだったのかと納得できました。25セント握りしめてニカっと笑ってる少年の顔が見える。彼のほっぺたは午後の透明な日差し浴びてきっと黄色くなってる。その午後の強烈な体験からグルグル渦を巻いて木が育つように、この人は伸びてきたんだなあ。でも多分、そんな「ある日の午後」は誰にでもあるんだろうなあ、とボンヤリ思う、寒い5月の午後でした。



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