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アウトサイダー限定の幸せな会社

朝日新聞、45歳以上の「早期退職」募集…退職金の「驚きの金額」(現代ビジネス記事)へのリンク

この記事を読んだとき『幸せな時代が来たなぁ』と私は率直に思ったのだが、朝日新聞に限ったことかもしれないので、それは言い過ぎだろうと思う。が、私のようなアウトサイダーにとっては間違いなくこの会社はその「特定の社員」にとっては幸せを運んでくるホワイトナイトと言える。

はたしてこの記事は本当にホントなのかどうなのか、半信半疑の気分なぬぐえない。こんな大盤振る舞いな幸せ提供が、いつも目にするあの会社からあるものなんだろうか?

私の経歴はプロフィールに書いたように52歳でサラリーマン生活に決別したアウトサイダー(はみ出し者)。だから私の印象は世間の思うことと一致しないかもしれない。だから誰もがこの記事を読んで「幸せだぁ!」と思うわけはなく、思う必要も無い。

ただ、この記事を読んで内心ワクワクする胸騒ぎを感じる人の何割かは、私と同じカテゴリーに入るアウトサイダーだろうと思う。残りのうちの何割かは、単に今の会社に殺されそうで嫌になって逃げたいだけなのかもしれない、とも思う。

正直思うが、この会社が行うとされている45歳以上での早期退職募集の恩恵である6千万円退職金は、額面ではかなりの大盤振る舞いなのだが、45歳でこの額では悠悠自適生活は難しいと考えざるを得ない。45歳にて厚生年金から国民年金に切り替えることで、将来受け取る老齢年金額が大きく低下してしまい、しかも退職後から老齢年金を受け取るまでのつなぎ資金としての6千万円という数字は、か細い。従って再就職するか、独立するかというのが現実的な選択肢。

ではなぜアウトサイダーはこの会社が打ち出した早期退職制度に魅力を感じるか?

多分、この魅力を感じ取れた人は、この早期退職制度の中身を見て自信を得たのではないだろうか?「これで俺も起業して食って行ける」こういう自信が湧いたのではなかろうか?

将来起業することに内心傾倒しているサラリーマンの何割かはあわよくばここを脱出したいと、チャンスをうかがっているものなのだ。かつて自身の勤めていた「わが社は全員が一枚板となって・・・」と機会あるごとに繰り返される社長講和の放送を社内放送していたが、これに起立して拍手をしていた模範社員たる首脳管理職社員だって、大盤振る舞いの希望退職割増退職金を前にした日には我先に競うように応募し、大量の人材が辞めて行き、残された社員は清々した。そんな光景をつぶさに眺めた経験が私にはある。

彼ら辞めた社員達の何割かがアウトサイダー候補者だったのだ。

なぜ起業を日々考えていても、大盤振る舞い退職金を目にするまで辞めなかったのか?

今までドップリとサラリーマンに漬かっていた人にとって、独立して起業することには格段の恐怖を抱くのがふつう。
「俺のこのスキルで、果たしてたった一人で家族を食わして行くことができるだろうか?」そういう恐怖がすぐ隣で「ここに居ろ」とささやくから。

上記リンク先記事に書かれた朝日新聞の記者たちもそのような独立起業に対してのなかなか飛び込めない恐怖心は否めないだろう。

フリーのライターとして、小説家として、独立したクリエーターとして、個人事業の不動産事業者として、果たして家族を養えるだろうか??
しかし、いつか自身も起業したい!
誰の指示も意向も関係なく、突き詰めて自分自身の仕事がしたい!
最初は売れないルポライターかもしれないが、生涯をかけて世の中を振り向かせる記事を書き続けたい!
そのための軍資金がこの度会社から降って湧いてきた。
この資金があれば当面の生活は何とかなる。あとは実行計画をたてて毎日思い描いていた組織を離れてフリーになる道へ舵を切ることだけだ。

こんなシナリオが彼らアウトサイダーの頭の中に急激に描かれ、妙に自信が湧き、いてもたっても居られずに早期退職プログラムに応募する!

でも、ちょっと待った方がいい。

自分勝手な早期退職に応募する前に、家族へその決心を伝え、渋々でも何でも了解は少なくとも取り付けた方がいい。いかに自分がアウトサイダーだと分かっていても、家族には個々に期待があり不安もある。だから一歩踏み出す前には話しておいた方がいい。

もうひとつ、アウトサイダーでない者はうかつにこの早期退職者募集の話に乗らない方がいい。

アウトサイダーはもう何年も前から独立起業することを考え続け、何が必要かも頭の中に整理できていたはずだ。たとえその本人にしか分からない整理方法だったとしても自身には分かっていたはずだ。だから瞬時に事の良し悪しを判断することができるのだが、ふつうの愛社精神豊富な優良社員はこの密な自分だけの思考トレーニングができていない。

大金の退職金を眺めて、突然の早期退職を決めることは避けた方がいい。かつて勤めた会社で早期退職が行われた後、しばらく後に人事部へ「退職金全額返すから再び雇って欲しい」と懇願する者や、そうでなくても毎日会社通用門のところで中を眺める退職者が出現したという。このような退職者は退職後に「なりたい姿」がまったく見えていなかったのではなかろうか?

大金を目前にして「この金で悠々自適」とか「一発起業して男をあげよう」と思うのは「なりたい自分の姿」とは違う。「なりたい自分」を見極めるには長い時間の思考と事前準備と少々の試行が必要になる。

自分で自分がほんとうにアウトサイダーなのかどうかは計りようが無いものの、慎重な性格の好奇心旺盛な者の中にはそのような人材が混じっているのではないかと思う。

そのような者に限って、会社がときおり実施に踏み切る早期退職者募集は意義あるものになるだろう。そう思う。


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