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日記とエッセイ

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僕のエッセイです。
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#文章

日記:名前もしらない甥っ子

日記:名前もしらない甥っ子

 僕は外に出る。当たり前だ。この僕だって外にくらい出る。あんまり舐めた調子でいるといつか痛い目にあわせるぞ。

 僕は外に出る。左に折れて、横断歩道を渡る。と、そのとき、視界の端に男の子がうつる。だぼだぼの学生服に身をつつんだ、近くの中学の男の子だ。かれはちょいちょいと左右に素早く首を振ったあと、まるでスタッカートをうつみたいにしてぴょんぴょん跳ねて横断歩道を渡る。そして、どういったらいいのだろう

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日記:ポルノハブ<麻婆ナス

日記:ポルノハブ<麻婆ナス

 もうどこに書いてあったか思い出せない。とにかく村上春樹の小説のどこかで、隣のビルの窓をのぞいて、そこで働く男たちの性欲を感じ取るシーンがあったのを覚えている。
 主人公の「僕」は働く男たちの胸の大きな女の子を眺めて、「他人の性欲を感じ取るのって、ふしぎだ」みたいなことを思っていたはずだ。僕がポルノハブとかを見ているとき、けっこうな頻度でその「僕」のことを思い出す。
「他人の性欲を感じ取るのって、

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日記#1:レイモンド・カーヴァーの『ファイアズ(炎)』

日記#1:レイモンド・カーヴァーの『ファイアズ(炎)』

 きのう、あなたと長いこと話して、僕も日記を書こうと思った。もちろん、僕もあなたと同じ人間だ。日記を書こうと思ったことなんて何度もある。ほんとうにたくさんある。天の川の星の数とおんなじくらいたくさん。でも、ハッシュの番号が二桁を数えたことは一度もない。

 今回はわからない。もしかしたらチップを積み上げるみたいに、十、二十といくかもしれない。あるいは「日記#2」を書いたあとに「こんなことをしている

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