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掌編小説

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掌編小説『救い』

掌編小説『救い』

 木元は、僕の質問の後に芋焼酎のロックを煽ってから、独り言の如くつぶやいた。
「大して理由があってド田舎にきた訳じゃないさ。都会の居心地が悪かっただけだよ。幾分こっちの方がマシなだけ」
「それだけか?」
「うん、それだけだね」
木元から漂う微細なかったるさと、僕の頭に次の言葉が浮かんで来ないが故生まれた、5秒にも満たない間の悪さを埋めるよう、僕は透明なグラスに注がれた焼酎を一息に呑み下した。

 

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