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【短編】心を結ぶ愛 (7)

 首を吊っている父親をなんとか降ろして母親の横に並べて寝かせた。しばらくは呆然としていた。すでに日も沈み周りは暗闇となっていった。しかし、娘は窓から入り込む月明かりを頼りに両親の前に座り、身じろぎもせずに一夜を過ごした。夜が明け、両親が亡くなったことを近所に報告した。自分ではどうしたらいいか分からなくなっていた。しかし、報告を受けた近所の住民は、話を聞くなり、玄関の扉を硬く閉ざしてしまった。何軒か回ったが手を貸してくれるどころか、みんな扉を固く閉ざした。家族同様だと思って育っていただけに娘の心は傷ついたし、理解できなかった。でも、両親をそのままにはしておけないし、埋葬もしなければならない。娘は途方に暮れた。村で唯一存在するお寺に行き、住職に相談した。しかし、住職は、辛そうに娘に伝えた。

「みんなに相談せずに逝ってしまった家は、この村では誰も助けてくれない。このお寺でお墓を建てることもしてあげられない。裏庭にでも埋めてあげなさい。そして、あなたもこの村から出ていくことを考えた方がいい。この村は結束が硬い分、裏切られたと感じると絶対許してはくれない。だからこそ、誰にも邪魔されることなく、ひっそりと今まで生きて来られたのだよ。理解してくれるかい」

 娘は、理解できなかったが、どうにもならないことなのだということを認識した。でも、何かが違うと感じつつも何もできない自分が腹立たしかった。そのまま家に帰り、仕方なく両親を埋葬するために裏庭に穴を掘った。深く掘らないと動物に掘り返されるので、娘の胸までくらいの深さに穴を掘り、両親を仲良く並べて手を繋いで埋葬した。すでに、夜になっていた。娘は心も身体もボロボロだった。もちろん、弔問客もない。寂しい埋葬だった。この時は、結婚の約束をした若者に連絡すると迷惑がかかってしまうということが脳裏をかすめ、若者のところに行くのを躊躇い、一人で対応しようとしていたのだ。その結果が神様の住む山に入ってしまおうと考えてしまったのである。しかし、門番杉に簡単に追い払われてしまい、結局いく当てもなく、必然的に若者の家の前にやって来てしまったのだった。そして、倒れ込んでしまった。


<続く>


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山あいにある小さな集落での古い習慣に縛られた若い二人の愛の顛末を綴ってみました。 全編、無料で公開していますがサポートいただければ嬉しく思…

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