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【No.01】見る人はちゃんと見ている@こうならいいなサラリーマン劇場

 サラリーマンの世界で起きているかもしれないことをドラマ風に綴ってみたいとおもいます。内容は架空の話ですが、思い当たることがあれば要注意ですよ。それから、この劇場の結末は「こうならいいな」という内容で終わります。なので、現実界とは少し違うかもしれません😊

 それでは、幕を開けてみることにしましょう。


 頑張って成果を出しても、その功績を要領のいい同僚や先輩、上司に持って行かれてしまったり、一生懸命努力して調べて提案しても他社の担当とお客様のつながりの方が強くて負けてしまったり、うまく行っていたプロジェクトが急遽中止になったり、日々、波風を立てることなく平穏な時間を作り続けていたにもかかわらず、トラブルを鎮火した同僚の方が評価されたり、人がやりたがらない仕事を懸命に実施したにもかかわらず目立った仕事をした人の方が賞賛されたり、などなど。書き出すとキリがありませんが、そんな経験ありませんか?
 
そんな時、上司は「見る人はちゃんと見ているから落ち込まないで今までのように仕事をしよう」と声をかけてくれるかもしれません。えっ、そんなこと言われたこともないですか? うーん、上司に恵まれていないのか、それとも本当にあなたの態度が悪いのか。。。
 さてさて、実際はどうなのでしょうか?
 とある架空のIT系の会社の中を覗いて見ましょう。

天の声

 場所はとある会議室。偉い人たちが集まって、社員の評価に対するアワードを決定しようとしているようです。集まっているのは、直接部下を持っている管理職が3人、そして、その管理職を部下として見ている管理職が1人。さらには、ここにいない部門の管理職も部下に持っている上位管理職1人。そう、1st Line 3名、2nd Line 1名、3rd Line 1名が集まっているようです。1st Lineのうちの古参の1人が進行役のようですよ。

「えー、それでは各部門からノミネーションしていただいた社員の功績を確認して、最優秀賞として会社への貢献度が最も優秀だった社員を1名決定したいと思います。併せて業績には直接反映しないけれども会社が存続していく上で欠かせない仕事を確実に実施してくれた社員へ特別賞も贈りたいと思います。会社が存続していくために欠かせないことの判断は、お配りした資料の内容です。ご注意ください」

 進行役のLineに促され、みんなは、再度事前に配られていた資料に目を通している。そこに記述されているのは、こんな内容だった。
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最優秀賞の選出基準
会社への貢献度が高かった社員の選出基準 (原則は全て満たすこと)
 ・利益率30%以上のプロジェクトを成功裡に推進させた社員
 ・お客様から感謝の言葉などをいただいた社員
 ・プロジェクメンバーに若手を取り入れ育成した社員
 ・外部の協力会社の利用率が金額換算で30%以下のプロジェクト
 ・著しい成長(リーダーシップ)を遂げ、翌年に飛躍することが期待できる社員

特別賞の選出基準
 ・デイリールーチン的な仕事を担当しており問題を起こさなかった社員
 ・他部門の社員から感謝されている社員
 ・経営判断に有効活用されている管理資料を適切に作成している社員
 ・リコグニションが必要と判断される社員


 あれあれ、それぞれの判断基準の最後の基準はなんとなく違和感がありませんか? 最もらしい文言ではありますが、どうやらこの会社、表彰することで社員を繋ぎ止めたいようですね。この後の会議、気になりますね。覗いて見ましょう。

天の声

 一人の若い所属長が異を唱えた。同時に3rd Lineの管理職がにやりとしていた。
「最優秀賞ですが、数字的に同じような成果を出した社員は、プロモーションの可能性が高い社員を優先するというように読み取れますが、実績を評価するのであって、可能性を評価基準におくことはおかしくないですか? 特別賞のリコグニションも似たような感じを受けます。違う賞として定義すべきだと思います」
 進行役の古参Lineが解答した。
「同じような功績なら、将来的に会社の役に立つとラインが判断した社員を優先させるのは当然のことだよ。来年やめてしまうかもしれない社員に賞を贈ってもしかたないだろう」
 若い所属長はその意見に噛み付いた。
「そんな判断をしているから社員は会社を信用しなくなるのではないですか。私は去年まで1社員だったんです。どうしても公正に評価されていないということをずっと感じていました。しかし、社員の時に意見しても取り合ってもらえないので、こんな会議を変えたくて管理職になりました。だから、社員を代表して意見を言わせてもらっています」


 実に気概のある若手管理職ですね。その側で、一番偉い管理職の方は笑顔で成り行きを見守っていますよ。いったいどういうことでしょうか? 気になりますね。

天の声

 この場をなんとかしないといけないと考えた2nd Lineは、3rd Lineを気にしながら、口を開いた。
「まぁ、まだ管理職になりたてだから色々とわからないこともあるのだろう。数字的なことだけで賞を判断していたら、該当者が複数人出てしまうだろう。しかし予算は限られているから、全員に賞金を出すことができないじゃないか。それを社員に投資するお金だと考えれば、将来有望な社員に贈るというのが妥当だと思うのだが違うかな」
 若い管理職以外は口々に「そうだその通りだ」と言っている。しかし、若い管理職は引かない。
「そうやって与えた賞は、社員から見れば不公平極まりないように見えるんです。予算のことは私もわかります。だから、該当者全員で分配するという判断の方が社員は受け入れやすいものです。金額が多いに越したことはありませんが、それ以上に不公平な状況は社員が離れる原因を大きくしてしまうんです。今は、時代も変わっているんですよ。我々も変わりましょう」


  なんとなく、若手管理職の言い分の方が的を得ているように見えますね。しかし、多勢に無勢、孤軍奮闘状態でもあります。押し切られてしまうと若手管理職も会社を見切ってしまうかもしれませんね。おや、3rd Lineの管理職が話し始めましたよ。

天の声

「みんな、なんとか優秀な社員を表彰しようとして努力していることは理解できる。そして、なんとかみんなの意にかなう社員を表彰しようとしていることも。ただし、社員は管理職に気に入られようとして仕事をしているのではないよな。あくまでも、その社員にとってのお客さまの事を第一に考えているはずだ。我々はそんな社員に対し表彰という形で報いたいと考えているわけだ。だから、管理職の集団は、常に理想を追いかける集団であってほしいと思っている。今、管理職になりたての彼が懸命に意見していたが、私はもろ手をあげて賛成なんだが、みんなはどうしても反対なのかな」


 この一言で、会議は急展開し、若手管理職の意見に従うことになりました。実はこの若手管理職は、社員の時に仕事は問題なくこなしているにも関わらず、所属長との折り合いが悪かったらしく、なかなか昇給もしなかった社員だったのです。それを遠くから見ていた3rd Lineは、管理職として抜擢したのでした。そして、この後も、古参の管理者は次々と若手管理職に置き換えられていったようでした。そうすることで、社内に活気が戻り、仕事の質も向上していきました。

天の声

 やはりリーダーが変われば会社は変わるようですね。良い方にも悪い方にも。
 どこかでちゃんと見ている人はいるようですよ。そんな会社になって欲しいですね。あなたの態度、言動、仕事の成果、だれかにきちんと見られていることでしょう。少し振り返ってみてはどうでしょうか?



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#創作 #サラリーマン #サラリーマン劇場 #会議 #慣習

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