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1月23日 六次産業の日 【SS】一気通貫

【今日は何の日】- 六次産業の日


 生産から加工、そして流通までを統括して実施することを六次産業と名付け、澱みない流れを作り上げることを提唱した日。愛知県名古屋市中区に本社を置き、居酒屋「芋んちゅ」などの飲食店経営、食を通じた郷土活性化事業、フランチャイズのコンサルタント業務などを行う株式会社グロース・フードが制定した。

 農業経済学者の今村奈良臣が提唱した造語である日本の六次産業を盛り上げることが目的。日付は「1」と「2」と「3」で、一次産業×二次産業×三次産業で六次産業を意味している。

 今では、生産者が直接販売する流れも加速され、生産者と消費者との距離も縮まっているのではないだろうか。そしてそれを繋げているのは他ならない流通網である。


【SS】一気通貫

 とある流通会社は社会インフラの核となる方針を打ち出した。それというのも輸送だけに頼っていてはいずれ淘汰されると考えたからだ。生産地と各家庭を直接結びつけることこそ必要なインフラではないのかという意見が社内で持ち上がった。一部ではすでに構築されているプロセスだ。しかし、この会社が考えたのは、社員が生産者になることだった。

 挑戦は始まった。当たり前だが社内には蓄積されたスキルはない。全てこれから現場で学ばなければならなかった。しかし驚いたことに、挑戦したいという若手社員が多数応募してきたということだ。理由を聞いてみると、人間が生きるための基本となる部分の生産に関わってみたいということだった。これには会社の上層部も驚いていた。どちらかといえば逆の反応の方が多いだろうと思っていたのだ。

 農業、漁業、畜産業の分野で若手社員のOJTが始まった。それぞれの分野でこの流通会社に賛同してくれる組合や個人のところに行って学ぶプログラムが準備された。教えてくれるところには会社から謝礼が支払われ、OJTに参加する社員には通常の給与が支給された。会社としてみれば大きな投資だった。

 時間は流れ三年が過ぎた。OJTに出ていた若手社員は立派に育ち一人前となっていた。それぞれのテリトリーごとに部門が作られ、第1期生のだった当時の若手社員は部長に抜擢され、後進の育成と共に生産物の管理と顧客確保をミッションとしての活動が始まった。作ったはいいが買う人がいないのでは話にならない。循環させるために若手社員の部長は連携しSNSや口コミを上手に使い、少しずつではあるが固定客を確保しつつあった。

 その後、SNS上での噂が噂を呼び、生産物の定期購入者が年々増加していった。人々は安全で安心な食べ物を求めていたのである。この流通会社は国内全地域への配送網を持っている強みを活かし「農産物の朝採れ野菜をその日のうちにお届け」というフレーズで売り込み、多くの顧客がついてくれた。もちろん、朝採れ野菜を届けられる地域は限定的だったが次第にそのエリアを拡大していったのである。

 会社としての期待を押し付けるのではなく、本当に必要とされているものを届けるということに注力した結果、自分たちでものを作ったり獲ったりして加工し、最終消費者である一般の人たちに届けるという一気通貫のサービスが受け入れられるようになった。

 まだまだ、通常よりは高い価格設定ではあるが、人々は賛同し応援してくれている。ここに「信頼」というものが生まれた。そして、このことを機に、会員制として一気通貫のものの流れを享受できる仕組みが出来つつあった。この状況を見ていた競合他社は我も我もというように同じ戦略を取り始めた。

 しかし、すでに先手を打てたこの流通会社は、次の一手を打ち始めていた。高齢化社会を見据えてのサービスで、すでに契約をしてもらっている家庭をベースとして、食卓のメニュー別材料提供サービス、料理代行サービス、お弁当宅配サービスをメニューに追加していた。個別に見れば、すでにサービスを提供している会社は存在する。しかし、生産から一貫してサービスを提供する会社は初めてだった。多くの顧客は安心を買うために二割高でもサービスを喜んで契約し、この会社は業界トップに躍り出ることが出来たそうだ。


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