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【短編】心を結ぶ愛 (5)
娘とこの若者の出会いは、二年前に遡る。二人の家は離れていたので普段は顔を合わせることはなかった。二年前にはこの家で若者と父親の二人暮らしだった。母親は早くに病気で亡くなっていた。父親も年老いてからは無理が効かなくなり、段々外に行くことができなくなり、ついには眠るように母親の元に旅立ったのである。若者はある程度覚悟の上だったので、涙より先に、今後どうすればいいかを考えていた。通夜や葬式の準備もしなければならないのだが、心の余裕がなかったのだ。そんな時、亡くなった母と遠い親戚にあたる娘の母親に相談しよう考えついたのだ。とりあえず、その足で娘の母親に会いに行った。母が生前何かあったらご近所ではなく親類を頼りなさいと言っていたことを思い出したのだ。
「ご無沙汰しています。心助です。実は、父が亡くなりまして、どうしたらいいか分からず唯一の親戚であるおばさんのところに来てしまいました」
「遠いところから、頼ってきてくれてありがとう。色々と大変ね。ご愁傷様です」
「いえ、ただどうすればいいか分からず、悲しむ暇がありません」
「そうよね、一人になってしまったものね。とりあえず、娘の結衣をまず手伝いに行かせるわ。それで追いかけて私も行ってあげます。お料理とかもしないといけないしね、結衣、こっちにいらっしゃい。こちら心助さんよ、お父様が亡くなられたばかりなの。お手伝いしてあげて」
「結衣です、この度はご愁傷様です。私でよければお手伝いさせてください」
「ありがとうございます。助かります。一人でどうしようかと思ってました」
<続く>
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