見出し画像

【短編】心を結ぶ愛 (3)

 神様が住むという山には簡単に入ることはできない。山の入り口には千年も前からその地に根を張っている門番杉と呼ばれる巨大な杉の木が立っているのだ。そしてこの杉の木は不思議なことに言葉も話すことができ、かつ、枝の全てを自由に動かすことができるのだ。山に入るには、かなりの修行を終えたものだけが通行を許可される。なぜなら、神様が宿る山だから邪心を持つものを通すわけには行かないからだ。無理に通り抜けようとすると大きな動く枝で捉えられてしまい、追い返されてしう。もちろん、殺されることはないが門番杉を通り抜けて進むことはできない。 

神様の住む山の入り口に着くと、門番杉が問いかけた。

「お前は誰だ、何しにこの山に来た」
「私は、もうこの里では生きていくことができません。両親のところに行かせてください。その前にこれまで生きて来られたことを神様にお礼を言いたいのです」
「お前を受け入れることはできない。なぜならお前はまだ修行が足りていない」
「で、では、どうすればいいのでしょうか」
「人のためにお前の時間を使え、そうすれば安らかな時間がお前を包むだろう。そして、人のために尽くした時間を修行した時間とみなしてやろう。その時にもう一度訪ねて来い」


<続く>

ここから先は

29字

山あいにある小さな集落での古い習慣に縛られた若い二人の愛の顛末を綴ってみました。 全編、無料で公開していますがサポートいただければ嬉しく思…

この記事が参加している募集

#スキしてみて

524,764件

よろしければサポートをお願いします。皆さんに提供できるものは「経験」と「創造」のみですが、小説やエッセイにしてあなたにお届けしたいと思っています。