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外国籍人材の大幅受け入れ 新ビザ「特定技能」は結局どうだったのか?ー1周年振り返りー

こんにちは、one visaの代表 岡村アルベルトです!
2019年4月に開始した新たなビザ(在留資格)「特定技能」が施行から1周年を迎えました。外食や宿泊、建設、介護と、人手不足の14業界が対象となるこのビザ。つまり日本の誰にとっても、実は他人事ではないんです。
34万5千人を目標としている外国籍人材の受け入れ状況、これからの動向を、one visaとしてわかりやすくまとめました!

特定技能ビザの現状

まずは2019年6月からの受け入れ人数を3ヶ月ごとに振り返ってみましょう。
2019年6月:20人
2019年9月:219人
2019年12月:1,621人
2020年2月:2,994人(速報値)
開始から1年以内に最大4.7万人という当初の想定には及ばないものの、特に下半期からは一定の伸び率が確認できていることがわかります。

<ポイント>
1)海外で試験が開催されていなかった
特定技能ビザの取得には2つの要件があります。各業界に紐づく技能測定試験というテストへの合格と、日本語能力検定試験N4というテスト、両方への合格が必須です。しかし、技能測定試験は日本国内での開催が多く、海外ではあまり開催されませんでした...。

2)ほとんどが国内にいた方のビザ切り替え=母数が限られていた
つまり2019年は海外から来日する道筋がほぼ断たれていたことから、上記の人数のほとんどが、もともと日本国内にいた方。特に、2019年6月の20人はすべて技能実習ビザから切り替えた方で構成されています。
また9月も宿泊業に6名、外食業に20名の新規合格者が出たものの、その他の200名弱は技能実習からの切り替え。12月の新規合格者は100名程度。
つまり、これまではほとんどが技能実習ビザその他から、特定技能ビザへの切り替えであったと言えます。

しかし総数としては2019年12月〜2月までの3ヶ月間では、約2倍に増加していることからも、これからさらに勢いを増す可能性は秘めています。
one visaとしては、海外での試験開催が遅れてしまったこと、当初の受け入れ想定の試算が甘かったところはあるものの、そこを批判してもしょうがないのではと考えています。
日本としては初めての取り組みであり、よりスムーズな仕組み作りも、ビザの認知拡大も、官民連携でこれから一緒に取り組んでいく姿勢です。

3)スモールスタートしたことで、得られたメリットも
結果論ではありますが、さらに、この現状にはむしろポジティブな側面もあると考えています。
想像してみてください、今、計画通りに4.7万人の外国籍人材が一気に来日していたら...。新型コロナウイルスの影響から、特定技能の制度上の変更・対応が必要になることが想定され、対応にあたる煩雑さを考えると、今回のようにスモールスタートできたことがよかった側面もあると思うのです。
まずはパイオニアである「特定技能人材をすでに受け入れた会社の声」「今現在はたらいている特定技能人材の声」は聞いてみるべきでしょう。現在、14業界で約3,000人いる中の300人に聞くだけでも、貴重なフィードバックが得られるはず。これに企業と政府が耳を傾けていくことではじめて課題を洗い出すことが可能になり、「よりよい仕組みづくり」が成り立つのではと思います。

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それでも特定技能ビザがうまくいってないと言われている理由とは?

前述のようにone visaとしては決してこの特定技能が失敗だったとは考えていないのですが、一部の方々からそう捉えられてしまうのは仕方がないとも思います。目標であった最大4.7万人に達しなかった要因は海外試験の開催遅れにも関連して、主に5つの理由があると僕は考えています。

(1)14業種の関係省庁それぞれに試験実施を丸投げしてしまった
この制度自体が全く初めての取り組みだったこともあり、国内外の試験の実施が遅れに関してはしょうがない面もあるのですが...。
それに拍車をかけたのが、試験の実施自体が関係する14業種の関係省庁・業界団体に丸投げされてしまったからだと思います。試験のフローや財務省に対する予算の捻出方法もわからない状態から、実施に至るまでそれぞれの省庁、担当部署が考えるとなると、かなりの時間とパワーがかかります...。

個人的にこれから期待することとしては、業界をまたいで省庁同士、連携しあうことでスピード感を持って進めていくことです。農林水産省、観光庁など技能試験の実績のある省庁から知見をシェアして連携するんです。
例えばの話ですが、試験の実施費用が高い、運営の人的コストもかかるという課題があった場合に、いくつかの業界が同じ期間で会場をまとめて借りることで、課題を解決できるのではと思っています。海外においても同様で、同じ国で別の業界試験を実施する場合、これなら今よりも気軽に実施しやすいのではないでしょうか。

(2)現在日本で学ぶ留学生たちのビザ切り替えのタイミングは、卒業を迎える「2020年4月」であり、企業の「今すぐ欲しい!」には対応できなかった
現在日本で学ぶ留学生の方々は「学生ビザ」ですが、せっかくお金も払って入学した学校や留学先ですから、4月にきちんと卒業を迎えたいはず。中退して年度途中のタイミングで就労しはじめる(=留学生ビザから特定技能ビザに切り替える)とは考えにくいですよね。
ビザにもそういった季節的な側面があることは理解すべきと思います。2019年4月にスタートしたのが特定技能です、この春(2020年4月〜)の卒業をめどに特定技能ビザに切り替える方々が出てくるはずで、これは大きな山場になるのではないでしょうか。

(3)パートの方々など「留学生以外の層」に、特定技能ビザに切り替えるメリットが告知しきれていなかった
それでは、「今すぐ人がほしい!」ニーズにどう対応できたのか?というと、他にも技能実習の方々や、(大卒でない)配偶者ビザ(+資格外活動許可といって週28時間までアルバイトで就労する状態)の方々への告知、切り替えの案内ができたと思います。
資格外活動許可(アルバイト)よりも、特定技能ビザにはさまざまなメリットがあります。もちろん個人の価値観ですが、きちんと告知できていれば、そこにメリットを感じて切り替えに向かう方々はもっといたのではと、僕は考えてしまいます。
根深い問題ですが、それができなかったのは、外国籍の方々に一気にリーチする場所=メディア・広報拠点がないこと、国として彼らをきちんとサポートしようとするのではなく、取り締まるような姿勢が強いのが課題です。
考えてみて欲しいのは、感情論を抜きにしても、外国籍人材の方々だって税金を払っている=自治体からすると大切な住民なんじゃないかなと思います。
通常日本で生まれた方は、所得税などの税金を払うまでには数十年程度かかる。それが就労を目的に来日した方は、来日後すぐに納税を開始する。この特徴は大きいと思います。
声を大にして言いたいのは、外国籍の方々はたしかに社会福祉を受けている。ただ、納税をしていることも同時に知ってほしいのです。

4)3ヶ月に一回の面談義務など、採用する企業側のハードルが高く感じる
特定技能人材には定期的な対面による面談が義務付けられていますが、それが企業にとってはハードルに感じてしまうのではと思います。管理団体に委託することもできますが、費用が割高になるし、オンラインでいいから頻繁に話したい人、決まった期間ではなく必要な時に相談に乗って欲しい人様々いるので柔軟な対応ができれば、両者のニーズが満たされるのではないでしょうか。
また、全員に対して一律に時間を割いてしまうと、特別なケアが必要な人にそのリソースが行き届かなくなるのではという心配もあります。日本には、技能実習制度という反省の多い前例があります。誰もが緊急時にヘルプを出せる体制の方が大切だと、個人的には考えています。

5)成功事例がまだ少ないため、様子見をしている企業も
面談の件のように、毎月管理団体に費用を払うことや、これは日本人でも同じですが人材の採用はできても実際に仕事現場で成功できるかは未知なので周りに成功事例がいないのが怖い、挑戦するのが心理的なハードルになっている側面もあるのではないでしょうか。

2020年4月以降どんな流れが起きると思うか?

コロナウイルスの影響で、多くの企業で人員計画に見直しが入り、日本人も含め採用がどうなるかわからない状況ではあります。しかしこの4月に卒業を迎える留学生のうち、日本で就職したい方について、僕は2種類がいると思っています。
専門学校・大学生タイプ :この4月に内定をもらい就職する(特定技能なのどの就労ビザに切り替える)場合と、そうでなくとも、学校から推薦書をもらい、特定活動という仕組みを使って就活し続けることができます。それで1年間はアルバイトをしながら就活できるので、来年の春までに動きがあるかもしれません。
日本語学校生タイプ:同様に特定活動の認定が降りれば半年だけ猶予が生まれ、さらに半年延長できる場合もあります。

どちらにしても、この1年間の動きを見守れば、自ずと結果は見えてくるのではないでしょうか。

one visaのカンボジア人材事業ついて

2018年9月の開校から今まで、紆余曲折ありましたが外食業の技能試験合格者を54名排出するまでに至りました。今は日本の飲食企業とのオンライン面接を進めているところなので、今年の来日が楽しみです。
ほかにも累計では200名以上の学生に無償の学習機会を提供してきたので、彼らの試験合格を目指しつつ、来日してからのクリーンな仕事環境、インフラ提供を進めます。

コロナウイルスの影響でオリンピック・パラリンピックが延期になったが、どのような影響があると思うか

延期になったことで、もちろん当初の予定から色々とずれこみ大変な事象もあるでしょうが、ポジティブな側面もあると僕としては考えています。特定技能ビザの導入がもっと早く進んで欲しい願望もありつつ、1年後に伸びたことで、今よりも確実に外国籍の方々が増え、仕組み化されつつあるのはいいことだと思うんです。
オリンピックは、海外から多くの方が初めて日本に来るタイミングです。
その時に、「日本って外国人がこんなに活き活き働いていて、グローバルな国じゃん!」という前向きな印象が与えられると思うし、この国で生活してみたいなって思ってもらえるかもしれません。それまで楽しみに、one visaも事業を育てていきます。

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▲特定技能人材を育成する one visa Education Center(カンボジア)

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