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ウェルネスツーリズムのコンテンツにサウナが!?

監事 白石亮博
今回のテーマは、
スポーツ”関連産業”ということでウェルネス分野の「サウナ」について。
近年、日本全国でサウナ施設が次々に造成され、
魅了される人が増えている。
今回のコラムを執筆している白石も、サウナに心と余暇時間を奪われている日本人の一人である。今日はいちサウナーとしての視点から昇華させある種、客観視しながら“サウナ”の産業としての実態とツーリズムコンテンツとしての観点で考察をしていきたいと思う。

何故、今サウナなのか?日本人の身に何が!?
サウナとは、遠赤外線や蒸気などで高温になった部屋に6分-12分ほど入り、発汗する温浴方法であり、爽快感や心身のリフレッシュも出来るまさに“疲れた日本人”に取って人気のアクティビティである。サウナ室での発汗後は、水風呂に1-2分ほど入り体のクールダウンを繰り返すことで脳がスッキリとして感覚がリセットされたような状態のことを“トトノウ”と呼びサウナの魅力/醍醐味の一つとなっている。
※サウナ室→水風呂→休憩(外気浴)のセットを“温冷浴”という方法名で呼ぶことがある

そしてサウナの効果には、疲労感が取れる、集中力やひらめき力が上がる、質の良い睡眠が取れるなど日常業務においての生産性向上にも寄与していることが多くの経営者、ビジネスマンにも愛されている理由の一つではないだろうか。
私も“疲れた日本人”の一人であるが、数字や論理を組み立てる“左脳”仕事をしたあとスイッチを“右脳”に変えたい時や考え事を整理する時、瞑想したい時にサウナを利用している。
(また、人に会う仕事が多いので前日飲んだ際に引き連れてしまった顔や体のむくみを解消出来るのも、嬉しいポイントの一つである)

インターネットや書籍、TVなどでサウナについての科学的/医学的な効果について取り上げられているがメカニズムの多くは未解明であり研究が進められているとのことである。
しかし、実際にサウナを経験した人が“ハマり”、人口が増え、その需要に答える形で施設が造成されているのは紛れもないファクトである。医学業界の中でもサウナと健康の関連性については諸説あるそうだが、今後研究が進むことを期待したい。

日本でのサウナの歴史は意外にも・・・
サウナについての1丁目1番地として歴史にも触れておこう。近年では、サウナをこよなく愛するひとを“サウナー”と呼び、徐々に社会に浸透している用語となっているが、そもそもサウナが日本に導入されたのはいつのことだったのだろうか。
きっかけは、意外にも1964年の東京オリンピックである。
元々はクラス別競技の選手がウェイト調整用の使用が主な使い方であったが、東京銀座の温浴施設である「東京温泉」の許斐氏が他国の選手が愛用しているのを見て日本にも造成を考えたそうだ。
こうして、日本上陸を果たした“サウナ”は、様々な造成形態(下記で詳細)や土地に合わせた形で勢力を伸ばし昨今は、スポーツマンだけでなく一般のビジネスマンや学生、芸能人、アーティストなど無差別網羅的に広がって行ったのである。

日本においてのサウナの造成形態
視点を変えて施設造成の立場からもサウナを考察してみよう。
先程造成形態にも触れたが、日本においては大きく浴場施設併設型/車台搭載型/テントサウナ型でほぼほぼ網羅出来るのではないだろうか。

浴場施設併設型は、“銭湯”やホテル、ゴルフ場の大浴場施設に併設する形で設置され日本においては最も数が多く見られる。
街なかの銭湯だと、約800円~。昨今造成されているサウナを全面に集客コンテンツとして押し出している施設だと約1,200円-2,000円ほどで利用が可能。非常にリーズナブルかつ、数が多いためユーザー層も非常に多い。
多くのユーザーは1時間-2時間ほどの滞在のため造成の際には、キャパシティ・回転率・そして投資の回収についての参考にしたい。2020年/2021年は新型コロナウィルスの影響でサウナ室への人数制限等を行っているサウナ施設も多くあり回転率に大きく影響した。

造成費用は、規模や設備のクオリティにもよるが6人ほどのキャパシティで400-600万ほど。公衆浴場法や消防法に定められている構造設備基準や適正配置基準に基づいて設計・施工・営業許可を取得する必要がある。

車体搭載型はトラックの荷台や、コンテナ内にサウナを造成し移動が可能となっているサウナ形態だ。

車体搭載型はトラックの荷台や、コンテナ内にサウナを造成し移動が可能となっているサウナ形態だ。

利用料金は、約3,000円-6,000円と浴場施設併設型よりも金額は上がるが、利用出来る場所が固定されないため、様々なシーンで楽しむことが可能だ。また一時的なイベントや建築が難しい土地(自然環境保護が推奨される地域等)で利用するのに最適である。白石調べだと、200万-400万ほどで購入が可能。サウナ施設の差別化の大きな要因は“景観”であるが、地域独自のランドスケープを武器にする際には、この形態がマッチするのではないだろうか。



最後に、テントサウナ型。こちらは、テントの中にサウナストーブを設置し、仮設的なサウナ室を作る形態である。組み立ても非常に楽でシーズンや場所を選ばずにサウナを楽しむ事ができる。
料金は3,000円-5,000円ほどで、移動型とそれほど金額に差はないように思える。
多くの場合課題に上がるのが、上記で触れた“水風呂”の機能をどのようにして確保するかであるが、仮設のビニールプール等で課題をクリアしている施設が多く見られる。


サウナブームを数値的に見てみよう
様々な形態を持つサウナであるが、日本におけるサウナ人口はどれくらいいるのだろうか。そんな素敵な調査を行っているのが一般社団法人日本サウナ・温冷浴総合研究所である。2017年より日本におけるサウナの実態調査を行い調査結果を発表している。※人口10,000人への成人男女を対象にしたサウナ実態調査から人口推計を用いてウェイトバックする形で調査を行っている。調査の結果は、2019年までが約2,800万人を横ばいの数字。2020年に新型コロナウィルスの影響を受けた年から2020年:2,500万人、2021年:1,500万人と1,000万人減少した形となる。1,000万人の減少は、無視できない結果となっているが、この素敵な調査の中では、サウナ利用の頻度(ライトユーザー/ミドルユーザー/ヘビーユーザー)ごとに人口を推計している。コロナの影響で全体的な減少となっているが、ヘビーユーザーの中で「回数が減った」人よりも「回数が増えた」と回答する人が多く、逆にミドルサウナー/ライトサウナーが大きく減少した結果となった。この調査によりサウナ人口の頭数は減少しているが、日本において“サウナブーム“が冷めないのはヘビーユーザー化した層が支えているのかもしれない。上記でも触れている温冷浴(サウナ室→水風呂→外気浴)の方法論がミドルユーザー/ライトユーザーに届いていない可能性もあり、サウナの魅力の発信と施設ごとの楽しみ方の確立がサウナ業界の将来を決めるのではないかと思う。

沖縄とサウナ。なんと日本初○○!沖縄とサウナ。なんと日本初○○!
さて、“日本”という視点でサウナに触れてきたが沖縄県内についてはどうだろうか。
なんと、琉球大学で日本初国立大で「ウェルネス&サウナツーリズム論」が開催されたのである。
総合ウェルネス事業を行う株式会社クレドインターナショナルが寄付講座で開催し、サウナについての集中講義やウェルネスツーリズムのコンテンツとしてのサウナなど3日間の集中講義であった。
私も、「サウナ」をツーリズムに活かすには?付加価値をつけるとは?という軸でこの講座の講師の一人として登壇させて頂いた。

講座の内容は、沖縄に旅行に来ている人々のニーズ(欲していること)とサウナの持っているコンテンツ力やシーズ(サウナは何が出来るのか?)を中心において展開した。
持論ではあるが、恐らくサウナの考え方は沖縄×ウェルネスツーリズムと相性は良いのではないかと思う。
ウェルネスツーリズムは健康増進や精神的幸福を目的とした旅行形態であるが、沖縄県内で成し遂げようとした場合変換される言葉の羅列は「沖縄県の資源を使った、沖縄県だからこその心と体が健康になるような旅」である。
後半の”心と体の健康”に関してはサウナのそもそものコンテンツの効果や効能で満たすことが出来るのであとは沖縄の資源をどう使ったサウナなのか?沖縄だからこそ出来るサウナとはなにか?が論点である。
幸運なことに沖縄には非常に美しい青い海と、世界自然遺産に登録されたやんばるの大自然。そして、ユニークな琉球文化が存在する。これらを組み合わせたサウナコンテンツの造成は必ずやウェルネスツーリズムの成功事例を作り出せるのではないかと確信している。

那覇空港から車で10分の場所にある瀬長島。島の中心には瀬長島温泉・龍神の湯という温浴施設がある。
ここは、那覇の美しい海を見ながら外気浴が出来る施設であり観光客サウナーから地元のサウナーが足を運ぶ施設となっている。
都心では味わうことの出来ないビュー/ランドスケープを活かした、まさに沖縄だからこその施設なのだ。

今後も、沖縄の観光業で身を置き、沖縄の魅力を知ってほしいと願う人間、そして一人のサウナーとしてこのような施設が増えてくることを期待している。

最後に

これで昨今、日本全国でブームとなっているサウナについて広く、浅く、網羅的に知ることが出来たのではないだろうか。
サウナを体験したことのない画面の前のあなたもここまで読んでくださった時点で立派なサウナーである。パソコンと携帯を閉じていざ、是非近場のサウナ施設へ!

変わり種ばかりで恐縮だが次回は、e-sportsについてコラム掲載を行う予定である。お楽しみに!

###出展/参考文章/参考文献###
社団法人日本サウナ協会 H16年8月/337号
https://www.sauna.or.jp/sauna_news/back_number/pdf_files/1991-2010/newspaper337.pdf

SHUKEN 【サウナ開業】設置基準と消防法の基礎知識
https://shuken-product.jp/column/service/saunahouki20220105/
SHUKEN【2022】サウナ業界の市場規模は
https://shuken-product.jp/column/onyoku/2022saunasizyou#i-6

癒やすの温泉 水春 サウナの効果と正しい入浴方法
https://suisyun.jp/sauna/#:~:text=%E3%82%B5%E3%82%A6%E3%83%8A%E3%81%A7%E6%B1%97%E3%82%92%E3%81%8B,%E3%81%A8%E3%82%8B%E3%81%93%E3%81%A8%E3%82%82%E3%81%A7%E3%81%8D%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82

PRWire 日本のサウナ実態調査2022
https://kyodonewsprwire.jp/release/202203048199

PR TIMES 日本初、国立大で「サウナ講義」開催 琉球大学 クレドインターナショナル 「ウェルネス&サウナツーリズム論」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000085771.html

R25 サウナーが言う「ととのう」ってどういう状態?
https://r25.jp/article/604121758263537426

沖縄ラボ 沖縄の海と3セットが美しい 瀬長島・琉球温泉
https://okinawa-labo.com/senaga-island-spa-3584